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63 新たな海賊 2

イーストエンドを出発して3日目、偵察に出ていた鳥人族のハープが戻って来た。


「7隻くらいいたよ~多分海賊だね~」


「ありがとう、ハープ。ゆっくり休んでくれ。今度はデイドラ、デイジー。頼めるか?」


「キュー!!」

「承知した」


会いたくはなかったけど、会ってしまったら仕方がない。戦闘は避けられないだろうしな。だったら、安全かつ確実に勝ちたい。

ということで、俺は指示を出す。


「とうとうお出ましだ。まずはブーイ、インプ隊で輸送船2隻のサポートに回ってくれ。ハープとマルカもスピードを上げなくちゃならないことがあるから、その2隻を風魔法でサポートできるようにしろ・・・それから、今回の作戦の肝は・・・」


資料によると海賊は大体3隻から7隻で活動しているようで、基本的に獲物の倍の隻数がないと襲ってこないようだ。まあ、7隻以上の船団なんて艦隊くらいしかないけどな。7隻の内訳は小型艦と中型艦がほとんどで、スピード重視の構成をしている。

この海賊団は素早い動きと連携で自分たちより少ない相手を包囲し、降伏を迫る作戦を取っている。資料によると大人しく降伏したら、命までは取られず、資金や積荷も最低限は残してくれるそうだ。そういえば、そんな海賊は他にもいたなあ。


当然この船であれば、海賊たちに後れを取るようなことはない。しかし、こちらは元奴隷を乗せた輸送艦を2隻守りながらの戦いで、流石に相手を一網打尽にすることはできない。なので、一計を案じたのだ。


「そろそろだ。相手にも気付かれるくらい、盛大にUターンするぞ!!」


俺たちに気付いた敵さんは、全速力で追ってくる。遠目に見るが操船技術もなかなかで、スピードも速い。これは輸送艦本来の船足じゃあ無理だな。


「ハープ、マルカ、輸送艦のアシストをしてやってくれ。本気を出す必要はない。追いつけそうで追いつけない距離をキープしないと駄目だからな」


「はい~多分余裕~」

「了解です。ブーイ師匠、お願いします」


海賊たちはすぐに追いつけると思っていたようだが、意外に追いつけない状況に苛立って、拡声の魔道具で叫んでくる。


「止まれ!!止まったら命だけは助けてやる!!」


「誰がそんなことを信じるんだ!!それにのろまな海賊に捕まるわけないだろ!!」


「馬鹿にしやがってぶっ殺してやる」


海賊たちは更に船足を上げる。なかなかの操船技術だ。俺たちが本気を出せば、余裕で振り切れるのだが、そうはしない。おびき出すのが目的だからだ。俺たちは、いかにも追いつかれそうになるように船足を落とす。


「威勢の良かったのは最初だけか?今ならまだ間に合うぜ。ちゃんと謝るんなら、命は助けてやる」


「クソ!!こっちは怖い人を知ってるんだ!!俺たちに何かあれば怖い人たちが黙っていないぞ!!」


「誰だよ。その怖い人たちってのは?」


「聞いて驚くなよ。竜王国の竜騎士たちだ!!」


「ハハハハ、コイツは傑作だ!!竜騎士は来ないぞ。公海上では竜騎士は活動しないんだぞ!!まあ、竜王国の領海で暴れれば襲ってくるだろうけど!!もうちょっとマシな嘘を吐けよ!!」


ああ、可愛そうに・・・嘘だったらよかったのにな。


空を見ると30騎近い竜騎士が空を飛んでいる。


「アトラ、出番だ!!先頭と最後尾の船を航行不能にしろ。くれぐれも撃沈はするなよ」


「待ちくたびれたよ。久しぶりだから、加減ができないかもしれないな」


もともとお前は加減ができないだろうが!!


