表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/41

記憶を失った少女

彼らが東の地へと旅立ってから幾月が過ぎました。


リュウ、アイリス、ガロンは数々の試練を乗り越え、新たな絆と知識を積み重ねてきました。しかし、彼らの旅路は、記憶を失った少女「セラ」との出会いによって大きく変わることとなります。


氷に覆われた山脈の麓で倒れていたセラは、仲間たちに救われました。


目覚めた彼女は、自分が誰で、なぜここにいるのか分からず、不安と孤独に包まれていました。暖かな言葉をかけられても、仲間たちの優しさに触れても、心の奥底には拭えない空虚感がくすぶっていたのです。


旅を共にするうちに、セラは自らの存在に問いかけ続けました。仲間たちは過去と向き合い、それぞれの信念で歩んでいる。それに比べて、自分は何者なのか。何を信じ、何のために戦うのか。夜空の星を見上げるたび、彼女は心の中で答えを探し続けました。


やがて、彼女の中にかすかな記憶の断片が蘇りはじめます。燃え盛る都市、倒れる人々、冷たい声がささやく――「お前は無力だ。力が欲しいなら、私に従うがいい」



セラはかつて「影の王」の力にすがり、自らの無力さを埋めようとした過去を思い出しました。その代償は大きく、失われた故郷と大切な人々の命が、彼女の心に深い傷を刻んでいたのです。


この罪と後悔は、彼女が無意識のうちに封じ込めてきたものでした。


「私は過ちを犯した。仲間として歩む資格なんてない…」


焚き火の炎を見つめながら、セラは声を震わせました。


しかし、リュウは真っ直ぐな瞳で彼女を見つめました。


「過去は消せない。でも、どう生きるかは今の君が決められる」


アイリスは優しく微笑みながら、彼女の肩に手を置きました。


「私たちは皆、過ちと向き合いながら生きているの。仲間は、互いを支えるためにいるんだから」


仲間たちの言葉に触れ、セラは少しずつ自分自身を許し始めます。過去を否定するのではなく、受け入れることで、彼女は前に進む力を得ていったのです。


影の王との最終決戦では、彼女自身の内なる葛藤が試されました。影の王は囁き続けます。


「お前は変わらない。闇から逃れることはできない」


しかし、セラは仲間たちと過ごした日々、分かち合った笑顔や涙を思い出しました。胸の奥で感じる温かな光が、闇を打ち払う力となったのです。


「私は過去の影じゃない。私自身の意思で、ここに立っている!」


輝く光がセラの中から溢れ、影の王を包む闇を打ち破りました。その瞬間、彼女はようやく本当の意味で自由になったのです。


戦いの後、セラは静かに呟きました。


「私はもう、逃げない。過去も痛みも、すべてが私を形作っている。でも、未来は私の手で創り出せる」



こうして、セラは内なる闇を超え、新たな光を胸に旅を続けるのでした。彼女の物語は、傷つきながらも前に進むすべての人への希望となったのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