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第7話 ヒーローたちの素顔

✨特別な一歩、仲間と共に✨

国王との謁見に向けて、世未たちは準備に追われます。ショッピングモールでのドレス選びや仲間たちとのやり取りを通して、緊張の中にも温かい絆が描かれます。彼女が胸に秘めた新たな決意とは――?

 火の国全土に届けられた特大ニュース。奇跡的な勝利を称える声は、国中に響き渡った。そして、運命のように届けられた一通の招待状――火の国の象徴である国王との謁見が約束されたのだ。


 「(国王との謁見なんて緊張するけど、きっとこの場で大事な話があるはずだ……)」

 

 心の中でそんな不安を押し込めながら、私は自分にできる最善を尽くそうと決意した。


 「国王との謁見に向けて、きちんと身支度を整えるべきかな?」

 

 賑やかなショッピングモールには、活気ある人々と鮮やかな装飾が溢れていた。人々のざわめきに混じって、クリスマスソングが小さく流れていた。入った瞬間、周囲のざわめきが耳に届いた。

 

「あれ、第5部隊の英雄だ!」

「本物だ!」


 振り向くと、人々が遠巻きにこちらを見ている。子どもを連れた家族が小声で話している声も混じっていた。

 

「なんだか、すごく注目されてる……」

 

 ジョーは苦笑いを浮かべて手を振った。

 

「ま、ヒーローってのは大変だな」

「まさかここまで目立つとはねぇ。でも、これもアタイたちの仕事のうちだよ」

 

 すると、一人の少年が勇気を出して駆け寄ってきた。

 

「あなたたち、本当に帝国軍を倒したんですか!?」

 

 世未が戸惑っていると、アディルナが少年の頭をポンと叩きながら笑顔で答えた。

 

 「ああ、そうさ。だけどそれはみんなの力のおかげだよ」

 

 その言葉に少年の目が輝き、周囲の人々が拍手を送る。その場の空気が温かさに包まれる中、世未は改めて自分たちの立場を実感した。

 

 「みんなの視線が自分に向いているなんて、今まで想像もしていなかった。嬉しい反面、なんだか落ち着かない……」

 

 世未は姿鏡の前に立ち、淡いピンク色のドレスを片手に持つ。もう片手には黒色のドレスを持ち、見比べる。

 

「いつもの服装で十分なんじゃない?」

 

 ジョーは世未に問いかける。身なりを気にするのは私だけなのだろうか、と少々焦るが、国王と謁見だなんて機会は滅多にお目にかかれないのだから、という気持ちがどうしてもあって気にしてしまうのだ。

 

「どれ、アタイも一緒に見てやるよ」

 

 声を掛けてきたのは、同じ第5部隊の剣士、アディルナ・ヨネットだった。女性の割には身長が高く、華奢な体型をしている。少し癖毛で赤茶色の髪が目立つ印象だ。

 

「世未にはピンクがいいね。せっかくだから、華やかなのがいい」

 

 真剣にドレスを選んでくれるアディルナさんは、とても親切に思える。私のドレスもほぼ決定しそうな時に、ジョーは椅子に座ってくつろいでいた様子だった。

 

「ジョーはどんな感じのスーツを選んだの?」

 

 やる気のなさそうな雰囲気を醸し出している様子だ。


「俺は堅苦しいの苦手でさ」

「せめて、サイズくらい測ってもらいな!」

 

 とアディルナさんが眉をひそめると、ジョーは苦笑いを浮かべて渋々従った。

 

「ジョー、これなんてどう?シックで格好いいじゃないか」

「いやいや、こんなの着るくらいなら普段の服でいいって。そもそも俺、そんなフォーマルな場に慣れてないしさ」

「はぁ!?国王に会うんだよ?ジョーのそのテキトーさ、ほんと感心するわさ」

「だってさ、俺に似合わないだろ?」

 

 ジョーは自分の体にスーツをあてながら笑っている。

 

