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69 真相

奴隷となっていたマーマンのマドルから話を聞く。マメラの話では、マドルも船乗り、それも船長クラスだったそうだ。


「本当に下手を打ちましたよ。マメラ姐さんたちが海賊になってからしばらくは、細々と活動を続けていたんですがね。それでも目に見えて仕事は減っていきました。俺だって、獣人たちを奴隷にして麻薬工場に送り込むなんていう仕事は断ってきました。それは他の獣人や亜人の船乗りたちも同じです。そんなとき、かなり報酬のいい物資の輸送の仕事が舞い込みました。少し怪しい気もしましたが、仕事が無かった期間が長かったので、すぐに飛びつきました。そして、その物資の輸送の目的地というのが、この里だったんです。この里に着くと同時に襲撃を受けました。それで、船は奪われ、奴隷に落され、今に至るって感じですかね。運んで来た物資というのが自分と乗員だったなんて、ざまあないですね。

こんなことなら、マメラ姐さんと一緒に海賊になるんでしたよ」


これにマメラが苦笑いをしながら答える。


「こっちはこっちで大変だったよ。竜王国の竜騎士と「クリスタの海蛇」に挟み撃ちに遭ったんじゃ、どんな奴でも勝てないよ。海賊なんてするもんじゃないよ」


「そっちもそっちで大変だったんですね。あっ!!そうだ。後1週間もすれば、物資輸送船が来て、麻薬を持って行くんですよ。それはすぐに伝えないと駄目だと思ったので・・・」


マドルの話では、1週間もすると輸送船が来て、物資を降ろし、麻薬を積んで出発するそうだ。バックに海洋国アルジェットが居ることを考えると、少しでも戦力は削いでおきたい。そんなことを考えながら、軍議で提案した。

虎王国の女王が言う。


「つまり、ここに、のほほんと麻薬を受け取りに来た馬鹿を皆殺しにするというのだな。我は賛成だ」


「皆殺しではなく、できれば情報を聞き出したいので何人かは・・・・」


「できればだな。分かった」


多分分かってないと思う。



★★★


そこからは、大体2週間に1度のペースで輸送船がやって来た。特に俺たちがすることはなかった。事情が分かるマドルが案内役となり、奴隷のまとめ役となったと輸送船の関係者に信じ込ませる。そして、ある程度の人員が下りて、すぐに出発できない状態を確認して、一気に叩くという作戦だった。作戦は上手くいった。歴戦の戦士たちが不意打ちをしてくるのだから、対処のしようがないのも当然だ。


しかし、2ケ月目になると相手も様子が変わって来た。5隻でやって来て、3隻は船着き場に停泊し、残り2隻はすぐに帰還できるように準備をしている。


まあ、そうなるだろう。余程の馬鹿じゃないかぎり何かしらの対策は打ってくる。接岸せずに待機している2隻は、何かあれば3隻を見捨てて、逃げるのだろう。それで、最低限情報を本国に持ち帰るつもりらしい。しかし、こちらも対策済みだ。


陸上で襲撃を受けたのを確認した2隻はすぐに反転して、逃走を開始した。こうなることを見越して、俺たちが待機しているわけだけど。


「急接近する!!アイツらはまだ、俺達に気付いてない。射程に入ったら、迷わずに勇者砲を撃て」


「久しぶりだからね。撃ちたいと思っていたんだ」


俺たちが近付くと2隻も船足を上げる。だが、もう遅い。射程に入っているからな。すぐに轟音が響く。調子に乗ったアトラはなんと、3発ずつ撃ち込みやがった!!

確認したが、2隻とも原型は留めていなかった。何人かは逃げ出して、川に飛び込んでいるから、助かるだろうけど。これは流石にいただけないので、アトラを叱る。


「いくら20発撃てるからといって、無駄撃ちはするな!!こちらが把握していない敵が潜んでいたらどうするんだ?20発撃てるからといって、20発撃っていいことにはならないんだ」


「せっかくいい気分で敵をやっつけたのに。ネルソンの所為で台無しだ」


アトラは全く反省していなかった。


戦後の処理も終えて、捕まえた捕虜を尋問する。捕虜の代表格の男が言う。


「調子に乗っているようだが、もう遅いぞ。俺たちが帰って来なかったら、黒髭艦隊がやってくるからな。皆殺しだ!!それが嫌なら、すぐに俺たちを解放しろ。命だけは助けてもらえるように取りなしてやる」


黒髭艦隊?

俺が何のことかさっぱり分からずにいるところで、マメラが解説してくれる。


「今の王の直属の艦隊だ。アルジェットを建国した伝説の海賊「赤髭」の生まれ変わりを自称した今の王が、作ったのさ。自分のことを「黒髭」だってさ。笑っちまうよ」


「実力はどうなんだ?」


「アルジェットでは最強ということになっているよ。今の王はほとんど海に出ないし、指揮は部下任せ、それに「クリスタの海蛇」や竜王国の竜騎士とやり合った、アタイから言うと、見掛け倒しもいいところだよ。アタイらでもやってやれないことはないさ」


「じゃあ、ちょっと早いが実戦運用といくか?」


「まあ、地の利はこっちにあるし、空からの目もある。それに虎殺隊や餓狼族の精鋭部隊も乗船してくれるんだから負けるほうが難しいよ。アンタらは尻尾を撒いて逃げた奴だけ、仕留めてくれたらいいからさ」


「じゃあ、任せるよ。時期女王には戦果も必要だからな」



色々と検討したところ、海洋国アルジェット自体をどうにかしないと、今後も別の場所で同じようなことが起きる可能性が高い。そこで考えたのが、王座の簒奪だ。海洋国アルジェットは海賊が建国した国だけあって、王位は強い者が座ることになっている。だったらマメラでいいのではという話になったのだ。

因みに今の黒髭と名乗っている王は、先代王を騙し討ちにして王位を簒奪したらしい。


「アタイが女王様ねえ。女でしかもマーマンだよ?大丈夫かね?」


「それを俺の国で言うなよ。俺たちの女王陛下はマーマンで女だからな」


「そうだったね。最近不運続きだったから、運が向いて来たと思うことにするよ」



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