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不滅のクリスマスプレゼント

作者: 箕宝郷

 私は元茎島北部に住む社会人3年目の男性です。私は容量が悪い為、職場でのミスが多くいつも叱られております。入社当初は能力に過信していたこともありやる気に満ち溢れていましたが、半年もたてば自分の無能さに気づきやる気も無くしてしまっていました。

 いつしか私は、出勤から退勤まで「どう一日を乗り越えようか」その事ばかり考えるようになり仕事そのものにやる気をなくしていました。人生の先輩達からは「3年は働いてみろ」だとか「お前は甘えている」「まだ若いのだからあきらめるな」など私にアドバイスしてくるが、どれも納得いくものはなかった。

 私はいつしか「出世して木恩を担う人でありたい。」そう考えていた。その為に仕事をしてその報酬として給与と経験値がもらえると考えていた。私は同期よりも早く出世するために仕事に身を捧げる覚悟を決めました。恋愛をすることをやめて、酒、たばこ、趣味を全て破棄して自社に身を捧げるという事を家族や友人そして同期に伝えました。結果「そんな人生つまらないよ」と言う声もあれば「仕事ができないおめぇが言うな」「もっと自分を大切にした方がいいんじゃない?」と心無い返事ばかり言われました。

 失意のなかで私は様々な本を読むようになりました。それは、なぜ私の考えが世間一般的に否定されるのか?納得できる理由が欲しかったからです。ジャンル問わず私は様々な本を読み漁りました。哲学書に心理学書籍、歴史書、木教経典、景念旧教書籍、景念新教書籍しかし、それらを読んでも納得はすることは出来ませんでした。

 ある日の夜、寝る前にスマホでネットサーフィンをしていると1つの政党の存在を知りました。尊考党と言う政党です。私が見た政府与党のサイトでは尊考党および尊考教についてかなり批判していましたが、読み進んでいくうちに尊考党は私が考えに近い政党なのではないかと考えるようになりました。すぐに私は、尊考党のホームページに行きました。ホームには尊考党の理念、政策、目標が書いていました。私はサイトに書いてあること一字一句に感動してホームに書いてある文章に書いてあった文章を読み終えた頃にはもう、尊考党の支持者になっていました。

 支持者になってからの翌日、いつものように出勤すると同僚に「今日機嫌がいいねなんかあったの?」とふと声を掛けられた。こんな風に声を掛けられるのはいつぶりだろうか?私は嬉しくなり、尊考について熱く語った。語りかけた途端、血相を変えて「お前、それについてもう二度と話すな。」と言って私の元を去って言った。私は弁明したかったが、あの空気の中で弁明を行えばケンカになるのは確実であった。 

 私が尊考党の支持者になったという噂は瞬く間に広まった。何を根拠にして言っているのか分からないが、「尊考党に多額の献金を行っている」「休日に尊考党の政治活動を行っており、業務にも支障をきたしている。」などの噂が広まっていた。社内で私は誰にも話さずにいる。社内の人たちは私のプライベートについて知っているのは私の直属上司くらいだ。大多数の人が尊考というワードだけで私生活を勝手に妄想してそれをネタにして会話しているに違いない。私生活について根も葉もないことを言われるのは実に不愉快であった。

 それでも私は尊考党について興味を無くすことは無かった。いや、むしろ尊考党が心の支えになりつつあった。いつの間にか私は尊考党のデジタル会員になっており尊考党の広報を毎日読むようになっていた。政治思想についてはやや難しい部分があり、まだ理解できていない所も多いが「個人の考えを何よりも尊重する」思想が私は一番共感できている。

 以後、職場では尊考について一切口にしないことにした。尊考について話しても誰も共感してくれる人がいないからだ。3日くらい経った頃、職場の上司に呼び出された。上司は「社内規定に違反した行動していると通報があったのだが、心当たりがあるか?」と聞かれて私はとっさに「いえ、特に心当たりはありません。」と返答した。上司は顔をこわばらせて「お前、嘘ついていないか?あまり言いたくないが、尊考党の活動をしていると噂が出回っている。政治活動は社内規定に違反する事は分かるよな?もし違反していた場合は処分の対象になるぞ?」と脅迫してきた。

 休み時間、昼食を済ませて席に戻ろうとするとの席に人だかりが出来ていた。「なにか私の席にありましたか?」と無言で去っていった。机の上にスマホが置いてあり尊考党からの通知がきていた。(もう、これみんなに見られてしまったか)そう、嘆いていると昼休みが終わってしまった。

 その後、同僚達に声をかけづらくなってしまった。仕事で分からないことがあっても聞けなくなっていた。大きなミスを犯した時など上司に聞けなくなった時は比較的仲の良い同期を頼っていたが、今回ばかりは頼れない。その同期達にも尊考については興味は無いと言っていたからだ。流石の同期達も私に対して冷たい態度を取っている。もう職場に私の居場所は無くなった。

 退勤後、あまりのショックで家で何をする気も起きなかった。いつもならいつもヨハネスクエストをやっているが今日はすぐに風呂に入り布団に入った。考え込んでいるうちに「私は何も悪く無い」と考えるようになっていった。どうせ、親に相談しても私を否定ばかりしアドバイスした気になって終わりだ。この悩みを誰に相談するのが正しいのか?私はずっと分からないまま過ごしていた。

