第16話 初めましての後は自己紹介!
僕とりえはエマの提案に息ぴったりに、少し食い気味で答えた。当たり前だ。
半日かかると聞いて誰が自分たちで歩いて行くというのだ。もし、これがごついおっさんとかだったら誘拐とかを危惧してついて行かないかもしれないが、幸いにも相手は僕たちと同じくらいの歳の少女だ。
この子に誘拐されるという可能性はないとは言い切れないのかもしれないが、ほぼ0%に近いだろう。
それにしても魔法で帰還とはさすが異世界だ。僕も使えるようになってみたいな。
「それで決まりでいいですね。じゃあ早速、魔法を使いますね」
「ねぇねぇ、その前にちょっといい? お互いに自己紹介しない? 」
りえが帰還するための魔法を詠唱しようとした少女にそう尋ねた。
確かに、名前をまだ聞いてなかったな。この子は異世界召喚され、分からないことだらけの僕たちの良い友達になってくれるかもしれない。歳も同じくらいだし、ぜひこの子とは仲良くなっておきたい。
お互いの名前を知らない状態では仲良くなるなんて不可能である。確かに、ここは自己紹介をお互いにすべきであろう。
「確かに、りえの言うことも一理あるな」
「そうですね。これから仲を深めていくうえでも自己紹介は大切かもしれないですしね」
三人の意見が一致した。それにしても自己紹介か。毎年のクラス替えのたびにしてるけど、こんな少人数でするのは初めてだ。
どんな自己紹介をしようか悩むな。
「でしょでしょ。じゃあ、さっそく私から。私は速水りえ。りえは漢字じゃなくて平仮名なんだ。珍しいでしょ」
確かに名前が平仮名なのは珍しいのだが……。平仮名って……。
「――カンジに、……ヒラガナ……ですか。ごめんなさい。それってどんなものなのですか? 」
そりゃそうなるわな。
日本語をお互いに話していると錯覚してしまいそうになるが、ここは異世界である。おそらく異世界語みたいなのがあるのだろう。
異世界語を女神様が日本語に訳して僕たちは理解し、僕たちが話した日本語を女神様が異世界語に直し、それを発しているのだろう。
つまり日本語を知っているわけではないので平仮名や漢字といったこの世界にない言葉を言った場合、相手は理解できないのだ。
ここはとても優しい僕が、りえにフォローを入れてやるとするか。
「漢字や平仮名っていうのは、僕とりえが生まれ育った日本って言う国の言葉なんだ」
「へぇ。二人はこのベルサイユ王国の出身ではないのですね。それにしてもニホンですか。聞き覚えがないですね。これでも国の名前には自信があるのですが。……よほど遠くからやってきたのですか? 」
「そう……だな。確かにとてつもなく遠いところからやってきた。まぁ、話すと長くなるから詳しいことはまた後で話すよ」
別に異世界から来たことを隠すつもりはないのだが、あえて今ここで話す必要もないだろう。
また今度、暇な時にでもゆっくりと今までにあったことを話そうと思う。
「じゃあそういうことで、次は葵の番よ」
次は僕の番か。もう中二病と思われたくはないし、ここは普通にやればいいだろう。
「僕の名前は立花葵。さっきは助けてくれてありがとう。これからもよろしく」
シンプルザベストとはまさにこのことだろう。自己紹介をしつつ、さっき助けてくれたことへの感謝をあらためて伝えた。
我ながら完璧ではないだろうか。
「シンプルねぇ。まぁ……。さっきので恥ずかしくなっちゃったんだろうし、しょうがないか」
凄い嫌みのある言い方であおってきた。
むかつく。むかつくのだが、ここは大人な僕。
甘んじて受け入れてやるとしよう。
「じゃあ最後に、自己紹介してもらってもいい? 」
最後は例の少女だ。
まずは名前を覚えないとな。
「もちろんです。私の名前はエマ・センセーション・ベルサイユ。二人と仲良くなりたいって思ってるいるので、よろしくお願いします」
「エマちゃんね。こちらこそ、これからよろしく」
「よろしくな、エマ」
エマ・センセーション・ベルサイユ……。ベルサイユ……。
さっき、エマが言っていたこの国の名前『ベルサイユ王国』とラストネームが一緒なのは偶然なのだろうか。
いや、偶然に決まっているな。まぁ、一応聞いておくか
「――エマ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。ベルサイユって……」
「ふふ。それはまた今度話しますね。リエちゃんやアオイくんのこれまでの冒険話もそのときに一緒に聞かせてもらってもいいでしょうか」
そうだな。
こっちはまだ話してないことがあるのに向こうからすべて聞きたがるってのは欲張りという物だろう。
また、今度に聞いてみるとしよう。
「そうだな。また今度、話そうか。それじゃあ改めて、これからよろしくな」
「こちらこそよろしくです。それじゃあ、そろそろ帰還魔法に屋敷に行きましょうか」
「そうだな」
「うん。お願いね」
エマは二人の答えを確認すると魔法を詠唱した。
「刹那の帰還!!! 」
――魔法が放たれた瞬間、周囲が一瞬暗転し、気がつくと立派な城門の前に立っていた。
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