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第8話 笑顔の弓使いと自称天才魔法使い

新たな仲間との出会い――緊張の中でも心が通じる瞬間が訪れます。世未は国王との謁見に向けて少しずつ成長し始めています。新しい世界での第一歩を一緒に感じてください!

 国王との謁見当日を迎えた。謁見の時間が午前中だったため、私はいつもより早めに起きて支度を始める。第5部隊のメンバーと初めて会う人たちもいた。この間の戦で少し見かけたけれど、挨拶することは今日が初めてだ。

 

「はじめまして、水村世未です」

 

 深々と頭を下げる私に対して、何故か賑やかな声が響く。

 

「こちらこそ、ボクはラレット・ミランジュ。ラトって呼んでよ。衣装や美容担当をしてるんだ。早速だけど、世未ちゃんの担当をさせてもらうね♪」

 明るい紫色の髪色で、髪を1束に結んだ髪型と青い瞳をしていて、いかにも美容を担当しているような印象であった。

 

「た、担当……?よろしくお願いしますっ」

 

 鏡に映る自分の姿を見て、世未は少しだけ気後れする気持ちを抱えた。私はドレスに着替え終えた後、メイクと髪型のセットをしてもらうために専用の控室へ案内された。部屋は明るい照明に包まれ、テーブルにはブラシや瓶が整然と並べられている。花模様のカーテンと柔らかなランプが、優雅な雰囲気を漂わせていた。ほんのり漂う香水の匂いが心をくすぐり、どこかおとぎ話の中に入り込んだような感覚になる。

 

「驚いた……これがプロの現場なんだ」

 

 そんな私の驚きを見て、ラトは笑顔で手を広げた。

 

「ボクの職場だよ。さあ、リラックスして、今日だけはお姫様気分になってね♪」

 

 初めての経験で緊張していた私に、ラトは「大丈夫、ボクに任せて♪」と笑顔で声を掛けた。弓使いとしても活躍するラトの柔らかな話し方に、自然と緊張がほぐれていく。話していると、不思議なほどリラックスできる自分に気づいた。会話が弾んでとても楽しい時間を過ごせたと思う頃には、きちんとセットが終わっていた。

 

「ラトって話術師の才能もありそうだね!話しているだけで緊張がどこかへ行っちゃったみたい」

 

 ラトは笑みを浮かべながら、軽く肩をすくめた。

 

「それ、ボクの得意技なんだ。戦場でも、みんなを励まして緊張をほぐすのが役割の1つだよ」

「そんな役割があるんだ……ラトがいると心強いね」

 

 世未は自然と笑みを浮かべながら、彼の手際の良さに見入った。私はありのままの気持ちを伝えた。ラトはとても嬉しそうにニコニコしていたので、私も嬉しくなった。

 

「こいつは褒めて伸びるタイプだから、お姉さんとは相性がいいかもね!」

 

 ふと鏡に映った美少年の姿に驚いた。サラサラの水色の髪に黄色い瞳――その顔立ちは思わず見とれてしまうほど整っている。世未よりも背が低いその少年は、口元にわずかな笑みを浮かべながら、こちらをじっと見ていた。

 

「僕、ディーン・サイレンド。よろしくね、世未姉ちゃん!」

 

 突然の挨拶に驚きながらも、世未は思わず「よろしく」と返す。その後、ディーンはラトに視線を送りながら、生意気そうに肩をすくめて言った。その口調にはどこか挑発的な響きがあった。

 

「僕みたいに優秀になりたいなら、甘やかしすぎは禁物だよ?」

「ディーンってば、相変わらず自信満々ね。でも、頼りにしてるわよ♪」

 

 ラトは軽く笑いながら、ディーンの頭をポンと叩いた。

 

「でも、確かにディーンは生意気な割に頼りになることが多いからね。世未ちゃんもきっと安心できるよ♪」

「当たり前だよ!僕は天才だもん!」

 

 ディーンは得意げに胸を張り、ラトは笑みを浮かべながら肩をすくめた。その二人のやりとりに、世未は自然と緊張がほぐれるのを感じた。

 

