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シェア傘ラプソディ♪  作者: 宮本葵
6月3週目「生徒会役員選挙」
17/26

6月17日「頑張ってるじゃん、湊くん!」

すみません、遅れて。あとで加筆します。

朝からざわついた空気が昇降口に広がっていた。

今日から「立候補者による演説」が始まると掲示されていたからだ。


普段はただの通過点にすぎない昇降口に、今日は机とマイクが設置されている。

人だかりができ、ざわめきと視線が一斉に突き刺さる。


俺はその場に立ちながら、心臓が跳ねるのを必死に抑えていた。


(……うわ、思った以上に緊張する)


隣には雨音が立っている。推薦された人は推薦した人と一緒にする決まりになっているのだ。だから、人気な男子や女子を推薦しようと必死になっていた人がいたが、そんなことは僕らには関係ない


雨音は俺を見上げて、そっと小声で言った。


「大丈夫。練習した通りに話せばいいんだよ。湊くんらしく」


「……らしくってなんだよ」


「らしく、は“素直に”ってこと」


雨音が少し笑って肩を軽く叩いた瞬間、司会の生徒会役員が声を張り上げる。


「それでは、立候補者による演説を始めます。まずは――一ノ瀬湊。」


一斉に集まった視線。

喉が乾く。言葉が出そうにない。


けれど、雨音が後ろから小さく「がんばれ〜〜!」と囁いた。

その声が背中を押してくれた気がした。


「え、えっと……俺は、今回、生徒会役員に立候補しました。というか、飯塚雨音さんに推薦されました。」


声が少し震える。

けれど、続けるしかない。


「推薦を受けた理由は……学校の雰囲気を、今よりもっと、みんなが過ごしやすい場所にしたいからです。」


一瞬、ざわめきが止まった。

今日は珍しく雨が降っておらず、雲の中から日光が注いでいる。


「正直に言うと……俺は、今まで目立つことが苦手で。人前で話すのも得意じゃないです。でも……それでも、誰かの役に立ちたいと思って、ここに立っています。」


そこまで言った瞬間、誰かが「へえ」と小さく声を漏らした。

それが馬鹿にした声じゃなく、意外さを含んだように聞こえたのが救いだった。


「実際、最近までここは、俺が過ごしづらい場所でした。」


また、場が静まる。多分ほとんどの人があのことを知っているからだろう。皆、黙りこくっている。


「その悲しさをしっているからこそ、俺が変えなきゃって思ったんです。飯塚雨音さんに推薦されて、ようやく俺のできることがわかったのかもしれません。」


事前に考えていたスピーチなんか、どこかへ飛んでいっていた。だけど、俺は話すことができていた。自分でも驚くくらい、たくさん話せている。


「まだ力不足かもしれません。だけど――もし任せてもらえたら、全力で頑張ります。どうぞ応援お願いします。」


言い終えた瞬間、拍手がわずかに広がった。

最初は数人。けれど、それがじわじわと大きな波に変わっていく。


(……終わった)


安堵で力が抜けそうになる。


演説を終えて立候補者の席に戻る途中、雨音が満面の笑顔で手を振った。


「ね、できたじゃん。頑張ってるじゃん、湊くん!」


「……もう二度とやりたくない」


「ふふ、でも明日もあるんだよ」


俺は絶望的な気持ちで空を仰ぐ。

けれど、雨音が笑ってくれるなら――まあ、なんとかなるかもしれない。

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-著者 宮本葵-
茨城県南部出身。中学2年生。最近、何かと運が悪い。やばいと思い、神社へ駆け込み、お祈りをしていたら、たまたま知り合いと会った。小説を書いていて、まあまあ見られていることを話すと、絶対嘘だろと馬鹿にされたので、あとで、スタ連をしておいた。また、どうも最近は小説を書けない。書けなさすぎて、頭が痛くなって、毎日投稿ストップしてました。すみません。

宮本葵の他作品
誰も信用できなくなった俺の前に、明日から転校してくる美少女が現れた。
僕の中学校生活がループしているので抜け出したいと思います。
Silens&Silentia シレンス・シレンティア
最後の7日間 〜吹奏楽コンクール県大会まで〜
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