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第7話 本能に負けるな! 立花葵!

 ん? ちょっと待てよ……。今この状況は、僕とりえ以外の人間は見渡す限りどこにもいない、完全二人きりの状況なのだ。

 二人きりの状況……。

 

 りえとはプライベートでも遊びに行くほどの仲だ。まぁ、付き合っているわけではなく、本当に仲の良い友達としてなのだが……。

 

 ほとんどは三人で遊びに行っている。女子二人、男子僕一人というなかなかに珍しいグループでだ。

 そんな中、何回か三人の予定が合わず二人いったことがあった。一緒にカラオケなんかにも行ったので二人きりという場面は経験済みである。


 しかし、今のこの二人きりの状況はそれとは全然違う。今、僕が取り返しのつかないようなことをしてしまってもだれにも止められないだろう。

 しかも、ここはおそらく異世界だ。法律だって元の世界とは違う。本当にやろうと思えば本当にやれる。


 いや、本当にそうだろうか? 僕には見えていないだけで、近くに人がいるかもしれない。

 それにりえは大切な友達なのだ。そんなことをしてしまっていいはずがない。

 そうだ。そうに決まっている。


 落ち着け立花葵! 男としての本能に負けるな!

 

「ん? どうした? 急に考えこんじゃって? いや、それもそっか。こんな意味不明な状況だもんね。……ねぇ、話戻すけどさ、今何が起きているか分かる? 」


 ヒィッ! そう。その通りですとも。

 意味不明な状況だから考えていたのであって、決していやらしいことを考えていたわけではないですよ。


 ふぅ―。一回落ち着こう。そして、切り替えよう。おそらくこれ以上、りえに女神様の居場所を聞いても分からないだろう。

 ここは、早く女神様にお会いしたい! という気持ちを抑え、情報共有を行うことが先決だ。


「正直僕も、今起きていること全てはわからない。だけど、とりあえず今、僕が分かっていることを全て話すよ」



 ――僕は、りえとの下校中に発狂女に襲われたこと。殺されかけたこと。女神様に助けていただいたこと。女神様が与えてくださった二つの選択肢の中から、女神様の世界に連れて行っていただくことを選択したことなどなど。

 僕の視点から見たこれまでのことを()(くだ)いてりえに説明した。


「なんであの謎の声のことを女神様って呼んでいるのかはまったくわからないけど、やっぱり葵にも、あの声、聞こえていたんだ。そして私と同じ二つの選択肢とその答え。……偶然ではないわよね。……じゃあ、……これって。……あの声の持ち主の世界にきちゃったってこと? 」


 おそらくそうなるだろう。認めたくはなかったが、僕たちは、女神様の世界に“異世界召喚”されたのだろう。


 ……異世界召喚か。……異世界……召喚……。……異世界召喚!?

 ってことは、……僕って!異世界ファンタジーのような完璧な最強主人公になったってこと!?


「ねぇ! どうしよう葵! 突然異世界に召喚されるなんて聞いてないんだけど! 今の私たち、まさに着の身着のままだよ! 水もなければ食料もない! お金もなければスマホもないんだよ! まぁ使えるかどうかはわかんないけど。ねぇ、どうしよう葵! 」


 つい先ほどまでただの中学生だった僕が、まさか異世界召喚されて、異世界ファンタジーのような完璧な最強主人公なるとは……。一体誰が予想できただろうか。

 実感はないが、天性の主人公特性を持つ僕は、世界を救う勇者にふさわしい伝説のスキルなんかを手に入れたのだろう。

 もしくは陰から世界を支配する魔王にふさわしい、禁じられた古代の魔法?

 最強主人公としてこの異世界で無双むそうする将来の自分の姿を想像するだけでにやにやがとまらない!


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