「(この二人って、本当に仲が良いんだな……)」

「ディーン。年上のお姉さん相手に礼儀正しくね♪」

「はいはい……わかってるよ。でも、ラトこそ世未姉ちゃんを甘やかしすぎじゃない?」

「甘やかしてなんぼでしょ?彼女、これから大舞台に立つんだから」

「ふーん。じゃあ、僕は逆に厳しくしてみようかな?」

 

 ディーンは意地悪そうな笑みを浮かべると、世未に向かって小声で囁いた。

 

「でも、世未姉ちゃん、意外と緊張してるでしょ?まあ、ボクに任せておけば何とかなるよ」


 その言葉に、世未は思わず笑いながら頷いた。ディーンは軽い口調で言いながら、自信たっぷりの表情を浮かべた。

 

 「僕、特に水属性の魔法が得意なんだ。戦場でも、大きな盾みたいに仲間を守るバリアを作ったり、火の攻撃を消し止めたりしたんだよ。あと、喉が渇いてる仲間に水を出してあげたら、めっちゃ感謝されたしね!」

 

 その言葉に世未は目を輝かせた。

 

「それってすごいね!水属性って万能なんだ……ディーンがいると安心できるよ」

 

 照れながらも満足げに胸を張るディーンの姿が、どこか微笑ましく映った。

 

「すごい!それなら、私も安心して戦えそう」

 

 世未は心の中で、初めて出会う仲間たちへの不安が少しずつ薄れていくのを感じた。

 

「(こんな風に笑いながら会話できる仲間がいるって、思ったより素敵かもしれない……)」

 

 そう思うと、これから始まる新しい日々に対する期待が小さく胸に芽生えた。世未の言葉に、ディーンは少し照れたように笑った後、付け加えた。

 

「でも、他の魔法も勉強中だから、世未姉ちゃんに負けないように頑張るけどね!」

 

 可愛らしく挨拶をするディーンの姿を見て、とても微笑ましくなった。どうやら、ラトとディーンは第5部隊の中でも仲が良さそうにみえた。長い付き合いなのだろうかとも思えた。あれこれと考えているうちに、全てのセットが終えていた。鏡を見直すと、そこには華やかなドレスと美しい髪で整えられた、いつもの自分とは違う姿が映っていた。

 

「(これが本当に私なの……?)」

 

 思わず指先でそっと髪を触れると、ラトが満足げに頷いた。鏡に映る自分の姿に思わず見入った。いつもの地味な自分とは全く違う、華やかなドレスに美しく整えられた髪――そこにいるのは「誰か特別な人」のように思えた。思わず指先でそっと髪を触れると、ラトが満足げに頷いた。

 

「世未ちゃん、見違えるほどキレイだよ!これなら国王様に堂々と会えるね」

 

 その言葉に少し自信が芽生え、世未は控えめに笑みを浮かべた。


 「ありがとう、ラト。本当に嬉しい」


 ラトは軽くウィンクしてから、道具を片付け始める。

 

「お礼なんていいのよ、これがボクの仕事だから♪ でも、次の舞台では、もっと堂々としてね。世未ちゃんのその笑顔、きっと誰もが注目するから」

 

 優しい声でラトに背中を押されるような気持ちになり、世未は小さく頷いた。その時、ディーンが横から口を挟む。


 「それにしても、世未姉ちゃん、緊張してるでしょ?ま、ボクが近くにいれば大丈夫だよ!」


 その得意げな表情に思わず笑ってしまった。

 

「ディーンが頼りになるなら安心だね」

 

 ラトとディーンの姿が少しずつ遠ざかる中、世未はそっと手を胸に当てた。


 「(大丈夫。きっと、私にもできる……)」

 

 静かに決意を抱えながら、次のステップへ向かう準備が整った気がした。

国王との謁見に向けた準備の中で、世未は仲間たちとの絆を深める瞬間を迎えました。この出会いが今後の彼女にどんな影響を与えるのか、ぜひお楽しみに!

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