第31話 『真似』の力
ってな感じで今に至る。
今になって思うのだが、まだアレは手加減してくれていたような気もする。
木刀と互角に渡り合えているあの木の棒で本気で殴られていたら、それこそさっきりえの言っていたようにとれたり、折れたりしてしまっていた気がする。
――カキンッ! カキンッ! カキンッ!
模擬戦は今も継続している。
そんなことより、りえの急成長には驚きだ。
あの急成長は常人の物ではないと一目で分かるほどである。
あれは異常だ。
おそらくあれがりえの手にした力なのだろう。
相手の技を真似して、一瞬で習得できる用になる的な能力なのだろう。
最初からのチート能力ではないものの、その力があれば『あいつ、戦いの中で強くなってやがる』的なことが、現実になると言うことだろう。
なにそれ、まさに王道主人公って感じでズルイ。
とはいえ、これは僕にとっても朗報であった。
りえが完璧な最強主人公としての力を得ていると言うことは、おそらく僕も完璧な最強主人公としての力を得ていると言うことだろう。
一体僕はどんな力を手にしたのだろうか。
りえが戦いの中で成長する系の能力と言うことは、僕は最初からのチート能力とかだろうか。
それはそれで、勇者っぽくて良いな。
……でも、二人の戦闘は全く目に追えないんだよな~。
なんでなんだろう。やっぱり、僕もりえと一緒で戦いの中で成長する系の力で今の僕はまだ力を発揮できていないのだろうか……。
「ハッ! セイッ! ソコッ!」
それにしてもりえも、かけ声的な物を行動につけるんだな。僕と一緒だ。気持ちは凄く分かる。本気になると不思議と声も出てしまうのだ。
しかも、大声を出すと相手を威圧できて一石二鳥なのだ。
まあ、そう考えているのは僕だけでりえは違う理由なのかもしれないけど……。
――カキンッ! カキンッ! カキンッ!
そろそろただぼうっと見ているだけっていうのも飽きてきたな。
とはいっても、どちらにせよ目に見えないレベルの二人の戦闘に割って入るのは無理な話なのだが……。
しかし、何もせずにこの模擬戦が終わるまでを見守るというのはつまらない。
なんか良い感じに、僕でも活躍できる方法はないだろうか。
「まだまだですな。りえ殿の成長速度を認めます。正直、まさかこの一瞬で私の剣をここまで模倣できるようになるとは思っておりませんでした。ただし、たかが真似ごときでは私には勝てますまい」
今のハンネスさんの言葉はよくないな。
おそらく、ハンネスさんは『真に素晴らしいのは努力して手に入れた力だ』的なことを言いたいのだろう。
確かにハンネスさんのであろうこともよく分かる。
しかし、現状は何の力もない僕が言うのも何だが、『真似』ができるというのはどう考えても最強だろう。
オリジナルが素晴らしいのは僕も十分に理解している。しかし、人を『真似』する力をなめてはいけない。
それは、戦闘においても言えることだ。
例えばりえが、ハンネスさんの剣技を完璧に『真似』できなかったとしても、エマのヤバすぎる力や国王の力なんかを少しずつ『真似』ていくだけで、チート能力といえるほどの力を手にすることになるだろう。
重要なのはその後だ。
この後に自分の力で『真似』で手にした力を自分の物とすれば、それはオリジナルと限りなく近い力となるだろう。
そして、りえはそれができる子なのだ。学校中で誰よりも努力家な、りえならきっとこの『真似』の力を使いこなすことだろう。
僕はそれに対しては何の心配も抱いていない。もし、心配なことがあるとすればハンネスさんの見る目のないこの言葉のせいで、りえが気を落とさないかがだけだ……。大丈夫だろうか……。
「言ったわね、ワサビさん! 今に『たかが真似ごとき』の力であなたに勝って見せてあげるんだから……って言いたい気持ちは山々なんだけど、正直今は、私だけの力じゃそれは無理かな。確かに『真似』だけの今は、私だけの力じゃオリジナルにはかなわないけど、絶対にいつか、私だけの力でもあなたを越してみせると誓うわ、ワラビモチ! 」
心配して損したな。そういえばそうだった。りえは強いのだ。りえはこんなちっぽけなことで折れたりなどしない。
――いや、それも少し違うかもな……。




