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71 黒髭討伐

ルート川の戦いから1ヶ月、虎王国の女王から呼び出しを受けた。一緒に行くのは勇者ではなく、マメラだったけど。


王城に着くと既に関係者が待機していた。メンバーは女王、餓狼族の族長、熊獣人の族長の女、クリスタ連邦国海軍少将で、ザドラの兄のリザド、そしてボンジョール王国の第三王子だった。虎王国の女王が言う。


「それでは軍議を始めようか。最後の一人も来られたようだしな」


入口を見ると意外な人物が入って来た。竜王国のカーミラ王女だ。


「軍議って、帝国軍の到着を待ってからではないのですか?それにカーミラ王女が来るなんて聞いてないですよ」


「まずはカーミラ王女がお越しになった理由だが、本人に話してもらったほうがいいな」


カーミラ王女は話始める。


「我ら竜王国は「中立、不干渉」が原則で、建国より守り通している。しかし、例外があってな。麻薬と人身売買に関わる案件で、国民が被害に遭う、又は遭う可能性があれば、国外において捜査ができることになっている。海洋国アルジェットの奴等は我が国にも、麻薬を売ろうと計画していたからな」


俺たちがルート川で黒髭の艦隊を打ち破った後、すぐに竜王国に連絡を入れた。裏で糸を引いていた聖神教会の関係者が海洋国アルジェットから本国に逃げ出す可能性が高く、逃げるのに竜王国の領海を通過する可能性が高いとも伝えていたのだ。

海洋国アルジェットからゾロタス聖神国は竜王国の領海を通るルートか、一旦ボンジョール王国まで行って、南回りで航行するしかない。地理的に考えて竜王国の領海を通るルートしかない。多分、聖神教会の幹部クラスを捕まえて尋問したようだが、竜王国も狙われていたとは知らなかった。


「事件の全容は先に渡した報告書のとおりだ。裏で聖神教会のスニア派が黒髭を操っていたことは、捕まえたスニア派のナンバー2の自供のとおりだ。ただ、竜王国への麻薬密売の計画は頑なに否定したがな。それを自供させるのに苦労したので、到着が遅れてしまった」


尋問とはいうが、多分拷問だろう。


「どんな方法で自供を?」


「それは案外簡単だった。ドラゴンに括り付けて、高速で飛んでやればすぐに自供したよ。詳しいことは覚えてないとは言っていたがな」


多分、カーミラ王女は黒髭討伐計画に参加するために無理やり自供させたのだろう。報告書を見ても「ゆくゆくは考えていた」というふうになっている。強引な手法だが、有難い。


「続いて帝国軍だが、かなり到着が遅れる。それで、現地で合流することにした」


ここにリザドが口を挟む。


「別任務でサンタロゴスに行ってたんだけど、そこで偶々こっちに来る帝国軍と会ってな。一緒の時期にロゴスを出発したんだが、これが遅いのなんのってありゃしねえ。あの速度じゃあ、こっちに来る頃にはすべて終わってる」


これで、帝国軍は誰を派遣してくるか見当がつく。


「帝国軍は海兵隊のレオニール中将が来られるのですか?」


「そのとおりだ。揚陸艦5隻、軍艦3隻で来ている。「是非とも一番槍を」と言っていたが、一番も何も、軍議にさえ間に合っておらんからな・・・」


まあ、そうなるだろうな。


「では早速だが、船長殿。この戦力で策を立てられるか?好きに言ってもらっていい」


「そんな重要な軍議なら、勇者様を・・・」


ここで、ずっと黙っていた熊獣人の族長が声を上げる。


「あの馬鹿が立てた作戦がまともなわけがあるか!!だから呼んでねえんだ。いい加減気付け!!」


この地域では虎獣人、餓狼族と並んで熊獣人の強さが有名らしい。獣人の中でも、この三種族がガチガチの戦闘民族なのだ。なので、獣人連合軍の主力と言ってもいい部隊なので、当然軍議にも参加している。しかし、この族長の女とアトラは因縁があるという。


「いきなりだよ。『君は男に見えても女の子だよね』と言ってきて、いきなりモフモフされたんだぞ!!そんないきなり、承諾も取らずにモフモフするなんて非常識すぎるだろ?

