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第41話 普通でいたい私と、特別な運命

前回、私たちは風の国王から感謝を受け、土の国へと向かいました。

しかし、そこは荒れ果てた砂漠地帯で、人々が飢えに苦しむ悲惨な状況でした。

そんな中、土の石を巡る新たな戦いが始まります――。

 宿屋の一室に集まり、私たちは静かに輪になって腰を下ろしていた。

 土の国の国王から聞いた話――帝国軍の影、そして“土の石”の存在。それらを踏まえ、これからどう動くべきかを皆で話し合おうとしていた。


「話の内容は察しがついているかもしれないが、今回の目的は土の石の奪還だ。それに、ローテンスというヤツが持っているとなると、今まで以上に厳しい戦いとなるかもしれない」


「私、国王様の話で、ライゼン皇帝の存在を初めて知りました」


 私は不安混じりに眉を寄せた。


「頭の切れる皇帝だ。だが、今の帝国軍は各国の力を奪ってまでして何かを得ようとしているのだから、帝国も滅茶苦茶なことをしてくれているな」


 ルロンド隊長は腕を組み、低く唸るように言葉を絞り出した。


「ライゼン皇帝は何を得たいのか……配下のローテンスと何か関係しているのかな……?」


 隊長は窓の外を一瞥しながら、重たく言った。


「情報不足だな。この街の民は何かいい情報を持っていればいいんだが……皆で街中を当たってみよう。そして世未、君の体質の事についてなんだが、生まれつきと言っていたな? 詳しく聞かせてくれないか?」


「私が物心ついた頃には、転んで傷を負っても、かすり傷程度ならその日に治るくらいでした」


 ジョーの声が、どこか警戒を帯びていた。


「……隊長、世未の体質のこと知って、どうするんスか?」


「以前から世未に宿る“あの力”と、君の回復体質が関係している可能性がある。少しでも手がかりが欲しいんだ」


(なんだろう、この胸のざわめきは。

……まるで、自分の中の秘密が少しずつ暴かれていくような――)


「俺は幼馴染だからよく見てたけど、世未は成績も良いし、運動神経も良いほうッスよ。ただ、ドジな所も変わってないけどな」


『ジョ~、恥ずかしいから皆にあんまりバラさないでっ!』


♦♦♦


 私はずっと、“普通”でいたいと思っていた。

 成績や運動神経が良いせいで、注目されることが多かった私に、仲の良かった子がぽつりとこぼした。


「あんた、すごすぎて近寄りづらいんだよ」


 それが悪意でないことは分かっていた。

 でも、“特別”であることは、いつも“ひとり”と隣り合わせだった。

 輝けば輝くほど、誰かが遠ざかる。

 だから私は、“目立たない私”でいたかったのだ。


♦♦♦


『悪い、でもお前の力って、俺たちが生き残るカギかもしれないんだ。だから……隠さないでほしい』

 コソコソ話している私たちが聞こえてしまったのか、逆に皆の注目を浴びることとなる。


「別にそれは個性でしょ? アタイは何も気にならないけどねぇ」


 私はやはりアディのことを友達だと思っていいと感じた。

 学校という特殊な環境下だったからか、私は特別な目で見られる経験が多かったため、とても嬉しく感じたのだ。


「そうそう、世未ちゃんは世未ちゃん♪」


 ニコニコと頷きながら喋るラトに、私は思わず微笑んだ。


「ラト、流石だね。……でも、ちょっと褒めすぎると調子に乗るぞ?」


「ディーン、それって褒めてるの? からかってるの?」


「両方、かな?」


 とディーンが肩をすくめる。

 そんな2人を見て、ついクスッと笑ってしまった。


「わかった。とにかく今まで集めた情報をまとめてサージェに伝えたいところだな。土の国の件が落ち着いたら、一度火の国まで戻りたいところだ。後はやはり、ローテンスという人物が非常に気にかかるな。今回も特訓を兼ねて、何か対策があればいいのだが……その件に関しても、情報収集しよう」


「よし、明日は街で情報を集める。少しでも手がかりが掴めるよう、各自動いてくれ」


 ルロンド隊長の言葉を背に、私たちはそれぞれの部屋へ散っていった。

 ……明日、この街でどんな“真実”と出会うのか――誰も知らなかった。

今回も読んでいただきありがとうございます!

物語が進む中で、仲間たちの絆や戦いの中で見つける希望を大切に描きました。

次回もぜひお楽しみに!

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