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99 国際会議

 次の日、やっと本題に入った。そうそうたるメンバーが並ぶ。

 クリスタ連邦国女王、ボンジョール王国の第三王子夫妻、サンタロゴス島のポコ総督、海洋国アルジェットの女王マメラ、虎王国の女王夫妻、餓狼族の族長だ。これに親父とお袋、姉貴、パウロ、勇者パーティーと竜王国王女のカーミラを加えたメンバーだ。


 仕切りは第三王子がするようだ。

 こういったことは得意そうだからな。


「まず、ここに主要国のメンバーが揃いましたことを嬉しく思います。早速ですが、これから我々はどうしていくかについて、議論致しましょう」


 虎王国の女王と餓狼族の族長が口々に言う。


「虎王国としては帝国との取引を禁止、教会の布教活動も禁止する」

「我も同じだ。我らに教会は必要ない」


「それも一つの意見です。ただ、西大陸に住む我々はそれはできない。上手く付き合っていくしかないのです。幸いカルタン派、スケープ派であれば、まだマシです。誰か教会が政治に口出しをしないように言ってくれたら、いいのですがね」


 ここで宣教師で、姉貴の夫のパウロが答える。


「教会のことは本当に申し訳ございません。我々に限らずに真面目な者も多くいるのですが、やはり資金力には勝てず、発言力もありません。金儲けが悪いわけではありません。しかし、今の教会は度が過ぎています。本当は人の欲望を上手く節制するのが宗教であるはずなのに・・・・」


 ここでクリスタ連邦国の女王陛下が発言する。


「皆、帝国の拡大政策と教会の拝金主義に反発していることは分かった。わらわとしては、すぐに帝国やゾロタス聖神国に攻め入ろうとは思っておらん。じゃが、奴らの自由にさせるつもりもない。こういった会議を定期的に開いて、帝国とゾロタス聖神国の包囲網を敷くことを提案する」


 この流れで反対する者はいないだろう。一応教会の関係者であるパウロも反対をしていないし、帝国の公爵令嬢であるアトラも反対していない。まあ、アトラは会議の半分は寝ていたからな。


 ここで第三王子が発言する。


「それではとっておきの策がありますよ・・・・」


 なるほど・・・・第三王子と女王陛下は水面下で手を組んでいたのだろう。本来の目的はこっちだったのか・・・



 ★★★


 第三王子の提案は、スパイシアに各国の子女を留学させるというものだった。頻繁に会議を開けば、帝国から敵意を向けられるが、留学している子供に会いに来ていると言えば言い訳にもなる。それで各国とも年頃の子供たちを連れて来ていたんだ。カインやメアリーの兄として言わせてもらえば、世界各国の同年代の友達ができるのは嬉しく思う。

 しかし、言うことは言わなくちゃな。


「ところで、そんなにお偉いさんの子供たちを預かって大丈夫なんでしょうか?ドレイク領で警護できるとは思えません」


 女王陛下が言う。


「各国から精鋭部隊を派遣してくれるそうだ。それに我が海軍からも1個艦隊を常駐させる。それでも不安か?」


「まあ、それなら・・・」


 ここで思いもよらない人物が声を上げる。カーミラだった。


「船長殿には申し訳ないが、我もここで留学をさせてもらいたい。それにサギュラが動けるうちは、我が全力で子供たちを守ってやる」


 どういうことだろうか?

 カーミラに尋ねる。


「実はサギュラは腹に新しい命を宿している。父親はデイドラだ。それで、長距離の航海は体に悪いから卵を産むまではこちらに居させてほしい」


「それはもちろんだが・・・・驚いた・・・」


 他のメンバーも驚いている。姉貴が言う。


「カーミラ王女は生徒というよりは、先生をしてもらいましょう」


 ということでカーミラは臨時で先生になってしまった。


「船長殿、サギュラが卵を産めば、また復帰させてもらう」


 ドラゴンにも、産休ってあるのだろうか?


 そんなやり取りの後、細かい話に移った。ボンジョール王国のマリー王女、虎王国のタイガ王子、餓狼族のガル君、それにカインとメアリーで、みんな基礎的な学習は終わっているそうだ。一応パウロが面倒を見る予定だが、基本的には姉貴と一緒に領の運営に携わる実習型の研修にするらしい。


 海洋国アルジェットの女王マメラが言う。


「ウチは黒髭と聖女だったあの子たちを留学させようと思う。今やっている公演が終わったら、こっちに来させるよ。ああもバレずに黒髭と聖女を演じきったんだ。ある意味肝が据わって、頼もしいよ」


 各国が集まって会議を行う口実に作った留学制度だが、子供たちはすでに打ち解けている。将来は帝国やゾロタス聖神国の子供を受け入れてもいいかもしれない。まあ、今のままでは無理だろうけど。



 ★★★


 留学の決定やサギュラのおめでたなどで喜びに沸くスパイシアの町だったが、ここに一人、落ち込んでいる男がいる。義兄のパウロだ。


「どうしたんだい、パウロ義兄さん?」


「教会本部が腐りきっていたことがショックでね。私は一体、何を信仰して来たんだろうってね・・・教え込まれていた凶悪な魔王復活も嘘だったし。知らなかったとはいえ、私も教会の嘘に加担していたんだからな」


 俺はパウロに魔王スケープと不死身の聖女の話をする。魔王や勇者に関しては、会議の席で親父から説明をしてもらったが、魔王スケープの話はしていない。スケープ派のパウロが聞いたら元気になると軽い気持ちで話した。


「魔王スケープはその身を犠牲にして、蹂躙されている魔族や人間たちを多く救ったんだ。スケープ像が、あんな痛々しい姿なのも理由があったんだ。それに魔王スケープは戦いの中で友情が芽生えた聖女を助けるために、死に戻りの実験をしていたそうだよ。聖女とは仲が良かったみたいで、聖女も魔王国に移住したんだよ。それから二人で、今後、死に戻りの能力を持った者が教会に利用されないように研究を続けたそうだ」


「そうか・・・教会は信じられないが、私の信仰は間違ってなかったんだな。スケープ様を信じて来てよかったと思う。因みにだが、聖女様は何という方なんだ?」


「えっと・・・カルタンだったかな・・・・あっ!!・・・」


「そうか!!カルタン派が献身的に弱者救済を謳うのも不死身の聖女様に由来するんだな。ありがとう、ネルソン君!!私は新しい使命を見付けたよ。聖神教会を脱退し、真実の教えを広めることにするよ」


「パウロ義兄さんが元気になってよかったよ。でも、前にみたいに信仰、信仰ってならないでくれよ」


「もちろんさ。何事もバランスが大事だからね。日々の生活の中で、どのように教えを生かすか、それが最近の私の研究テーマだからね。1日5回3時間、毎日祈れって言ったって、それは無理な話だろ?」


 もうパウロは心配ない。今度、魔王国に行ったらスケープ関連の資料でも持ってきてあげよう。


 まあ、なんだかんだ言いながら上手くいっているようだ。

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