7 勇者パーティーとの邂逅
ギルドでの手続きを終えた俺達は、総督府に向かった。ポコ総督が出迎えてくれる。
「これはこれはドレイク閣下、クラーケンも討伐され、帝国とつながっていたギルマスも排除することが出来ました。改めてお礼を申し上げます」
「ギルマスの件は最初から言ってほしかったですがね」
「まあ、敵を騙すにはまず味方からと言いますからな」
喰えない人だ。
「それで、打ち合わせというのがですね。勇者様のことなのですが・・・・その・・・何があっても耐えてください」
「一体どういうことでしょうか?話が見えないのですが」
「一言で言うと、勇者は大馬鹿最低のカス中のクズです!!」
いつもニコニコしているポコ総督がブチギレている。落ち着いたところで話を戻す。
「取り乱してすいません。勇者の到着が早まったのも事情がありまして・・・・」
勇者は本当に馬鹿で迷惑な奴らしい。予定変更で急遽、ボンジョール王国を経由してサンタロゴス島に向かうことになったのだが、開催された晩餐会でボンジョール王国の国王達を盛大に煽ったらしい。耐えかねた家臣の一人がその勇者を殴りつけてしまった。
これは帝国に侵攻の大義を与えたことになる。世界を救う勇者に歯向かうことは、人類の敵に等しいという論理だ。なんたって勇者は神に選ばれたことになっているからな。結局、この件は不問とされることになった。しかし、これは高くついた。無理な要求をかなり呑まされたそうだ。いくら大国のボンジョール王国でも人類の敵認定されて、全世界を相手に戦うことなんてできないからな。
そして、予定されていた行事はすべて中止、予定を早めて出航したので、到着が早まったらしい。
「本当に酷いんです。私も『臭い獣人は近寄るな、金の亡者め』と罵られました。今回の騒動も晩餐会で勇者が獣人を貶める発言を繰り返したからでした。第三王子の奥様は、獣人ですからね。殴った家臣は第三王子を慕っている者でした。本人は自害すると言ってましたが、降格処分だけで済みました」
「本当にクズですね」
「だが、腐っても勇者、従うしかありません。ドレイク殿を煽り、クリスタ連邦国を攻める大儀を得ようとしてくると私達は危惧しているのです。そうなれば真っ先に差し向けられるのは我々ボンジョール王国の軍隊でしょうね。両国が疲弊したところを帝国が漁夫の利を得る形になるかと・・・」
なんて奴だ。まるで、神に守られたアタリ屋じゃないか!!
現在この付近の勢力図は、海上に限っていえば、グレイティムール大帝国、ボンジョール王国、クリスタ連邦国の三竦みの状態だ。一国で二国を相手にすることはできない。今のところ、敵の敵は味方理論で、クリスタ連邦国とボンジョール王国は友好関係にある。これを破綻させて、共倒れしてくれれば帝国としては、万々歳だろうな。
「ですので、誠に申し訳なく思っておりますが、どうか、どうか、何があっても、耐え抜いてください」
「大丈夫ですよ。耐え切れなくなったら、綺麗に始末しますから。危険な海に事故死は付き物ですよ」
「それができれば苦労しないのですがね・・・・」
どういうことだろうか?
そんなに勇者は強いのか?
★★★
ポコ総督から注意を受け、俺達と航海士は勇者が待つ応接室を訪ねた。
事前にレクチャーを受けたとおりの人物達が居た。
青髪、青目の小柄でショートカットの少女が勇者だろう。俺は怒りを押し殺して、挨拶をする。
「クリスタ連邦国海軍特任大佐のネルソン・ドレイクであります。この度は・・・」
「名前なんていいよ。どうせ覚える気ないしね。船長って呼ぶからそれでいい?」
「ご自由に」
「というか、遅れて来てその態度は何?僕達を舐めてるの?普通なら真っ先に土下座くらいするでしょ?全くこれだから田舎者は・・・」
キレそうになるが、何とか堪える。勇者って煽りスキルでも持っているのか?
更に勇者は止まらない。
「それに航海士も亜人や獣人ばっかりじゃないか!!それに水夫は魔族だって?仕方ないから乗ってあげるけど、匂いが移らないように気を付けてよね」
俺が怒りに耐えていると更に言う。
「返事くらいしたらどうなの?」
「できる限り努力致します」
「まあいいわ。
おい!!タヌキ!!今日のパーティーの準備はできてるんでしょうね?」
「それはもう、クラーケン料理も準備しております」
俺達はコイツの為に命懸けでクラーケンを討伐したわけじゃないぞ!!
まあ、ポコ総督もそれは分かってくれてると思うけど。
「そうね。クラーケンも勇者パーティーが討伐したからね」
広い意味ではそうだろうけど・・・・
「じゃあ、3日後に合流するからよろしく。今度は遅刻しないでよね。3時間前には到着して待つくらいしてもらわないとね。なんたって、勇者パーティーなんだから」
そう言うと勇者の少女は去って行った。
一同呆気に取られている。
そこに赤髪、赤眼、大柄で筋肉質の女戦士が近付いて来た。
「アトラが失礼をした。悪気はないんだ」
そう言う女戦士の目は明後日の方向を向いている。
「アトラ?」
「そうか・・・名乗ってもいなかったな・・・」
そこから、女戦士が音頭を取り、自己紹介をしていく。
勇者パーティーは4人で、勇者以外は話はできるようだった。これに執事とメイドを加えた6人で活動しているそうだ。
メンバーはこんな感じだ。
勇者 アトラ・ルース 16歳
青髪青目、ショートカットの美少女。認めたくないが顔だけは整っている。但し性格はクズ。公爵令嬢。
戦士 デイジー・ドルドナ 18歳
赤髪、赤眼、大柄で筋肉質。ザドラよりは一回り小さい。武人気質。
神官 ニコラス・ポルトス 14歳
金髪青目の美少年。最年少で遠慮がち、常に何かに怯えている。回復魔法が得意らしい。
魔道士 マルカ・バートス 18歳
黒髪、黒目、黒のとんがり帽子が特徴的だ。いつも眠そうな感じだ。
執事 セガス 年齢不詳
壮年の紳士に見えるが、ヤバい雰囲気を醸し出している。暗殺者か特殊部隊の所属だろう。クリスタ連邦国の特殊部隊の奴と同じ感じがする。
メイド アデーレ 年齢不詳
20代後半だと思うが、聞くに聞けない。コイツも多分、セガスと同じタイプの職種だからな。
一通り、話が終わったところで執事のセガスが言う。
「今回勇者パーティーの船となったクリスタリブレ号ですが、少し取り付けたい物がありまして、明日少し作業をさせてください」
よく分からないが、儀式か何かの関係だろうか?
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