 通知がきてスマホを見るたびに「尊考党に聞けばなんて答えるのだろうか気なるなー。」と考え何度も尊考党の公式フォームから質問しようとしていた。しかし、質問すればもう後戻りが出来なくなると考え思いとどまっていた。

 周囲の人間関係に苦しみながらもなんとか毎日出勤し仕事を続けることが出来た。10日ほどたったころだろうか?今度は部長から呼び出された。個室に呼び出された私は、再度尊考について聞かれた。私は改めて尊考党に入党していないし、政治活動をしていない旨を部長に伝えた。部長はしばらく黙り込んだ後、タブレットを取り出しながら「ワメスタにこんな投稿があったようだ。これを見てもしらばっくれるか?」それは尊考党のデジタル党員証であった。私は驚きのあまり言葉が出なかった。「君は以前もそうだったようだが、尊考党員ではないと虚偽の報告をしたね?なぜ尊考党員ではないと嘘をついた?」

私は手に汗を握りながら答えた。「私が尊考党員であると報告しても、私にメリットが無いと感じたからです。」この発言後、私は目線を下に向けた。部長は静かに私を見つめた後、「言い分は分かった。処分が決まるまでしばらく自宅謹慎とする。」と言って部屋を出た。

 私はしばらく固まっていた。ワメスタの投稿主をひどく憎むようになった。チラッとアカウント名が見え同期を連想させるものであった。いますぐ投稿したと思われる同期に問いただしたいものだが、謹慎が言い渡された以上、何もすることは出来なかった。

 謹慎中何もすることが無く、事情を知った家族から勘当されたのか連絡しても返事は来なかった。やはり、私が頼れるのは尊考党しかない。そう確信した私はついに、尊考党のホームページのお問合せページから悩み事を書いて送信した。

 尊考党員様へ

 私はここ最近、仕事が上手く行かずに悩んでいます。職場の人間関係にも悩み私はどうすれば良いのでしょうか?職場の同僚や学生時代の友人、家族に相談しても、否定から入られてしまいます。彼らは否定とアドバイスの違いが分からないのだと感じることもありました。しかし、私と関わりがある人は口をそろえて「お前、それはおかしくね?」と言うのです。相談するだけでは解決にならない。そう考えた私は悩みの答えを求めて様々な書籍を読み、ネットサーフィンを繰り返していました。ネットサーフィンをしているとき尊考党のサイトに出会いました。これは運命的な出会いだったと思います。尊考党は私の考えを受け入れてくれると思ったからです。私は尊考党のデジタル党員になり、新たな活動を始めようとしていました。しかし、周囲の人たちは私の活動に否定的でした。時には周囲の人たちに合わせようとしましたが、もう限界が来ています。尊考党の皆さまなら、きっと最善の答えを導きだしていただけると思いお問合せをさせていただきました。

                                             

 私はこのお問い合わせの送信後、とても幸せな気分になった。今までため込んでいたストレスが抜けたからだと思う。お問い合わせしてから約16時間後に、尊考党から返信が来た。


 お問い合わせしていただきありがとうございます。


 お問い合わせと言うか悩み相談ですね(笑) 私達の回答に納得できずに更にあなた様の心の状態が悪化することを危惧しております。しかしながら、相談を受けた以上回答させていただきます。

 仕事が上手く行かないという悩みはほとんどの人が感じたことがあると思います。しかし、あなたの周りにそれを解決できる人がいないという環境は、とても劣悪と言えます。

 もし、よろしければ尊考党職員になるのはいかがでしょうか?尊考党は全ての考えを受け入れることを理念としているため決して仲間はずれには致しません。中にはとても厳しい仕事もありますが、あなたにとって悪いことはありません。ぜひ前向きに検討してください。

                                          尊考党

 この文章を読んだ私は今すぐ尊考党職員になることを決めた。尊考党に就職するために必要な書類を一式全て集めて返事を送った。


不滅のクリスマスプレゼント

 こんな年末に就職願書を送るなんてサンタも驚いていると思います。早急な回答ありがとうございました。この回答を読み、尊考党職員にならないかとお誘いをいただいたので必要な書類一式まとめておきました。私の家族、友人、職場の同僚などの全ての人間関係をすべて断ち切り就職願書を提出します。もし、尊考党さんが受け取りを拒否したとしても決して恨むことはありません。尊考党さんは尊考主義と言う不滅のクリスマスプレゼントを私に与えてくださったのですから。次は私が尊考党さんに不滅のクリスマスプレゼントを差し上げる番になります。いま私にできることはとても限られていますが、この願書が尊考党さんにとって不滅のクリスマスプレゼントになることを願っております。

 

 その後、私は会社を辞めて尊考党に再就職した。尊考党に再就職後、今までの職場とは違う忙しさがあるがその分、今後奴らに復讐できると考えるとやりがいもすごくあった。


次回の短編は 唱説 男鹿岳 です。

2月ごろ目途に投稿したいと思います。

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