第40話 リンゴと砂漠の国
風の神殿での激闘を終え、風の石を取り戻した仲間たち。
復活した風の国で国王から感謝を受け、新たな旅路へ!
次なる目的地は砂漠の国テラノア――新たな試練が待ち受ける!
風の国王に謁見の予約をしようと試みたが、受付の兵に話を聞くと、国王がお待ちですとのことだったので、私たちはスムーズに国王の間まで通された。
「皆の者、くるしゅーない」
相変わらずの少年のようなあどけなさが目に見えてわかる。
「見たか? そなたたち、街の風車が回っておるぞ!」
興奮して国王の椅子の上を飛び跳ねている。
「これ、国王様お静かにして下さい! ……ごほん、旅の皆様。今回は風の国を復旧して頂きありがとうございました。お礼と言っては何ですが、これをお受け取り下さいませ」
大臣はルロンド隊長に、大金の入った袋を手渡した。そして風の紋章が描かれているバッジを胸元に付けてもらっている。
「ありがとうございます」
「なんの、私たちが出来ることなどこれくらいしかありません。そして……既にお聞きになっているかもしれませぬが、土の国でも様々な困難が待ち受けているかもしれませんので、どうぞお気を付けください」
私たちは深々と一礼し、風の国王と大臣に別れを告げた。
「ヴェントラの風が、どうかあなた方を導きますように」
背に感じる風が、まるで見送ってくれているようだった。
そして――私たちは、次なる地・土の国テラノアへ向かって歩き出した。
いよいよ土の国・テラノアまで向かう最中は、辺り一面砂漠地帯で、植物など1つもない土地だった。強風も吹き荒れており、とても視界が悪い状態での道のりとなった。そのうえモンスターも出現するため、中々の苦戦を強いられた。
そんな中、ようやく土の国の街まで辿り着くことができた。
街の様子を見ても、外と変わらず絶え間なく吹き付ける風に、乾いた砂が肌を刺すようだった。口の中にはじゃりっと砂の感触が広がり、喉がキシキシと音を立てているような錯覚すら覚える。
建物はレンガでできており、茶色くひび割れた外壁がところどころ崩れかけている。窓からは薄い煙のような匂いが流れてきて、乾いた草か何かを燃やしているのかもしれない。
枯れ果ててしまった畑もあり、街の人たちも肋が見えるほど痩せ細っている。そんな中、目の前に肌の黒い子供がとぼとぼ歩いてきた。そして私の服の袖口を掴み、弱々しい声で話しかけてきた。
「お姉ちゃん……お腹空いた……。何か食べ物をちょうだい」
必死にお願いをしてくる様子を見て、私は持っていたリンゴを手渡した。
「ありがとう……!」
その手は骨ばっていて、皮膚はひび割れ、爪は砂で削れていた。
子どもはそのまま走り去ると、小さな家の奥で誰かの名前を呼ぶ声が聞こえた。手のひらの中にある赤い実を、何度も見つめたあと、彼はぽつりと呟いた。
「……妹と分けて食べるね」
その言葉が、風にかき消されながらも、私の胸に刺さった。
この国では他国からの物資も送られていないのだろうかと思うほど、街の人たちの姿は貧困な様子に見えた。私たちに何か出来ることはないだろうかと、少し皆で話し合ってみたのだが、まずは土の国の国王の話を聞くことから始めることにした。
城の受付まで足を伸ばし、謁見の予約を取ろうとしたのだが、やはり私たちの活躍が世間で知られているようで、すんなりと国王に会うことができた。
「国王様、お初にお目にかかります」
ルロンド隊長に続いて、私たちも一礼する。
「して、要件とは何だ?」
右手に杖をつき、立ち上がる。
「帝国軍の侵攻を止めるために、是非とも火の国との協定を結んで頂きたい」
「ううむ……現段階ではそれは不可能でな」
「と、言いますと?」
「土の国は今、帝国軍の支配下である。協定を結ぶとなると、帝国軍を見限らねばならぬ。とは言っても、今の街の状況では……この街も滅びる未来しか待っておらぬ」
「では、土の国の復旧をすれば、協定も考えて頂けるのですか?」
「止むを得んが、そうするしかあるまい。しかし、帝国軍も力を増してきている。もし土の神殿へ赴くのであれば、気を付けて行くことだな。そして土の石なんだが、おそらくローテンスが手にしておる」
「ローテンスと言いますと?」
「強力な帝国兵だ。ライゼン皇帝の直々の配下と言われておる。かつて火の国の一部地域を、たった数日で制圧した猛者だ。……やっかいな敵になるだろうな」
国王は杖を握る手に力を込めながら、ぼそりと呟く。
「……この街にはもう、食料の備蓄も尽きかけておる。水源も涸れ、農作物も育たぬ。国民は飢えに苦しみ、皆、明日を迎えることにさえ不安を抱いている」
少し俯き、苦しげな吐息を漏らした。
「……この国の民は、日ごと痩せ細り、眠るときに“目が覚めるか”すら分からぬ。
わらわがこうして玉座に座っておるのも……民の前で、“まだ大丈夫”と見せかけるための、飾りのようなものよ……。
だからこそ、土の神殿にある“土の石”を取り戻せれば……ほんの僅かでも希望が見えるかもしれぬのだ」
その言葉には、ただの戦略ではない、“この国を救いたい”という切実な想いがにじんでいた。
沈んだ空気が、重く降りた。
――検討を祈っておる。
それだけ言い残すと、国王はゆっくりと玉座へ腰を下ろした。私たちは静かに一礼し、その場を後にした。
そして今後の方針を決めるために、まず宿屋へ向かった。宿内の造りもしっかりしており、強風でもびくともしないため、安全に過ごすことができそうだ。1階の受付で宿を取り、3部屋分を確保してもらえた。とりあえず皆で1つの部屋へ集合することにした。
宿の一室。疲れた身体を休めつつ、私たちは作戦を練ろうとしていた。
その時、ディーンがぽつりと呟いた。
「なあ……さっきの子ども、元気にしてるかな」
「リンゴ、ちゃんと妹に渡せたかな……」
その問いは、誰もが心に思いながらも、言葉にできなかったことだった。一瞬の静寂の中、ルロンドが静かに拳を握りしめる。
「……放っておけないよな、この国の現状」
その声が、今にも崩れそうな“覚悟”の輪郭を強くした。
その言葉が、風にかき消されながらも、私の胸に刺さった。
この国の人々は、今日を生きることさえままならない。手を差し伸べる間もなく、過ぎていく命があるかもしれない。
だからこそ、私たちにできることがあるなら――迷わずに手を伸ばそう。そう、心に誓った。
読んでいただきありがとうございます!
荒れ果てた土の国で見えた希望を信じ、仲間と共に進みます!
次回もお楽しみに!応援や感想をいただけると励みになります!




