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第12話 水の国《アクエル》への挑戦

第5部隊に下された次の任務――それは、水のアクエルとの交渉。

だが、その国は火の国と過去に確執があり、帝国軍の監視下にあった。

慎重な交渉が求められる中、世未たちは新たな旅へと踏み出す。

 コンコンと静かにノックをし、会議室へ入る。そこには第5部隊のメンバーが集まっていた。既に会議を終えていたのか、和やかな雰囲気だった。


「世未、帰ったのか。お疲れだな」


「ルロンド隊長こそお疲れ様です」


 軽く挨拶を交わした後、会議全体の流れを教えてもらうこととなる。私たちは厚みのある椅子に座り、テーブルの上に置いてある大きな地図を覗き込んだ。国王から他国への援助を頼まれている。他国には、水の国・風の国・土の国がある。どれも帝国軍の支配下となっており、火の国との連携を取れていないのが今の状況だった。


 ルロンドさんは、テーブルの上の地図を指差しながら言葉を続けた。


「次に向かうのは水のアクエル。だが、問題は簡単じゃない。水の国は過去に火の国との交易を一方的に打ち切った経緯がある。領地の水資源を巡る争いもあってな」


 レイ隊長が口を挟む。


「しかも、水の国は帝国軍の監視下に置かれている。表向きは自治を認められているが、帝国軍に逆らう者は厳しい処罰を受けると聞く」


 ルロンドさんが深く息を吐いた。


「そのため、協定を結ぶには慎重な交渉が必要だ。どこでどんな妨害があるか分からない」


「つまり、潜入するような形になるんですね……」


 私の声が震える。水のアクエルの厳しい状況を想像すると、緊張で体が少しこわばった。


「その通り。だが、第5部隊が中心となってこの困難を乗り越えなければ、火の国も長くはもたない」


 背筋が伸びるような緊張感が走った。しばらく長い旅に出ることとなったのだ。私たち以外の部隊は、火の国の守りを固めるそうだ。

 

「1つ気になる点があります」

 

 私は手を挙げ、立ち上がり話を続けた。

 

「これからの旅のメンバーは私たちが行くんですか?」

 

「国王の話だと、第5部隊を中心に他国へ巡ることになる」

 

「その間、火の国の守りは問題ないんですか?」

 

 私が尋ねると、レイ隊長が落ち着いた声で答えた。

 

「第3部隊の増援が入る予定だ。それに他の小隊も準備している、安心して行けよ。まさか、ルロンド隊長が世未を手放したくないとか思ってんじゃねえの?お前がいないと寂しいって泣き言でも言いそうだな!」

 

 レイ隊長がニヤリと笑い、ルロンドさんが低い声で返した。

 

「……勝手に言ってろ。世未は火の国を守るために必要な存在なんだ。それを忘れるな」

 

 軽い冗談が飛び交い、和やかな笑いが起きた。


 「さすが、世未ちゃん、頭が回るね。ルロンド隊長のお気に入りってだけあるね。是非とも第3部隊に引き抜きたいくらい」


 レイ隊長の一言に、ルロンドさんが「あまり調子に乗るな」と苦笑いを浮かべる。和やかな空気の中でも、緊張感が徐々に高まっていた。

 

「皆、突然だが、出発は明日の朝だ。帝国軍の動きが早まっているとの情報が入った。準備を怠るなよ。」

 

 皆、手を挙げず静かだ。

 

「ないなら、今回の作戦会議は終わりだ。解散」

 

 メンバーはそれぞれ明日の準備に備えてか、部屋を出た。

水のアクエルへの潜入が決まった。

帝国軍の監視が厳しいこの地で、交渉は一筋縄ではいかない。

それぞれが覚悟を決める中、旅立ちの前夜――

世未とジョーが、静かに想いを交わす。


戦いの前に、胸に秘めた気持ちは届くのか。

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