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65 謁見で・・・

虎王国の謁見は、宴会の途中に行われるようだ。ある程度場が盛り上がってから女王が登場するそうだ。こんなんでいいのか?と思ってしまうが、文化の違いということで納得する。


そして、マリア様によく似た虎獣人の女性とマリー王女より少し小さい男の子の虎獣人が登場した。周りの態度からあれが、女王とその御子息ということだろう。すると虎獣人の男の子がマリー王女に駆け寄る。


「マリー!!マリーだよね?しばらく見ない間にキレイになったね。ところで僕のことは覚えている?」


「御冗談を。もちろんですよタイガ王子。しばらく見ない間に勇ましくなりましたね」


「それ程でもないけど・・・ところで、この後少し話さないか?旅の話も聞きたいし・・・」


タイガ王子はマリー王女に気があるのだろう。態度で分かる。なんとも微笑ましい光景だ。女王もマリア様も止めないところを見ると、将来本当にそういう仲になってもおかしくはないのだろう。

しかし、その雰囲気をぶち壊す人物が現れた。我らが偉大なる勇者様だ。


いきなりタイガ王子をモフモフし始めた。


「君はマリーの友達かな?じゃあ、モフモフをしてあげよう。なかなかの手触りだ」


「や、止めろ!!僕は立派な男だ!!もうそんな年齢トシではない!!」


これで、空気は凍り付いた。ミケが震えながら言う。


「ヤバいニャ!!これは問題になるニャ!!成人した男女が異性をモフモフするのはアウトニャ!!ましてやプライドの高い虎獣人だと、殺されても文句は言えないニャ!!」


それって、かなりヤバいことじゃないか!!


しかし、勇者はモフり続ける。


「いい感じだ。これなら15分100ゴールドの価値は十分あるよ」


これで、凍り付いた雰囲気から、殺気に変わった。


「もうダメだニャ!!今のは娼婦に値段を付けるに等しい行為ニャ・・・」


「それって、虎獣人じゃなくてもアウトだな・・・」


俺は諦め、ミケは青ざめ、マリア様やマリー王女はパニックに陥っているようだ。

ここで怒号が響く。虎王国の女王だ。


「貴様!!無礼にも程があるぞ!!我はもう帰る!!同胞を奴隷から解放して送り届けてくれたことは礼を言う。しかし、ここまで辱めを受ける謂れはない!!即刻この国から出ていけ。皆の者、この者の命を取ることは、我が許さん!!これまでの功績に免じて国外追放で許してやろう」


そう言うと、女王はタイガ王子をアトラから奪い取り、会場を後にした。アトラはというと、マリー王女に愚痴をこぼしていた。


「なんだよ!!怒りんぼのおばさんだな!!そう思うだろ?マリー」


流石のマリー王女も顔が引き攣って、何も答えられない。


クソ!!アトラのことを忘れていた。もう後の祭りだけど。


俺は、すぐに勇者パーティーの他のメンバーに言って、アトラを会場から連れ出すように指示し、もう一度だけ、面会の機会を得るために、女王のお付きと思われる虎獣人の男性に第三王子の紹介状を手渡した。


「勇者が大変無礼なことをして申し訳ありません。勇者にはよく言って聞かせますから、どうかご勘弁を。こんなときに失礼かもしれませんが、こちらはボンジョール王国第三王子ルイス殿下からの紹介状です。もうこれで、会うことはないかもしれませんので、渡すだけ渡しておきます」


「必ず陛下にお渡ししよう。苦労を掛けるが頼むぞ」


俺たちは、「僕は料理を食べてないんだ!!死んでほしいのか!!」と喚くアトラを連れて、失意のもと、船に戻った。



★★★


次の日、俺とマリア様だけ、王城に来るようにとの命令が下った。

恐る恐る王城を訪ねると、応接室に案内された。女王とお付きと思われる男性がおり、椅子に座るように指示された。

すると、すぐに女王は大笑いし始めた。


「ワハハハ、馬鹿だとは聞いていたが、ここまでの馬鹿とは思わなんだぞ。その面倒を見ている船長もご苦労なことだ。あんなことがあったが、これまでの功績は感謝しているのだ。馬鹿の所為で台無しになったがな」


女王はそこまで怒ってはいなかった。ただ立場上、あのようにするしかなかったという。


「虎獣人には血気盛んな者も多い、我があのような対応をしなければ、勇者に喧嘩を売るような輩も出て来るだろう。だから、悪いがしばらく勇者とは謁見はできん。昨日の今日で許したとなったら、それも問題だからな」


マリア様も言う。


「お姉様、本当に申し訳ありません。もっと私が気を付けていれば・・・ボンジョール王国では、勇者に殴りかかった者まで居たのに・・・」


「マリアよ。それを言えば我も悪い。ああいう場ではなく、家臣や従者を外させて、謁見させればよかったのだ。それで今後だが、我らが抱える問題を話そう。それが解決できたのなら、許してやったという体裁を取ることができる。それに餓狼族の集落に行くのだろ?」


「はい、餓狼族の集落の出身者が5名程いますので、送り届ける予定です」


「では、我らが抱えている問題を話すとしよう」


女王の説明では、この国でも麻薬が蔓延しているとのことだった。


「犯人の目星はついている。お前たちがこれから行く餓狼族の者たちだ。以前までは相互不干渉だったのだが、最近急にこちらに攻撃的になった。それに訳の分からんことで言いがかりをつけて来てな。「神獣様を奪い去った」とか言っているが、何のことかさっぱり分からん。奴らがこちらに調査に来るようになってから、麻薬被害は増えておる。そして、奴らの里には麻薬被害は起きてない。そのことから考えて、奴等の仕業と言わざるを得ない」


マメラが言う麻薬組織と餓狼族が結託している可能性はある。行くにしても気を付けないとな。話し合いが終わり、挨拶を交わした後、俺は女王のお付きと思われる男性にカーミラ王女が作成したマメラたちの供述内容をまとめた報告書を手渡した。


「紹介状の件を含めて、女王陛下に取りなしてくれてありがとうございました。こちらは竜王国第一王女カーミラ殿下が作成された報告書になります。私たちが言っていることと相違ないと思いますのでご確認ください」


すると、女王が怪訝な顔で言う。


「ところでなぜ、この者にそのような話をするのだ?」


「女王陛下を拝見するに、この方を凄く信頼しているように見受けられました。多分、従者のフリをしておられますが、高級官僚か、はたまた、宰相クラスの方かなと・・・」


「フハハハ!!まさに紹介状のとおりだな。ちと違うが、概ねあっておる。こちらはガード、虎王国の内政を取り仕切る男で、我の愛する旦那様だ」


「こ、これは失礼しました。王配殿下とは存じ上げず・・・」


「よい!!我に媚びへつらうが、従者には横柄にする者も多くいる。それを見抜くために敢えて、初対面の相手には身分を明かさぬようにしておるのだ。我の仕草だけで、それが分かるとは、感服した。勇者には一ミリも期待しておらぬが、其方の活躍は期待しておるぞ」


なぜか、女王陛下に期待されてしまった。


その後船に戻ったのだが、アトラがのんびりとラオフ観光をしていたことが発覚し、俺の他にも多くの乗員が殺意を覚えたのであった。

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