まあ、虎獣人と餓狼族はもっと酷い仕打ちを受けたみたいだから、我慢したけどな・・・・」


また知らないところで、アトラがやらかしていたようだ。


「勇者に成り代わりまして、お詫びします」


「アンタに謝られてもねえ。まあ、苦労してるんだろうけど、しっかり監視しといてくれよ」


「はい、すいません」


なんで俺が謝っているんだ!!


「まあ、そういうことだ。ところで作戦のほうはどうだ?」


やはりここは敵の意表を突く方法がいいだろう。俺もそうだが、相手だって竜騎士が攻めて来るとは思っていないはずだ。だから、それを使おう。俺は自分の考えを説明した。

第三王子が笑いながら言う。


「女王陛下、やはり面白い男だったでしょう。それに有能だ。私はその作戦を指示する。ついでに囮の囮部隊に志願するよ。遠方まで来て、主役を張ろうとするほど厚顔無恥ではないからな。どこかの帝国のように」


リザドも続く。


「俺達も立場的にそうだな。だったら、上陸部隊の掩護だな。上陸する前に決着はつくと思うけど。それと質問だが、上陸部隊にはこの作戦は伝えるのか?」


「いや、伝えない。囮は真剣味が大事だ。あの人がそんな器用な真似は出来ないだろう?」


「それはそうだな・・・」


一同笑いに包まれた。

軍議はそれで終了し、次の日海洋国アルジェットへと出発した。



★★★


俺たちは現在、海洋国アルジェットの本島まで、約1日の地点にある無人島に停泊している。帝国軍と合流するためだ。停泊して、2日後に帝国軍はやって来た。すぐにマメラとアトラを連れて、レオニール将軍に挨拶に向かう。


「マメラ、キチンとした言葉遣いで、しっかり御礼を言うんだぞ。女王になったらこういったことも大事になるからな。レオニール将軍は変わった人だけど、決して悪い人ではないから・・・・」


「ちょっと緊張してきたよ。虎王国の女王や餓狼族の族長のような喋り方をすればいいんだよね?マリア様やその旦那さんからは習ったけど・・・」


「大丈夫だよ。僕を真似すればいいんだからさ」


俺はアトラの後ろで首を振る。マメラも分かってくれたようだ。


レオニール将軍との面談はスムーズに進む。


「わ、我は海洋国アルジェットの女王となるべき者、マメラだ。遠路遥々、我らのために駆けつけてくれたことに礼を言う。今回の作戦では貴殿らの働きに掛かっているといっても過言ではない。猛将レオニール、ここにありというところを見せ付けてほしい」


マメラは緊張していたが、予め用意しておいた言葉を伝えることができた。


「なんと!!これは未来の女王陛下にそのような御言葉をいただけるとは感激であります。噂では女王陛下は衝角ラムで敵艦隊を粉砕したとか?我も衝角ラムには思い入れがあるのです」


「ああ、そのことか・・・これもすべてこちらの・・・」


マメラが言いかけたところで、アトラが遮る。


「僕の発案さ!!レオニール将軍にも見せたかったよ。それに最後は僕の勇者砲で勝負が決まったんだけどね」


「勇者様の発案でしたか!!そうですよね。よく考えると「赤髭」の得意戦術を現代に蘇らせるなど、勇者様しかおられませんな。我も少年時代は「海賊赤髭」の演劇を見て心を踊らされたものでした」


「これは君だけに言うんだけど、実はクラーケンを倒したのも衝角ラムを使ったんだ」


「それは凄い。今後海兵隊は全艦、衝角ラムを取り付けることを義務化しましょう」


アトラとレオニール将軍は、二人で去って行った。また、クラーケンを出してきた。アトラはクラーケンに思い入れがあるのだろうか?


「挨拶とかは上手くいったけど、本当にあの将軍大丈夫かい?あの勇者様と話が合うなんて、信じられないよ」


「だから、囮だって伝えなかったんだよ・・・・」


因みにアトラにも言っていない。

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