まあ、リュドミラが側にいるから大丈夫だけど。


程なくして、勇者砲が2発放たれた。先頭と最後尾の船のマストが吹き飛んだ。海賊たちはパニックになっている。そこに竜騎士の集団が襲う。


もはや戦闘と呼べるものではなかった。


魔道砲なんて、竜騎士のスピードでは役に立たないし、弓を構えた海賊もあっという間に吹き飛ばされている。ほとんどの船が白旗を上げている。

俺たちでも竜騎士とは戦いたくはない。1騎、2騎なら何とかなるだろうけど、それ以上となると対空兵器が必要だ。それでも多くの被害が出るだろうけど。まあ、竜王国と戦争しなければいいんだけどな。幸いクリスタ連邦国は島国なので、どことも国境を接していない。攻めて来たのも帝国ぐらいだしな。


そんなことを考えていると、竜騎士隊を率いていたカーミラ王女から拡声の魔道具で連絡が入る。


「海賊は制圧した。海賊船を島まで搬送するので、搬送要員を手配してくれ!!」


「了解です!!インプとゴブリンを行かせます!!」


こちらは無傷で戦闘を終了した。竜騎士とドラゴンもかすり傷程度だという。予め打ち合わせしていた無人島に着くと海賊たちの尋問が始まる。



★★★


海賊たちのボスは女だった。それもマーマンだ。それに海賊たちは亜人や獣人が多かった。尋問には俺たちも立ち会う。ボスのマーマンの女はカーミラ王女に食って掛かっている。


「竜王国は「中立、不干渉」じゃなかったのかい?公海上は何があっても、たとえ海賊であっても手を出さないって聞いたんだがね」


「ああ、そのことか。この島は我が竜王国の領土だ。そして、貴様らが襲った船には竜王国の国旗が取り付けられている。それにこの者たちは国王陛下自ら友人と認めている存在だ。領土から見える範囲の海上で、竜王国の国旗を掲げた友人の船が襲われていたら、助けないことの方が不思議だと思うのだが・・・」


因みにこの無人島を領有したのは、三日前だけどな。竜王国は西大陸の東の端にあるから、竜王国本土より東の小島に領有権を主張する国などない。流石の帝国もそれで竜王国を怒らせるようなことはしないだろうし。ということは言ったもん勝ちだ。この島を竜王国が領有したところで、どの国も何も言わない。


「・・・・」


女海賊が絶句していると、部下の一人が声を上げる。この男は人間のようだ。


「お頭、だから言ったじゃないですか!!他の奴等と一緒に麻薬ビジネスに参入すればよかったんだ!!土地勘のない海で、海賊しなくても楽に稼げたのに・・・」


「馬鹿かお前!!いくらアタイらが海賊だからって、やっていいことと悪いことがあるだろうが!!獣人を薬で釣って奴隷にし、麻薬工場で働かせるなんて、悪魔の所業さ!!そんな奴らは海賊でもねえよ」


あれ?獣人の奴隷を麻薬工場で働かせるって・・・どっかで聞いた話だよな。


俺はカーミラ王女に断りを入れて、女海賊に質問を始める。


「クリスタ連邦国海軍特任大佐のネルソン・ドレイクだ。わけあって、勇者パーティーの船長をしているんだが、その話、もっと詳しくしてくれないか?

なんたって、俺たちは麻薬工場を潰し、そこで働かされていた奴隷たちを故郷の虎王国に返しに行くんだけどな」


「なんだって!!勇者パーティーの船だったのか!!どうりでか・・・アタイらは誘い込まれたってことだな。まあいい。ということは、この船が「クリスタの海蛇」か・・・アタイの最後の相手がそれなら、本望だ・・・」


「クリスタの海蛇」って・・・またこの船の二つ名を聞いたな。もう深くは聞かないでおこう。どうせ、ヤバい意味だろうから。


「感傷に浸っているところ悪いが、そちらの事情を教えてくれ。何か抜き差しならない事情があったんだろ?それに我らが勇者様は、慈悲深い方だからな。そうだろ?」


「もちろんさ!!僕が解決してあげよう」


「いくら勇者でも解決できないと思うが、話すだけは話そう」


この女海賊の話は衝撃の内容だった。

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