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83 神の国へ

新たな依頼が来た。

なんとゾロタス聖神国からの依頼だ。本国に来てほしいとのことで、内容は本国で話したいということらしい。討伐依頼ということだけは分かっているそうだ。


俺は担当のコム―ル大臣に言う。


「帝都からゾロタス聖神国に行くのは、陸路が早いですよね。海路だと西大陸を一周しないといけませんからね」


ゾロタス聖神国に海路で行くには、竜王国を経由して東回りのルートか、ボンジョール王国を経由しての西回りのルートになる。それならば国境を接している陸路で行った方が遥かに早く着く。


「それはそうだが、先方は船で来てほしいとのことだ。詳しくは分からないが、厄介な海の魔物でもいるんじゃないのか?」


「そうですか・・・だったら・・・」


言いかけて止めた。

アトラたちを陸路で移動させ、現地に着いたら、地点登録をして死んでもらう。そうすれば、こっちで依頼を受けながらのんびりと・・・・だが、竜王国のようなことも起こるので止めておいた。


「分かりました。ルートは竜王国を経由するルートで行きます。それに一度竜王国に立寄ろうと思っています。先日の建国祭のお礼やデイドラの関係もありますしね。ところで、日程の方は大丈夫ですか?」


「普通の商船が掛かる日数、40~50日を目安にしてくれればいい」


「それでは明日にでも出発し、竜王国の王都ドラゴニアを目指します」


「では、よろしく頼む。それで、この後冒険者ギルドに寄ってもらいたい」


コム―ル大臣との話し合いは終わり、俺は冒険者ギルドに足を運ぶ。受付に言うとすぐに応接室に案内された。そこに待っていたのはノーギー陸軍大将とヤマット海軍大将だった。

ヤマット大将が言う。


「少し込み入った話があってな。手紙では伝えきれん内容じゃったからのう。早速じゃが、ゾロタス聖神国の依頼じゃが、どうも幽霊船が出現して、被害が多数出ておるようじゃ。神の国という設定なのに幽霊船1隻退治できんようじゃ、話にもならん。だから、依頼内容を秘匿にしておいたようじゃ。「クリスタの亡霊」に幽霊船退治を頼むなんて、面白いことを考えるわい」


幽霊船か・・・神官たちが駆除できない強力なアンデットだろうか?


「ゾロタス聖神国からの依頼はそういうわけじゃが、こちらからも依頼をしたい。ゴーストの依頼として、ギルドで受けてくれ。内容は引き続き麻薬の捜査じゃ」


「いいけど、詳しく聞かせてくれ」


「その前にお主は麻薬の製造方法は知っておるか?」


世間一般で出回っている白い粉、通称「パウダー」であれば分かる。鎮静効果のあるキシサ草と興奮作用のあるコーカの実からそれぞれ成分を抽出し、混ぜ合わせる。抽出には大きな炉が必要で、その後の乾燥させる工程でも多くの人の手が必要となる。これでも俺は、麻薬捜査官の資格を持っているからな。


「クリスタの捜査官殿には愚問だったようじゃが、話を続ける。ゾロタス聖神国はキシサ草もコーカの実も生産量は多い。麻薬精製の技術も持っている。となると考えることは、どこに麻薬を売るかになる。世界各地の教会を窓口に売り捌いてきた歴史があるが、これは今ではもうできん。各国とも取締りを強化しているからな。そこで考え付いたのが、原料のまま輸出することじゃ・・・」


帝国はゾロタス聖神国と国境を接しているため、大昔は麻薬の密輸事件が多かったそうだ。なので、検問箇所を配置し、麻薬の密輸を取り締まった。そこで考えたのは、麻薬工場を国外に作り、そこに原料を輸出して、麻薬を売り捌く方式に変更したようだった。


「キシサ草は回復ポーション、コーカの実は強壮剤の原料としても有名じゃ。それを持っているだけでは犯罪にはならん。帝国では、キシサ草とコーカの実を一定量以上を所持する場合は、用途や販売先などの届け出義務を課している。だから、帝国内には麻薬工場は作れん。主戦派がスニア派と手を組んだのも、帝国内に麻薬は蔓延しないと判断したからだろう。皮肉なことに帝都に海路から密輸されることになった訳だが・・・・」


なるほど、麻薬の製造元が分かっているから、そこさえ押せえれば、国内に麻薬が入ってこないということを知っていたわけか。

ただ、海から入って来ることは誤算だったんだろうな。


「我らが何を頼みたいかというと、麻薬の製造元であるゾロタス聖神国で真に麻薬ビジネスに関与している奴らを炙り出して欲しい。原料もあるし、麻薬製造の技術も、麻薬工場を運営するノウハウもある。今は麻薬工場を潰しているので、すぐには麻薬被害は起きないが、将来的にはまた同じようなことをするだろう。危険な任務であるから、情報が取れなくても何も言わん。ただ、心のどこかに留めておいてほしい」


「努力はするよ」


ヤマット大将の口ぶりでは、何が何でも解決して欲しいという感じではなく、せっかく敵の本拠地に行くのだから、何か情報があれば持って帰ってきて欲しいくらいの軽い感じだろう。こちらとしても、違約金はない依頼だし、情報の質によっては高額の報酬が貰えるので、断る理由はなかった。


次の日、クリスタリブレ号は進路を東に取り、竜王国の王都ドラゴニアへ向けて出発した。


★★★


スクリューを使い、3日でドラゴニア周辺の海域までやって来た。すると10騎の竜騎士がクリスタリブレ号の上空に現われ、内3騎が甲板に着陸した。そのうちの一人はカーミラ王女だった。


「よく来たな。歓迎する」


「こちらこそ、わざわざお出迎えいただきまして感謝します」


「堅苦しい挨拶は無しだ。早速だがドルドナ公国の建国式でやったパフォーマンスをやりたい。かなりウケがいいからな。国民も喜んでくれるしな」


最初はデイジーやドルドナ公国の国民を喜ばせるためにやったパフォーマンスだったが、竜王国でもウケがいいようだった。アトラがドヤ顔で言う。


「全部僕が考えたんだから、凄いのは当り前さ」


「流石は勇者殿だな・・・」


カーミラ王女もアトラのヤバさは十分知っているので、ツッコムことはしない。


「じゃあデイドラ、頼むぞ。本場の竜騎士に負けるなよ!!」


「キュー!!」


「アトラも大きな虹を出してやれ」


「もちろんさ!!」


しばらくして、カーミラ王女の騎乗するサギュラとともにデイジーが騎乗するデイドラが飛び立った。


しばらくすると歓声が上がる。素人の俺が見る限りでは、デイドラの飛行能力は他の竜騎士のドラゴンと比較しても遜色ないように思えた。

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