第13話 幼馴染という壁
旅立ちを前に、世未は長年の想いをジョーに伝える。
しかし、返ってきたのは思い描いていた答えとは違うものだった——。
幼馴染としての関係、壊したくない気持ち、揺れる心。
切ない二人のやりとりを、ぜひ最後まで読んでください!
会議が終わった後、私たちは部屋へ戻った。ベッドに腰かけ、ぼんやりと座り込む。初めての旅に対する期待と不安が入り混じり、考えれば考えるほど不安が募る。私がそんな表情をしていたのに気がついたのか、ジョーが気にかけてくれた。
「俺たち、旅は初めてだけどさ、きっと何とかなるって。世未の不安要素って、そこなんじゃない?」
「うん、そう……。ジョーは私の気持ち、よく見抜けるんだね」
「もう付き合い長いからな、なんとなーくだよ」
ジョーのことが本気で好きだ。もう、気持ちが抑えきれない。私はジョーのいる方へ向き直る。
「ジョー、聞いてほしいことがあるの」
「うん? 今度は何?」
私の真剣な気持ちを察したのか、立っていたジョーも隣に座る。
「……私、ずっと……ジョーのことが好き……。ただの幼馴染としてじゃなくて、一人の男の人として好きなの」
ジョーは一瞬、言葉を失ったようだった。
「え……?」
「ジョーの気持ちを教えてほしい……」
俯いていた顔をゆっくり上げると、目の前には驚きと困惑の表情を浮かべたジョーがいた。
「(あ……もしかして)」
彼の困ったような笑みが、胸に刺さる。
「ごめん……気持ちは嬉しいけど、俺には世未を守りたいって気持ちはある。でも、それ以上には……」
短い沈黙の後、ジョーが続ける。
「幼馴染以上には見られない」
その言葉を聞いた瞬間、心が締め付けられた。それでも、私は無理に微笑んでみせる。
「そっか……。わかった。気持ちを聞かせてくれて、ありがとう」
自分を落ち着かせるために、私は立ち上がった。
「私、ちょっと夜風に当たってくる」
夜空の下に出ると、月がぼんやりと輝いていた。冷たい風が頬を撫で、涙を堪えることができなかった。
「(私、振られたんだ……。昔からずっと好きだったのに……。もっと違う言葉で伝えていたら、結果は変わっていたのかな……?)」
夜風は慰めるように優しかったけれど、今の私にはその優しさが痛かった。気付けば、涙は勢いを増し、私は一晩中泣き続けた。
♦♦♦
ジョーは世未を見つめながら、心の中で自分を責めていた。
「(どうして俺は、彼女の気持ちに応えられないんだ……。世未を傷つけたくなんてなかったのに)」
世未の気持ちを無下にするつもりはなかった。けれど、幼馴染としての関係を壊す勇気もなかった。それがジョーの正直な気持ちだった。
♦♦♦
私がジョーを好きになったのは、幼い頃のある日のことだった。転んで泣いていた私の前に、ジョーが近づき、手を差し伸べてくれた。
「ほら、泣くなよ。お前は強いんだからさ」
その言葉に救われて以来、ジョーはいつも私のそばにいてくれた。学校で孤立していた私に声をかけ、鬼ごっこの輪に引っ張り込んでくれたとき、私は手を繋いだジョーの温かさに救われた。
「世未、俺がそばにいるから大丈夫だ」
そう言いながら、彼は私の手を少し強く握った。その温かさが、当時の私にどれほどの安心感を与えたのか、今でも忘れられない。
雨が急に降り出した帰り道では、自分の上着を傘代わりにしてくれたこともある。
「風邪ひくぞ、ほら走れ!」
彼の笑顔を見るたび、胸の奥がじんと温かくなるのを感じた。
気がつけば、ジョーは私の「特別な存在」になっていた。誰よりも私を支え、誰よりも私を理解してくれる――幼馴染として以上に、大切な存在。
だけど、今日――。
私はその「特別」を彼に伝えてしまった。結果は分かっていたのかもしれない。それでも、伝えずにはいられなかった。ジョーの答えは、私の胸に深く刻まれることになるけれど、この気持ちを抱えて進むしかない。
振られた瞬間、幼い頃の思い出が一気に胸に押し寄せた。あの日、彼に手を差し伸べられた私は――今でも同じように彼の手を求めているのかもしれない。
「(この気持ちは、簡単に消えるものじゃない。でも、それでも私は……)」
目を閉じて深呼吸をする。今はただ、この悲しみを受け入れるしかない。そしていつか、この痛みを乗り越えられる自分になりたいと思った。
読んでいただき、ありがとうございます!
幼馴染への恋、伝えた想い、そして振られる痛み……。
誰もが一度は経験したことがあるかもしれない、そんな切ない瞬間を描きました。
もしあなたが世未やジョーの立場だったら?
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次回もお楽しみに✨