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第10話 炎の謎、そして彼の優しさ

「暴走する力、その正体は――?」


ジョーを守ろうとした瞬間、突如発動した世未の強大な魔法。

額の痛みとともに目覚めたこの力は、一体何なのか?


その謎を解くため、研究者サージェが調査を申し出る。

けれど、ジョーの表情はどこか険しくて……?


運命が動き出す第10話、開幕!

 「(私が奇跡を起こした少女……?あの瞬間、ジョーを守らなきゃと強く願ったら、額が激しく痛んで……気づけば巨大な炎の魔法を放っていた。どうしてこんな力が……?)」


 深まるばかりの謎はあるが、考えても答えは出ない。誰かに相談すべきだろうかと迷う。ふと自室の鏡を見たら、まだ正装のままだったので急いで着替えをしてから会議室に向かおうと立ち上がる。


 すると、コンコンとノックの音がした。誰だろうと思い、扉を開けた。そこにいたのはジョーだった。


「よっ、お疲れ。……って、着替えの途中だった?ごめん……」


 考え事をしていたために、私は着替えの途中だったことを忘れていた。


「ひゃっ!ちょ、ちょっと待って!」


 顔が熱くなるのを感じながら、思わず扉を閉めた。『ジョーに見られた……!?』その事実に頭が真っ白になる。慌てて着替えながらも、心臓の鼓動がなかなか収まらなかった。姿鏡を再度チェックして確認する。


 「(髪型はいつも通りに降ろして、メイクはこのままでいっか。よし)」


 ジョーを呼び戻す。すると、顔を真っ赤にして目を合わせようとしない様子だった。私も好きな相手に着替えしていたところを見られたのだから、思い出すと恥ずかしさこの上ないが……深呼吸をして、話を切り出すことにした。


「何か話があったの?」


「え、ああ。早く会議を始めたいから、世未を連れて来いって言われてさ」


「時間、遅れちゃったかな?わざわざ呼びに来てくれてありがとう」


「どうってことないよ、俺も一緒に行くし」


 「(いつもの朗らかな笑顔のジョーに戻って、とても安心した。)」


 2人で走って会議室へ向かう。会議室の扉はなんなく開いて、その先にはルロンドさんとサージェさん、第3部隊の隊長さんの3人が座って話し込んでいたようだった。


「遅くなりました!すみません」


「いや、大丈夫だ。少し先に話したいことがあって、早めに来てもらった」


「初めまして、でもないか?俺は第3部隊所属の隊長、レイモンド・スイだ。よろしく」


 ルロンドさんより少し年上だろうか?落ち着いた雰囲気のある人だった。金髪でスラッとした長身が印象的だった。横に立派な大剣が置いてある。レイ隊長の物だろうかと思いながら、空いている椅子に座り話を聞くことにした。


「率直に聞こう、世未――あの圧倒的な力の正体は何だ?」


「……私自身よくわからないんです。ただ、ジョーが危ないって思って感情が暴走したときに額が物凄く痛くなって、気付いたら巨大な炎の魔法が出ていたんです」


「ふむ……何か心当たりはないのか?」


「特別はなかったと思います」


 ルロンドさんは、黙って考え込む仕草をする。


「まぁ、世未ちゃん本人に自覚がないなら仕方ないよね」


 レイ隊長も考え込んでいる様子だった。


「あの力の正体を解明できたら……僕の研究は革命的な成果を生むかもしれない!ルロンド、ぜひ僕に任せておいてよ!」


 目をキラキラと光らせながら、サージェさんは隊長2人に説明を始めた。言葉の通りだったが、サージェさんは研究については一流の腕前を持つために、私の体内で何が起こってるか調べさせてほしいと提案したのだった。


「ちょっと待って、それって世未の体に危険が伴うんじゃないの?」


 ジョーは私の心配をしてくれたのだろうか?なんとなく必死な表情に見える。


「心配には及ばないよ。僕の研究の力は偉大だからね」


 ニコニコと笑みを浮かべながら話している。どうやら自信はあるらしい。サージェさんの笑顔には悪意がないことは分かる。それでも「研究」という言葉が不安を掻き立てる。『本当に安全なの?』と心の中で問いかけても、答えは見つからない。


「少し問診をさせてもらって、用途に合わせて調べさせてもらうよ。危険なことはしないから、安心してほしい。不安なら誓約書も用意するよ」


「俺は研究に詳しくないが、サージェは嘘をついたりしない。もし世未さえ良ければ協力してやってほしい」


 ルロンドさんにまで説得されたので驚く。確かに私自身、一体自分の体に何が起こってるか検討もつかない。今後力が暴走してしまう可能性も0ではない。


「うん……私、少し不安だけど協力します」


 ジョーが驚いた表情で私を見ている。


「わかった、じゃあとりあえず診察室に行こう。話はそれからだね」


「世未に何かあったら……俺が絶対に許さないからな!」


 ジョーの低い声には、不安と怒りが混ざり合っていた。その様子に、サージェもわずかに表情を引き締める。


「じゃあ、ジョー君は付き添い人として一緒に来てもらう。その方が安心でしょ?」


 ニコニコとしながら、診察室まで案内すると手招く。するとルロンドさんは席を立ち、サージェさんに近付いた。


「それじゃあその間、先に会議を進めておくからな」


「世未さんのことは僕に任せてください!」


 何故か興奮気味のサージェさんの様子に、やはり少し不安がよぎる。


「(研究好きそうだから興奮してるのかなぁ?)」


「俺も一緒だから、大丈夫。世未に変なことはさせないからな」


 ジョーは私に安心をくれる。その気持ちが好きな気持ちを加速させる。


「(ジョーが隣にいるだけで、心臓がこんなに高鳴るなんて……この気持ち、どうすればいいの?伝えたい――でも、もし伝えてしまったら、今の関係が壊れてしまうかもしれない。そんな恐怖が私を縛り付けている)」

「好きな人を守りたい、その想いが力に?」


ジョーを救った世未の力。その正体を知るため、サージェが動き出します。

でも、ジョーの「絶対に許さない」という言葉が気になる……。


そして、世未の胸に宿る「伝えたいけど怖い」気持ち。

この想いは、いつか言葉にできるのか――?


次回もお楽しみに!✨

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