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ラスボス悪女に転生した私が自分を裏切る予定の従者を幸せにするまで  作者: 菱田もな
第二章

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王子のお茶会-1



「お嬢様、いかがでしょうか…?」

「ええ、ばっちりよ。さすがメアリーね」


 鏡の前、わたしは結ってもらった髪の毛を見て微笑む。いつもは片側を編み込んだり、ハーフアップが多いが、今日はひとつに高く結んでもらった。


「お嬢様にしては珍しい髪型ですね」

「やっぱり、誠意を見せるにはきっちりした方がいいかなと思ってね……」

「誠意?」


 目を丸くしたメアリーに「気にしないで」と言って、わたしは立ち上がり、全身を確認する。……ドレスはこれでいいか。どうせユリウスに会うだけだし。


「あ、そうだ。今日、わたしの帰りが遅くなること、レインには内緒にしててね」

「えぇ、またですか?! 絶対にレインさんに怒られますよぉ…」

「いい? レインが話しかけてきたら無視するのよ、無視! 大丈夫、メアリーならできるわ!」


 メアリーの肩を軽く叩いて励ませば、彼女は「お嬢様はレインさんの恐ろしさを知らないから、そんな事を言えるのですよ」と涙目で訴えてきた。


 安心してほしい。レインの恐ろしさなら、わたしも充分知っている。と、何の慰めにもならない言葉を言いながら、わたしは家を出る準備をする。


「じゃあ、メアリーよろしくね」


 メアリーに手を振って屋敷を出た。扉が閉まる前、泣きそうな顔でこちらを見つめてくる彼女を見ていたら、良心が痛む。だけど、仕方がない。


(だって絶対にレインに言ったらややこしいことになるもの……)


 今日、わたしは例の手紙によって、ユリウスに呼びされている。あの手紙が届いて以来、わたしは気が気でなく、毎日生きた心地がしなかった。


 いっそ何かあるなら学園で言って欲しい。そう思って何度かユリウスの元を訪れたが、彼の隣にはいつもテオドールが居た。


 テオドールには図書室のことも、手紙の内容も伝えていない。もちろん、ユリウスの正体についても。

 なので、テオドールが隣にいると本題を話すことができず、彼らの前でもじもじとするわたしを見て、テオドールは首を傾げた。


「最近、よく来るけど何かあったのか?」

「……お兄様が恋しくて」


 テオドールの言葉に、笑って誤魔化す。そんな様子を見て、後ろのユリウスが小馬鹿にしたように鼻で笑った。


(性悪メガネめ……!)


 テオドールにバレないよう、ユリウスを睨むが意味はない。モヤモヤする気持ちで彼らと他愛もない話をしていれば、鐘がなり終わりを告げられる。


(結局、関係のない話をして終わってしまった…)


 それから、次こそは、次こそはと、ユリウスの姿を見かける度に声をかけた。

 しかし、何度チャレンジしても失敗に終わり、今日、この日を迎えてしまったのだ。




 ──ああ、いま思い出しただけでも、腹が立ってくる。


 今日、もし彼の周りに誰もいなかったら文句の一つでも言ってやろう。まあ、そんなことはないと思うので、それは叶わないだろうけど。


 そんなことを考えれば、馬車が指定された場所に着く。そのまま馬車を降りれば、そこには一人の男が立っていた。おそらくユリウスの護衛だろう。


「お待ちしておりました、アナスタシア様。どうぞこちらへ」


 彼に馬車に乗るように促されば、そのまま行き先も告げられずに走り出した。

 一体どこへ連れて行かれるのだろうか。気になって尋ねてみる。


「あの、この馬車って一体どこへ…」

「ユリウス殿下の命令でお答えできません」

「じゃあ、あとどれくらいで着くとかは教えてもらえたり…?」


 そこからは、何を聞いても答えは返ってこなかった。


(いくらユリウスに口止めされてるとはいえ、そこまで完璧に無視する? ……いやいや彼らも仕事なのだ。怒ってはいけないわ、落ち着くのよ。悪いのは全部あの性悪眼鏡なんだから)


 諦めて、ぼんやりと外の景色を眺めていれば、見覚えのある建物が見えてきた。


 背中に嫌な汗が伝う。いやいやまさか……わたしの勘違いだと思いたい。しかし、馬車はどんどんとその建物へと近づいていく。


 実際に入ったことはないが、ゲームの背景として何度もみた。ユリウスルートでは必ずといっていいほど、出てくる場所。


「………嘘、でしょ」


 そこで、馬車が止まる。

 降りるように促されれば、目の前にそびえ立つのは王城。


(ああ。お父様、お母様、そしてお兄様……アナスタシアは、今日、無事に帰れないかもしれません)


 心の中で祈りを捧げながら、わたしは案内されるがまま、中へと入っていった。



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