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ラスボス悪女に転生した私が自分を裏切る予定の従者を幸せにするまで  作者: 菱田もな
第二章

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王子のお茶会-3


「は?」


 自分でもびっくりするぐらいに間抜けな声が出た。いま、彼は何と言ったのだろうか。聞き間違いでなければ、確かに「婚約者になれ」と言った。


 私がユリウスの婚約者? 冗談じゃない。

 確かに彼の容姿は、推そうと思っていたぐらいには好みだ。しかし、中身が全く合わない。


 それに、お互いさまとはいえ、図書室であんな事をしておいて、何故、婚約者の話を受け入れられると思うのだろうか。


(ユリウスが何を考えてるのか全くわからない……けど、相手は王族。下手に断ると後が怖いな。ここは穏便に済ませないと)


「何だ、その間抜けな顔は。俺の婚約者になれと言ったのが聞こえなかったのか? 頭だけじゃなく、耳も悪いのか?」

「絶対に嫌です!!!」


 やばい。ユリウスの失礼な態度を見ていたら、心の声が盛大に出てしまった。

 あれほど気をつけていたというのに……やはり、人間、無理は良くないみたいだ。


「……そんなに否定するとは、何が気に入らないんだ」

「何がって……」


 そんなの全部に決まっている。あと、何が気に入らないとか、平気でそういうことを言えてしまうところも嫌だ。

 しかし、それを口にするわけにはいかない。どう答えようかと悩んでいれば、目の前のユリウスが首を傾げる。


「どうせその性格では、まだ相手もいないだろう」

「さっきから色々と失礼なことを言っている自覚あります?」

「何だ、いるのか?」

「いないですけど!」

「じゃあ、好いている奴は?」

「そういった方も特には…」


 そこまで言いかけて、なぜかレインの顔が浮かんだ。前にエミリアに同じように聞かれたときは、そんなことなかったのに。


(きっと、この間レインがあんなことをしたせいだ。あんな、あんな、今にもキスしちゃいそうなぐらいに近づいてくるなんて……)


 思い出しただけで、顔が赤くなるのが分かった。そんなわたしの様子を見て、ユリウスが「へぇ、」と意地の悪い声で笑う。


「何だ、好きな奴がいたのか。それは悪かったな。そうかそうか、好きな奴な」

「だから居ませんってば!」

「テオドールは知っているのか? 今度会った時にでも聞いてみるか」

「お兄様に変なこと言わないで!」


 テオドールを盾にするとは、本当にこの男は。必死になるわたしを見て、くつくつと楽しそうに笑っている。本当に性格が悪い。


「好きな人がいるとか関係なく、わたしはシュローダー先輩にはふさわしくないですよ」

「誤魔化すなよ」

「誤魔化してるわけじゃなくて……そもそも、何でわたしなのですか? 王太子妃候補であれば、もっと素敵なご令嬢の方々がいるでしょう。こんな野蛮で下品な女ではなく」


 先ほど言われた言葉を強調すれば、ユリウスは気まずそうに目を逸らした。ふん、わたしは根に持つ女なのだ。


「あれは……」

「何です? シュローダー先輩にとって、わたしは野蛮で下品な女なのでしょう? 更には婚約者もできなさそうな性格の。そんな相手を婚約者に選ぶだなんて趣味悪いですね」


 嫌味たらしくそう言えば、ついにユリウスは何も言えずに黙った。


 そんな彼の様子に心の中で「勝った」と笑みを浮かべながら、紅茶を飲んでいれば、ユリウスがぽつりと呟いた。


「お前が、」

「ん?」

「お前が俺のソウル魔法を打ち破ったからだ」

「は……?」


 全く見に覚えのない事を言われて、頭の中に疑問符が浮かぶ。わたしがいつユリウスのソウル魔法を打ち破ったのだろうか。


 そもそも、彼のソウル魔法を見た記憶がない。ゲームの中でも明かされていなかったので、どんな特性があるのかさえ知らない。


(しかも、それをわたしが打ち破っただなんて……流石に心当たりがなさすぎる。誰かと勘違いでもしているのかな?)


 訳もわからず首を傾げていれば、ユリウスは盛大なため息をついた。


「図書室でのこと、まさか覚えてないのか?」

「図書室……あ、あの時のって先輩のソウル魔法だったんですか?!」


 叫ぶようにそう言えば、彼はこくりと頷いた。


「でも、ソウル魔法って、自分の魂を武器に実体化するのですよね……あの時、武器なんて出してましたっけ?」


 あの場で、そのようなものを見た記憶はない。

 ただただ、ユリウスの黄金の瞳が妖しく光ったかと思えば、気づいたときには体の自由が奪われていた。


(武器ではないけど、もしかして……)


 普段も今日も、彼は目元を隠している。

 サングラス越しの瞳をじっと見ていれば、私の意味深な視線に気づいた彼が「おお、思ったより察しがいな」と、小馬鹿にしたように笑った。


「一言、余計なんですけど!」

「はは、そう怒るな。……それで、お前の予想通り、俺のソウル魔法はコレだ」


 そう言って、彼は自身の瞳を指差した。


「瞳が武器……?」

「俺のソウル魔法を特殊なんだ。武器の代わりに、自身の瞳に特性が宿る」

「ということは、先輩を目潰ししたら先輩の魂にも影響がでるってことですか……?!」

「ちょっと嬉しそうに言うな。ぶん殴るぞ」

「ふふふふ」

「気色悪い笑みを浮かべるな。……チッ、話したのは間違いだったか?」


 ユリウスが呆れた様子でこちらを見つめるが、そんなことは構わない。


 流石に、王族相手にそんな無謀な事をやろうとは思わないけど、いつか何かされた時に脅しとしては使わせてもらおうじゃないか。



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