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第6話 勝利の代償は、説教と恋心?

皆さん、物語もいよいよ佳境に入り始めます。今回の第6話では、世未とジョーの再会が描かれるとともに、戦いの勝利の余韻、そしてその裏に潜む新たな試練が浮かび上がります。果たして、彼らは次なる戦いにどう立ち向かうのか――?ぜひ最後までお楽しみください!✨

 視界の端で、赤い炎の渦が静まり返るのを感じた。遠くから勝利を告げる歓声が微かに聞こえるが、耳にははっきり届かない。焦げた匂いと血の匂いが入り混じり、焼け焦げた地面が目に映る。戦いの終わりを嫌でも実感させる。静寂と疲労が全身にのしかかり、力が抜けた私の体は、そのまま地面へと崩れ落ちた。その後の記憶は、何もない――。


 ジョーが勢いよく副官を斬ったのだ。副官は最後の瞬間、血走った目をこちらに向け、憎しみの炎を燃やしていた。その声はかすれながらも力強く響いた。

 

 「……この力、お前の運命を狂わせるぞ……!」

 

 その声が耳に残る中、私は意識を手放した。耳に副官の言葉がこびりついたまま、全身から力が抜け、視界が暗転していくのを感じた。最後に見えたのは、ジョーの鋭い剣と、それに映る私の揺れる顔だった。


 ここはどこだろうと、意識を研ぎ澄ませた。目の前を暗闇が覆う。あの後、何が起こったのか分からないまま、ゆっくり目を開けた。眩しい光に目が眩む。視界がようやく慣れてきて横を見ると、ジョーが座っていた。

 

「良かった、目が覚めたんだな!……無事で良かった」

 

 両手を目一杯広げて喜ぶジョーの姿があった。私はホッとして胸を撫で下ろした。途端に抱きしめられた。

 

「ありがとう、世未が居なかったら、俺は死んでたかもな」

「本当に、ジョーが生きてて良かったよぉー……」

 

 あの戦いで無事生き延びられたことに感激して、涙が流れた。私たちは、帝国軍に勝ったのだ。

 

「でも、ジョーはどうしてファルナに居たの?」

「多分、世未と似たような感じなんじゃないかな?」

 

 ジョーは少し困ったような笑みを浮かべて話し始めた。

 

「俺も目が覚めたら、全然知らない場所にいたんだ。最初は夢かと思ったよ。でもサージェさんに会って、ここが地球じゃないって分かって……正直、めちゃくちゃ戸惑った」

「そうだったんだ……」

 

 ジョーの顔には、少し疲れが滲んでいるようにも見えた。彼もまた突然の状況に巻き込まれ、苦労したのだろう。そのことを考えると、言葉が詰まる。

 

「俺も、世未がここにいるって分かったときは、驚きと安心が同時に押し寄せたよ。世未がいてくれて本当に良かった。でも、世未がこんな危険な場所にいるなんて……。正直、俺は心配でたまらない」

 

 ジョーの目には、一瞬の喜びと深い不安が交錯しているようだった。そう言って微笑むジョーの姿に、胸が熱くなるのを感じた。その時、抱きしめられた腕に力が入り、急に心臓がバクバク動き始めた。

 

 「ありがとう、世未。君のおかげで生きていられた」

 

 突然の距離の近さに心臓がバクバクと動き出す。

 

「(は、恥ずかしい……。でも、ずっと、このまま時が止まってしまえばいいのに……)」

「あ、あのね、ジョー、聞いて欲しいことがあるの。」

「どうしたの?改まって」

「私……ずっと前から、ジョーのことが……」

 

 言葉に詰まり、胸の中の気持ちがぐるぐると駆け巡る。その時、廊下から物凄く大きな足音が響いてきた。

 

 「(え、なに!?このタイミングで……)」

 

 私は慌ててジョーから身を離すと、次の瞬間、医療室の扉が勢いよく開いた。

 

「世未っ!」

 

 ルロンドさんの声に思わず体がビクッと動いた。振り返ると、彼の顔は冷静さを保ちながらも怒りを隠しきれていない。

 

「今回の戦に勝利できたことは喜ばしい。だが……俺の命令を無視した罪は重いぞ……?」

 

 低く響く声に思わず喉が鳴る。形の整った顔が微かに引きつり、彼がどれほど怒っているかを物語っていた。

 

「ルロンドさんっ、申し訳ないです!」

 

 頭を下げて必死に謝る私に、ルロンドさんは静かに言葉を続ける。

 

「もしお前が失敗していたら、第5部隊どころか、この戦は全滅していただろう。無茶な行動をするなと言ったはずだ」

 

 鋭い言葉に胸が締め付けられる。それでも、彼の表情にはどこか心配しているような影が見えた。

 

「ただ、君がその力で戦況を変えたのも事実だ。……お前の判断が命運を分けた。次からは勝手な行動をせず、もっと周囲を信じろ」

 

 最後は少しだけ柔らかい声に変わり、私の胸にじんわりと染み渡った。

 

 「世未、お前には分かっているのか?この力がどれほど危険なものか。力に頼りすぎることで君が失うものがある。それが俺は怖いんだ――。……だが、それを使わざるを得ない状況にしたのは、俺たち全員の責任でもある」

 

 ルロンドさんの言葉は厳しいが、その奥には私への信頼が垣間見えた。

 

 しばらく頭を下げて謝るものの、なかなか許してはくれず、私はこっぴどく説教を受けたのだった。その様子を見ていたジョーは、まあまあ落ち着きましょうといった雰囲気でルロンドさんをなだめる。……30分程お説教を受けた後、ようやく冷静な表情をし始めた姿を見て、私は心の底から反省した。


 ようやくルロンドさんの怒りが収まった頃、ジョーがポツリと言葉を漏らした。

 

「でも、これで終わりじゃないよな……」

 

 その一言に、ルロンドさんの表情が引き締まる。

 

「そうだ。帝国軍は撤退したが、奴らが次にどこを狙うか分からない。今回の勝利は一時的なものだと考えろ」

 

 その言葉を聞いて、私は再び胸がざわめくのを感じた。この戦いは、ただの序章に過ぎないのだろう。ルロンドさんの鋭い視線が、遠くの何かを見据えているように感じた。彼が何を考えているのかは分からない。それでも、この戦いがまだ終わりではないことだけは、痛いほど理解できた。

 ジョーは小さく息を吐き、私の肩に手を置いて微笑む。その笑顔には、戦場に立つ者の決意と、私への信頼が込められているようだった。その笑顔に、私は不安の中にあっても、一筋の希望を見出せた気がした。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!今回は勝利の中にも新たな困難が見え隠れする展開となりました。ルロンドの厳しさの中に感じる信頼、そしてジョーの言葉に込められた決意。これからの物語はさらに波乱万丈の展開を迎えます。次回もどうぞお楽しみに!感想や応援コメントもお待ちしております!

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