第11話 匂いの先に待っていたのは!?
「あんたね……。まあ、いっか。あの人たちに聞けば最寄りの町への行き方が分かるかもしれないし。って、おいてかないでよ! 」
りえが何かを言っているようにも聞こえたが、完全に無視して走り続けた。
冒険者達がいるのはここからぱっと見た感じ百メートル先ぐらいだろうか。
運動神経は決して高いとは言えない僕だが、中の上である自信はある。
異世界召喚されたのが下校中だったこともあり、今の服装は制服なのでちょっと動きにくいのだが、十五秒もあればすぐつくだろう。
――ん?……なんか臭くないか?
アレに似ている。去年の理科の実験でやった腐卵臭だ。何でそんな匂いがするんだろうか。だれかが硫化鉄に塩酸でもかけて硫化水素でも発生させたのだろうか。
まあいいや……。
――えっ? ……アレ?
どんどん匂いがきつくなってきているような気が……。いや、気のせいだろう。たぶん。
「はぁはぁ……。あんたねぇ……。急に走り出さないでよ」
うわ、早! そういえばりえって運動神経抜群だったな。
りえの今の服装も、もちろん制服である。しかも、うちの学校の女子の制服はスカートだ。
なかなかに動きにくそうな格好だというのに、簡単に追いつかれてしまった。
まぁ、僕の名誉を守るために言っておくが、例の冒険者たちまで残り十メートルほどのところで走るのをやめたのだ。
とはいえ、ここまで一瞬で追いつかれるとは思ってなかったけど……
「って臭! 急に止まったからどうしたのかなって思ったけど……」
何かを疑うような目つきで僕を見てきた。
「いや違うから! あんまり僕もわかってないけど、たぶんあの冒険者たちからする匂いだから。……たぶん」
そう、僕が走るのをやめた理由ってのは、何が腐ったような匂いが異常にするのだ。
さすがに鈍感な僕でも分かる。これは、異常だ。
「ってことは、あの人たちが脱糞……」
「だから全く違うから!」
りえが見当はずれのことを言っている。脱糞してこの匂いとかやばすぎるだろ。
これは……たぶん。いや、今は昼なのだからそれはそれでおかしいのだが、それしか考えられない。
「「「 ウゥー 」」」
――うん。やっぱりゾンビだった……。
いや、おかしいだろ!!! 今昼だぞ!!!
ゾンビって夜にしかも墓地とかに出現するものだろ。真昼の草原に出現するとか、どんだけ健康的なゾンビなんだよ!