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第43話 回復魔法の剣士、現る!

帝国との戦いを前に、私たちは「回復魔法の使い手」を探すことに。

噂を頼りに向かった先で出会ったのは、元気いっぱいの女の子――?

この出会いが、新たな希望と試練の始まりだった。

 翌日、私たちは街のはずれにある家に、回復魔法を使える人物がいるということを街の人たちから聞き、皆で訪問したのだ。

 家の扉をノックすると、中年くらいの男性が出てきた。


「何か御用ですか?」


「はい、街の噂で回復魔法を使える人物がここにいらっしゃると聞いたので、一度話をしてみたいと思ってな」


「はぁ、娘は今学校に行っていていませんよ。また夕方頃いらしてください」


 そう言って、すぐに扉を閉めて中に入ってしまった。

 仕方ないのでまた夕方訪問することにしたのだ。


「まだかなり時間があるな」

 ちらっと時計に目をやると、まだ朝9時を過ぎたところだ。


(学生ってことは、私たちと同じ歳くらいの子かな?なんだか緊張するなぁ)


「夕方まで特訓に励むかぁ! なぁジョー、剣の特訓に付き合っておくれよ」


「ん? そうだな。待ってるだけっていうのも時間が勿体ないし」


 アディとジョーは特訓ができそうな場所まで移動し、剣技の特訓をするようだ。


「俺たちも夕方まで特訓の時間に当てよう。今日は4人で稽古をつけてみないか?」


 私たちは賛成と言って、ジョーとアディに追い付くように走るのだった。

 せっかくの機会なので、私はディーンに魔法の知識を教わった。

 ディーンは私よりも幼いけれど、実力は先輩なのでとても助かることが多い。


「魔力を集中させるとき、呼吸を整えるのがコツだよ」


「うーん、難しいなぁ。でも、少し感覚が掴めてきたかも!」


 そしてラトからは“流れ”について教わる。


「狙いを定めるときは、周りの“流れ”を意識するといいよ。

風の動きや空気の流れを感じ取れると、弓だけじゃなく魔法でもコントロールが安定するんだ」


「なるほど……魔法を放つときにも、風の流れを感じ取ると精度が上がるんだね!」


 私は今学んだ事を実践しようと、魔法に意識を集中し始めた。


「風の流れを感じながら……魔力を集中……」


「お、さっきより狙いが安定してきたわね♪」


「うん、魔法の出力がきれいだよ。やっぱり流れを意識するのが良かったんだね」


「ありがとう、二人とも!」


 どれも私の魔法に活かすことが出来そうなので、実力を上げるのに丁度良かった。

 ルロンド隊長からは、主にメンバーの隊形や戦略についての話を皆で聞いたのだった。


 ようやく夕方を迎えた頃、もう一度家まで訪問しに行く。


「あれ? うちに何か用ですか?」

 後ろからふいに話しかけられ驚く。


「君はここの家の人か?」


「はい、あたしはユリア・ライアンだよ。旅人さん、よかったらうちに上がってってください!」


 ユリアと名乗る女性は、茶色の髪が肩くらいまであり、白いフードを身に着けている。

 瞳はオレンジ色で丸い目をしている。

 歳は私たちと同じくらいに見える。

 私たちはユリアに招待され、家に上げてもらうことになった。


「ただいま。お父さん、お客さん!」


「君たちは今朝の……もうユリアとは面識があるようだね。よかったら奥へどうぞ」


 私たちは言われるがままに、奥の広いスペースまで通してもらい、広いテーブルを囲い椅子に座る。

 ユリアも普段着に着替えてきたようで、そのまま私たちの近くに座った。


「お兄さん本当にイケメンだね! 絶対モテるでしょ? あたし、学校で友達に自慢しちゃおうかな?」

 ユリアはルロンド隊長を指さし、嬉しそうな表情をしている。


「俺はそう言った自覚はない。……早速だがユリア、回復魔法が使えるといった噂を聞いてやってきたんだ」


「回復魔法ならあたしの得意分野だよ。それがどうかしたの?」


 ルロンド隊長は真剣な表情で頷き、続けた。


「俺たちは、土の神殿にいるローテンスと戦わなくてはいけないんだ。そこで、今回限りでいいから仲間になってくれないか?」


 ユリアは飲んでいた紅茶を吹いてしまった。


「お兄さんたちの仲間!? 何それ楽しそうじゃない! まあ、あたしの回復魔法があれば少しは役に立てるかもしれないけど……」


 一瞬、明るかった表情がふっと曇った。

 ユリアは腕を組み、少し考え込むように視線を落とす。

 それでも、無理して明るく振る舞おうとするかのように、笑顔を作って続けた。


「ローテンスが最強って噂、知ってるんだ。でも、最強だからこそ、あたしに何かできるのかなって……正直、ちょっと自信がないんだよね。でも、みんなと一緒なら……やってみる価値はあるかなって!」

 ユリアは腕を組み、悩んでいるように見えるが、少しした後、話を始めた。


「お父さん、私、学校にはちゃんと行くから、この人たちと冒険に行って来てもいいかな?」


「ユリア、お前はまだ学生だ。冒険なんて危険だし、無茶だ」


「わかってる。でも、あたしだって誰かの力になりたいの!」


「……お前がそういう性格なのは知っている。でも、帰ってこれる保証はないんだぞ?」


「必ず無事に連れ戻します。彼女の力が、我々には必要なんです」

 ルロンド隊長が深々と頭を下げる。


「……信じるしかないのか」

 父親はため息をつきながら、渋々承諾した。


 こうして、ユリアが仲間になった。


「お兄さんたち、あたしの回復魔法、見たことないと思うから、ちょっとだけ見せてあげるね!」


 手をかざすと、薄緑の光がルロンドの腕を包み、古傷がふっと消えた。


「……これは凄い。癒しの力がここまでとは」

 ルロンド隊長が感心して言う。


「すごい! これなら負傷してもすぐに回復できそう!」

 私も思わず歓喜をあげた。


「まかせて! あたし、回復魔法だけは負けないから! あ、あと剣士としてもきっと役に立てると思う! 回復魔法を使える剣士♪どう? どうかな?」


「頼もしい限りだ、是非俺たちに力を貸してほしい」

 ルロンド隊長が微笑む。


「やったね!」

 ユリアがガッツポーズを見せた。


「まあ、ユリアが仲間になってくれるなら心強いな! あ、でもあんまり無茶はさせねぇからな」

 ジョーは少しだけユリアを心配そうに見ている。


「大丈夫だって! あたし、ちゃんと自分の力をわかってるから!」


「おう、無茶しすぎなきゃOKだ」

 ジョーも少し安心したように笑った。


 私たちは家を出た後、旅支度をするユリアを待っていた。


「おっまたせー! 準備できたよ」

 元気のいいユリアに少し圧倒される。


「よし、ユリアが加わったら心強いな。でも無茶はしすぎんなよ?」

 ジョーが念を押すように話す。


「わかってるって! あたし、ちゃんと力を使いこなして動くから!」

 ユリアが笑顔で答えた。


「俺たちがしっかり守る。だが、ユリア、お前の力も信じている」

 ルロンド隊長も頷いた。


「そうだね、みんなで力を合わせて頑張ろう!」

 私は皆と気合を入れた。


 

こうしてユリアが仲間になり、私たちは新たな力を得た。

だけど、この選択が次なる試練を呼び込むとは、誰も気づいていなかった――。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました!

ユリアの登場で物語も少しにぎやかに、そして前進していきます。

次回もどうぞお楽しみに✨

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