「似合う似合わない以前に、最低限の礼儀ってもんがあるんだよ!ほら、世未だって頑張ってドレス選んでるじゃん」

「あ、えっと……ジョーがスーツ着てるの、ちょっと見てみたいかな」

「……世未がそう言うなら仕方ないなぁ」


 ジョーは渋々ながら試着室へ向かった。少しの間待っていると、試着室から出てきたジョーは、いつもと違うビシッとしたスーツ姿だった。普段のラフな服装とは打って変わった姿に、世未は思わず息を呑んだ。

 

 「……どうだよ?似合わないって思っただろ?」


 ジョーは苦笑いしながら肩をすくめるが、世未は慌てて首を振る。


「ううん、すごく似合ってる……ちょっと、格好良いかも……」

「え、そうか?……なんだか調子狂うな」


 ジョーは片手で後頭部を掻きながら、少し照れたように視線を逸らした。世未はそんな彼の様子をじっと見つめていると、思わず笑みがこぼれた。


「でも、スーツ姿のジョーって新鮮で良いね。なんだか、大人っぽく見えるかも」

「やめろって。これ以上褒めるなよ、慣れてないんだから」


 ジョーは困ったような笑顔を浮かべ、少し早足で試着室を後にした。その後ろ姿を見送りながら、世未は胸の中が温かくなるのを感じた。


 ジョーが去った後、試着室のカーテンが音を立てて閉まる。周囲には華やかな服を選ぶ人々の声や、店員の笑い声が聞こえていたが、不思議とその空間にぽつんと一人取り残されたような感覚に襲われた。


「(なんだろう、この感じ……少し寂しいけど、でも温かい)」

 

 そんな気持ちに浸っていると、不意に低く落ち着いた声が背後から聞こえた。


「俺が見てやる。そろそろ試着してきたらどうだ?」


 振り向くと、ルロンドさんが腕を組みながらこちらを見下ろしていた。その表情はいつも通りクールで冷静だが、どこか気遣いの色も感じられる。背中を押されたところで、私もいよいよ試着室へ向かった。

 

「(普段着ない服を着るのって緊張する……私に似合うかな?)」

 

 ドレスは淡いピンク色で、肩が大きく開いたデザイン。鏡に映る自分の姿を見て、思わず息を飲んだ。普段とは全く違う雰囲気だ。少し恥ずかしさを覚えたが、鏡に映る自分を見て息を飲む。『こんな私もいるんだ……』そんな気持ちを整理した後、そっとカーテンを開けると、ルロンドさんが待っていた。

 

「どうですか……?似合います?」

「似合ってるな。それに……ちょっと新鮮だ」

 

 驚きの表情を見せたルロンドさんが、一瞬だけ目を逸らす。そのぎこちなさに、思わず頬が熱くなる。私はとても恥ずかしかったが、この淡いピンクのドレスに決めた。試着の後、値段を見て、思わず目を見開いた。自分だったら買えない金額だ。それでもルロンドさんは涼しい顔で、財布から金貨を差し出した。私とジョーの分も含めて2着分の値段が衝撃的だったため、国王の前で恥じないように気を付けようと心に誓うのだった。

 

「アディルナさん、今日はお世話になりました」

 

 世未は深々とお辞儀をする。

 

「アディでいいよ。それにアタイたち同じ仲間だろ?これくらいお安い御用さ。それに、世未が楽しそうだと、アタイも嬉しくなるからね。さて、これで正装もばっちりだし、お披露目が楽しみだな」


 楽しそうなアディの表情につられて笑顔になった。私はこういった『友達』のような人が周りにいなかったため、とても嬉しくなった。アディの笑顔につられて、私も自然と笑顔になった。『こんな風に仲間と笑い合えるなんて……』胸がじんわり温かくなる。もっと強くなりたい――そう心に誓った。


✨絆と成長の一歩✨

今回は、世未の成長や仲間たちとの温かな交流を描きました。新しい装いと共に歩む彼女の姿が、次の物語への伏線となります。お気に入りのシーンや感想、お待ちしています!

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