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第11話 異常数値が示す未知なるコード

診察室に響く、電子機器の小さな音。

まるで心を見透かされるような問診に、私は少し緊張していた。

でも、まさか…この実験が 自分の秘密に触れるもの になるなんて――。

 私たちは診察室へ行き、問診を受けた。今、体に違和感を覚えるところはないかとか、心と体の具合を聞きたいらしい。でもやはり、感情の起伏が激しくなると額が割れそうな程痛みを感じたことを伝えると、脳の仕組みを調べてもらうことに話が進んだ。


 その際に危険なことはしないための規約書を読み、誓約書を書く。ジョーはそこまでこの実験に乗り気ではなかったみたいだが、私の気持ちを尊重してくれたのかサインをした。実験内容は、私の脳内を調べるらしく、そのために睡眠薬を飲んで一時的に眠ってほしいとのことだった。その際もジョーは横で付き添うと言って聞かなかった。

 

「それじゃあ、この衣服に着替えてきて。リラックスしてもらうために、いい素材の物をラトに選んでもらったから。よろしくね」

 

 私は言われるがままに服に着替えた。そして部屋へ戻ってくると、既に準備が整っていた。

 

 「じゃあこれが睡眠薬ね。この装置を頭に装着してから飲んで、ベッドに横になってくれる?」

 

 サージェは手際よく頭に小さな帽子のような装置を取り付けた。

 

「横で見てるから安心しろよ」

 

 とジョーが声をかけると、私は微笑んで頷いた。


 薬を飲み横になってしばらくすると、頭に装着された装置がわずかに振動し、不規則な音を立て始めた。

 

「……え?」

 隣で装置を見守っていたサージェさんが、画面を覗き込みながら眉をひそめる。

 

「どうしたんですか!?」

 ジョーが声を張り上げる。

 

「いや、大丈夫。数値がちょっと高めだけど想定範囲内……ただ、興味深い現象だな」

 

 頭の装置から小さな異音が立ち始め、ランプがいつもより速いテンポで点滅を繰り返す。サージェが眉をひそめた。

 

  「……ちょっと待て。この数値、通常じゃあり得ないレベルだぞ」

 

 ジョーが身を乗り出して声を荒げる。

 

 「世未、大丈夫か!?」

 

 サージェの目が輝き始め、不安そうなジョーがさらに声を荒げる。


「世未に何かあったら、絶対に許さないからな!」

 

「……ジョー君、その目はやめてくれよ。僕が世未さんを傷つけるようなことをするわけないだろう?」

 

 サージェが苦笑するが、ジョーは一歩も引かない様子だった。

 

「信じていいんだな。それで万が一何かあったら、ただじゃ済まないからな」

 

 そのやり取りをよそに、私の額にじんわりとした熱を感じた。意識が遠のく寸前、「強力なエネルギー反応……これって……」というサージェの声が耳に残った。


 睡眠薬を飲むとすぐに瞼が重くなり、深い眠りに落ちていった――。


 ♦♦♦

 

 気がつくと、隣にジョーが座っていた。彼は疲れているのか、瞳が少し赤い。

 

「ジョー……ずっとここに?」

 

「お前が目覚めるまでな。どうだ、体調は?」

 

「んー……大丈夫。ちょっと眠いけど、それだけかな」

 

「よかった……本当に心配したんだぞ」

 

 その言葉に胸が温かくなる。ジョーがここまで心配してくれるなんて。私は、彼の優しさが胸に染み渡るのを感じた。

 

『ジョーがいてくれるだけで、私は安心できる』

 そんな風に思える自分が少し不思議だった。


 ♦♦♦


 そこにサージェさんも現れた。私は起き上がって伸びをしたら、もう実験は終わったと聞いて、一気に目が覚める。そして頭の装置を取り外してもらった。もう一度普段着に着替えてから詳しい話を聞こうと、診察室の椅子に座る。

 

「結果が出るには、少し時間がかかりそうです。なので、少々お時間を頂きます。分かり次第お伝えしますね。起きたばかりなので、足元に気を付けてください」


 安全のことを考えると、サージェさんの言う通りに過ごすしかないなと思い、その場を後にする。診察室と部屋は隣り合わせなので、移動距離はほとんどない。

 

「僕はこの後、データの解析をします。お疲れさまでした。あ、何か体調に変化があったら言ってくださいね!」

 

 また張り切りだすサージェさんの情熱ぶりに、すごい気合が入っているように感じた。私たちは研究室を出た後、作戦会議をしているであろう隊長たちの元へ向かった。

未知のエネルギーが反応した――これは偶然?それとも運命?

眠りについた世未を待つのは、普通の夢…ではなさそうだ。

次回、彼女が見るものとは…?

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