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【完結】勇者パーティーの船長~功績を上げて軍隊で成り上がったら、勇者パーティーの船長になりましたが、メンヘラ勇者に振り回される地獄の日々が始まってしまいました  作者: 楊楊
第七章 勇者と幽霊船

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87 情報収集

 少し休憩を挟み、資料を読み込んでいく。

 こんなときに頼りになるのはマルカだ。研究者だけあって、分析力はピカイチだ。

 すぐにマルカが意見を言う。


「襲われているのはすべて西回り、ボンジョール王国方面に向かう航路ばかりですよね?」


「そのとおりです。今年に入ってから竜王国を通る東回りのルートは、あまり使われなくなりました。というのも、竜王国が嫌がらせのように我が国の船舶に対して臨検を繰り返すのです。だから、輸送の日数が延びるので、商船からは敬遠されるようになったのです」


 理由は東大陸の麻薬工場事件の関係で、竜王国も本腰を入れ始めたのだろう。あえて理由を言ってやる必要はないけどな。


 更にマルカの指摘は続く。


「これは本当なんでしょうか?マストはボロボロで、1本は折れている。なのに高速で航行する。逆風をものともしない。3隻で包囲しても上手くすり抜けられ、逆に後ろを取られる」


 ギルマスが答える。


「それに魔法障壁も張れるらしい。魔道砲で撃っても当たらなかったようだし。どういう原理か分からないが、中には船底に穴を開けられた船もあるらしい。すべて直接、水夫から聞いた話だ。軍の奴等は戦闘記録を出しやがらねえからな。水夫たちは口を揃えて、本当に幽霊船みたいだったと言っていたよ。まるで「クリスタの悪魔」だってな」


「クリスタの悪魔?」


 ギルマスは得意げに言う。


「知らないなら教えてやるよ。昔、クリスタ連邦国と帝国が戦ったときに帝国軍を震え上がらせた船がいたらしい。神出鬼没でまるで悪魔のようだったらしいぜ。当時、ゾロタス聖神国も帝国支持を表明していたから、第三艦隊が応援で派遣されていたそうだが、輸送艦を残してすべて撃沈されたそうだ。その生き残った奴等がそう言っていたんだよ。当時の教皇も『クリスタ連邦国は悪魔に魂を売った!!これは聖戦だ!!』って言っていたらしいからな。結局、帝国が負けて教皇は責任を取って辞めたそうだが・・・」


 知らないって怖いな。その船の船長と乗員がここにいるのに・・・・


「もしかしたらその悪魔がこっちに来たのかもな。この国では悪魔召喚なんかしたら即死刑なのによくやるよ」


 そのとおりです。こっちに来てますよ。


 レイチェルが言う。


「かなり危険な任務になると思います。絶対受けてくれとは言いません。というのもこれは私個人の依頼ということになっています。つまり、国は関与していないと言い張るためです。報酬や必要経費は国から出ますが、表向きはあくまで個人の依頼を受けただけという形になります。なので、討伐しても海賊を討伐したくらいの功績にしかなりません」


「だが、報酬は桁外れにいいですね。それに前金も破格の額だ」


「つまりそういうことです。口止め料と思ってください」


「それで、失敗したらどうなるんですか?」


「それは・・・私が責任を取るだけです。これも無理を言って通したので、処分は免れないと思います」


 ここに良いところすべて搔っ攫う奴がいた。


「大丈夫!!僕が勇者砲で木っ端微塵にしてあげるよ!!」


 レイチェルもギルマスもアトラに感動している。騙されてるよ。


「本当に貴方は真の勇者様です。どうかこの国をお救いください」


「任せてよ!!」



 ★★★


 しかし、幽霊船はかなりの高性能の軍艦のようだ。マストや船体がボロボロなのは、多分カモフラージュだろう。それに動力は別にあるはずだ。まさかスクリューではないよな?

 そうなら、ちょっと戦ってみたい気もする。どうせ碌な奴等ではないだろうから、アトラに木っ端微塵にしてもらおう。


 そんなことを思いながら、冒険者ギルドを後にする。そして向かったのは町はずれにあるボロボロの教会だった。ここはボンジョール王国の第三王子の紹介状に名前のあった人物がいる場所だ。ここにもレイチェルが案内してくれた。


「勇者様がこちらのブット導師をご存じだとは知りませんでした」


「ボンジョール王国の第三王子からこちらを訪ねるように言われていましてね」


「そうなんですね。ボンジョール王国では、こちらのカルタン派を厚遇し始めたとか。私もカルタン派の信徒なので、嬉しく思います」


 清貧を旨とし、政治的な野心もなく、孤児院や治療院を細々と運営する宗派だとは聞いているが、強欲なスニア派よりはマシなんだろう。

 教会に入ると30代のスラっとした男が迎えてくれた。こちらがブット導師らしい。例のごとく、紹介状を手渡す。


「ハハハハ・・・そういうことか。ルイス王子も人が悪いなあ・・・これは失礼。私がカルタン派の長であるブットです。なんでも協力したいと言いたいところですが、見てのとおり、資金援助はできませんよ」


 というか、いつも紹介状を見せると笑われるんだが、一体何が書いてあるのだろうか?


「ここはボロボロだし、資金援助は期待していないよ。それにしても酷いなあ。ギャンブルにでも嵌っているのかい?」


 空気の読めない質問をするアトラを無視し、俺はブット導師に尋ねた。


「御用商人や教会御用達の商人たちは、一体何を運ぼうとしているんですか?こちらは良からぬものだと思っているのですが」


「紹介状のとおり、鋭い人ですね。そのとおりです。運んでいるのはキシサ草とコーカの実です。どちらも薬の原料としては有用なのですが、二つ揃うと・・・まあ、そういうことです」


 これにはレイチェルがショックを受けている。


「そんな・・・国ぐるみでやっているなんて・・・スニア派が勝手にやったことじゃないんですか?」


「君が知らなくても仕方ないことだ。これは教会でもトップシークレットだからね。これはもう伝統と言っていい。腐りきっているってことさ。私も何度も止めさえようとはしたんだが、逆に今ではこの有様さ。運営資金は減らされる一方だし。本部の会議でも発言権は無いに等しいからね」


「分かりました。これはすぐに公表して、対策を打ちます」


 ブット導師は声を荒げて言う。


「それは絶対に止めなさい!!一介の文官がどうこうできる案件ではない。公表したが最後、不幸な結末が待っている」


「そんな・・・だったら私は何のために勇者様を・・・」


 レイチェルは泣き崩れた。

 デイジーとマルカがレイチェルを慰め、俺は話を進めた。


「俺としては、幽霊船の奴等が奪った積荷で一儲けしようと企んでいると思っているんですが?」


「その可能性はありますね。貴方方が麻薬工場を潰したことは知っていますが、まだ知られていない工場があるのかもしれない。今の状態なら、高く売れますからね」


「分かりました。そっち方面から対策を練ることにします」


「そうしてくれると有難い。ただ、国を相手にしているということは覚えておいてください。私も表立って抗議しても無駄だと分かっていいますから。できる範囲での協力はさせてもらいます」


 俺たちは教会を後にした。


 まあ、やれることはやろう。

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