第28話 止まった風車と動き出す恋心
水の国を救ったその後、少しずつ動き始める心──。
仲間たちの関係にも、微かな変化の予感が…?✨
受付の兵へ謁見の申し出をしたところ、すんなりと話が進み、女王に会うことが出来た。
「おお! 来るのを待ち侘びていたぞ」
あの冷徹な女王の印象とは打って変わって、喜んでいる様子が伺えた。
「はい。何とか水の供給を復活させることが出来ました」
「そなたたちがここまでの強者だったとは驚いた。そして民たちが活き活きとしているという報告を聞いておる。感謝する。これで水の国の未来は明るいであろう」
「それで、火の国との協定を結んで頂けますか? これは国王からの願いであります」
「国を救って貰えたのだ。私としても喜んで協力させてもらおう」
「ありがとうございます」
「お礼として、これを受け取ってほしい」
ルロンド隊長は、大量の金貨を受け取った。
女王に水の紋章をつけてもらった後、ルロンド隊長がふと世未の方を向き、優しく微笑んだ。
「今回はお前のおかげだな、世未」
「えっ? わ、私は特に何もしてないですよ……?」
「お前の機転がなければ、今頃どうなっていたか。謙遜する必要はないぞ」
普段厳しい隊長の柔らかな笑顔を間近で見た瞬間、世未は不思議なほど心臓が跳ねるのを感じた。
その後すぐに私たちは城を出て街へ向かった。
次の国へ行くための下準備をするために道具屋へ足を運ぶ。
「わぁ、ようやく新しい武器が買えそうですね」
「そうだな。皆の分も問題なく購入できそうで安心した」
各々欲しい武器を選び、新調した物を身に着ける。
「アディとお揃いじゃん!」
「何? ジョーはアタイと同じ物は身に着けたくないっていうのかい?」
「喜んでるんだってば!」
二人が仲良さげに話しているところを見ると、私は胸が痛むというより、嬉しい気持ちの方が勝った。
(良かった、失恋した気持ちが落ち着いてきた。一時はどうなるかと思っていたけど、自分の気持ちに区切りが付けられたかな? ……でも、それだけじゃない気がする。だって、なんだかルロンド隊長を見ると少しだけ胸が高鳴るから)
ちらりとルロンド隊長を見たら、偶然にも視線が合ってしまった。
「どうした? 何か用事か?」
隊長は怪訝そうな顔をする。世未は慌てて視線を逸らした。
「い、いえ! あの、ただ……次の予定を確認しようと思って!」
焦りすぎて口調がおかしくなった気がする。頬が熱い。
(でも、どうして私……隊長を見ると胸が高鳴るんだろう。もしかして私の力が暴走してた時、助けられたことがきっかけなのかな……?)
♦♦♦
武器を新調している時、ジョーが何となく世未とルロンド隊長の会話を気にしていることにアディが気づく。
「ジョー、隊長と世未を見すぎじゃない?」
「べ、別にそんなことねぇよ!」
慌てて否定したものの、内心では胸の奥がズキズキと痛んでいた。
(やっぱり俺、世未のことが気になるのかよ……。世未が俺に笑ってくれた時は胸が弾んだのに……。隊長の前では、あんな照れた顔するんだな……)
ジョーは唇を噛み締めながら、胸の中で複雑な感情が渦巻いていた。
♦♦♦
「ん? ……まあいい。皆、次は風の国へ行く予定だが、心構えはできたか?」
はい、と声が挙がる。
そこに突然突風が吹いたかのように、あのペリカンが現れた。
『特ダーネ! 速報! 水の国に平和が戻ったのヨー!』
速報が入ったという新聞を、やや強引に手渡された。何ともノリのいいペリカンに、世未は少し引きながら新聞に目を通した。
『水の国が救われたから、火の国の市場では魚料理が安くなったらしいヨ! 経済効果も抜群ダネ!』
「相変わらず派手な登場だな……」
ジョーが苦笑いしながら呟いた。
♦♦♦
「お前は……何度同じ失敗を繰り返せば気が済むのだっ!」
ライゼン皇帝の声が響き渡り、イザルトの肩が激しく震える。彼は冷たい大理石の床に額を擦り付けたまま、必死に声を絞り出した。
「申し訳ございません……! 次こそ、次こそは必ず!」
「次、などない! 火の国に続き、水の国まで我が支配から離れてしまったのだぞ! 次に失敗すれば貴様の首だけでは済まさぬ!」
皇帝の怒号を聞きながら、イザルトは密かに拳を握り締めた。
(このままでは終われない……次こそ、必ずあの者たちに報復してみせる!)
最後まで読んでくださってありがとうございます!
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