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56 勇者とドラゴン 5

水竜と風竜のハーフドラゴンの訓練は、洋上で行うことになった。クリスタリブレ号で沖に出る。水中の騎乗者はザドラだが、空中の騎乗者をどうするかという話になった。

ニコラスが言う。


「ポチが言うには、デイジーがいいんじゃないかって。「普通に乗るなら、僕やマルカでもいいけど、戦闘のことを考えるとデイジーだと思う」って言っています」


指導に来てくれているカーミラ王女と指導員も言う。


「竜騎士には筋力とバランス能力に加えて、単純な戦闘力も必要だ。デイジー殿でいいだろう」


「そうですね。デイジー殿に一番懐いていたと思います」


ということで、デイジーが空中の騎乗者となることになった。訓練はまず、ザドラがドラゴンに乗って、海中に潜り、泳ぎの訓練をする。なぜか、ポチも一緒に泳いでいるけど。

同じくして、クリスタリブレ号の甲板では、デイジーにカーミラ王女と指導員が騎乗姿勢などをレクチャーする。

時間が来たら交代し、ザドラから指導員が水中の様子を聞き取り、空中ではカーミラ王女もドラゴンに騎乗して一緒に飛んでいた。ハープも楽しそうに飛んでいる。


「二人とも硬いよ~力を抜いて~リラックス~」


「ハープ殿の言うとおりだ。デイジー殿、もっとドラゴンを信頼し、体を預けろ!!」


「承知した!!」


空中の訓練も上手くいっているようだ。この調子なら、大丈夫だ。

ところで、何でドラゴンに名前を付けないのだろうか?カーミラ王女の竜はサギュラという立派な名前があるのに。


「カーミラ王女、どうして、あのドラゴンに名前を付けないのですか?」


「少し長くなるが、理由があるのだ・・・・」


ごく一部の例外を除いて、ドラゴンが生涯で仕える竜騎士は一人だそうだ。その竜騎士が死ねば、野生に返るという。だからこそ、名付けが重要で、生涯唯一人となる竜騎士が名付けるのが慣例のようだ。でも、今回の場合二人いるしな・・・


「今回は例外中の例外だ。竜騎士を水中と空中で分けるなどと、誰が考え付く?何百年と伝統を守って来た竜王国の竜騎士では、絶対に考え付かなかったな」


「だったら、デイジーとザドラに決めてもらっていいんですよね?」


「もちろんだ。本当は我の騎竜としたかったのだが、これも奴の幸せのためだ」


結局、竜の名前は「デイドラ」となった。単純にデイジーとザドラをくっ付けただけだけど、デイドラも嬉しそうだ。


「デイドラ、よかったな・・・大切にしてもらえよ・・・」


嬉しい反面、カーミラ王女は少し寂しそうだ。

この様子に気付いたニコラスが言う。傍らにはデイドラとポチがいる。


「ポチが言うには、デイドラはカーミラ王女には凄く感謝しているそうです。それに『ごめんなさい』とも言っています。自分を拾ってくれて本当に有難かったけど、上手く飛べない自分が恥ずかしくて、竜騎士を乗せなかったそうです。

えっ!!何?ポチ、言っていいの?デイドラが駄目って言っているように見えるけど・・・・」


デイドラはポチに激しく抗議しているように見えるが、ポチに上に乗られて、押さえ付けられている。何からツッコミを入れていいか分からないが、まずニコラスってなぜこんなにポチの言っていることが理解できるんだ?

それにドラゴンを押さえ付けるポチって一体・・・


まあ、問題は先送りだ。スルーしよう。


「じゃあ言うよ。デイドラも覚悟したら、態度でバレてるって。

話を戻しますね。「デイドラはカーミラ王女が乗っているサギュラさんのことが好きで、カッコ悪いところは見せたくなくて、それで意地を張って、竜騎士を乗せなかったそうです。練習しないから上手く飛べないのは当たり前」とも言っています」


サギュラとデイドラを見ると、二匹とも恥ずかしそうだ。


「そうか・・・気付いてやれなくてすまなかった。ところでポチ殿はドラゴンと話ができるようだが・・・ニコラス殿、サギュラに我の問題点があるか聞いてくれまいか?」


ポチがサギュラに何か話している。


「えっとですね。「カーミラ王女がデイドラのことで傷付いているのが辛かった。一度、デイドラを叱ったら、もっと意地になった。だから、ごめんなさい」って言っています。「イジけている男は嫌いよ。キチンと飛べるようになったら出直してきなさい」とも言ってます」


「ハハハハ、サギュラよ。我もすまなかった。サギュラもデイドラを憎からず思っておるのだな?」


落ち込んでいるデイドラの傍らで、サギュラはカーミラ王女に抗議の声を上げた。


「ありがとう、ニコラス殿、ポチ殿。それで相談なのだが、体調の優れないドラゴンやドラゴンと関係が拗れた竜騎士がいるので、少し相談に乗ってもらえないか?」



それから、訓練期間中はひっきりなしに竜騎士がやって来た。クリスタリブレ号は竜騎士が頻繁に着陸する船としてドラゴニアでも人気になり、またまたミケがちゃっかり見物料を取っていた。

デミドラとザドラ、デイジー、ハープが訓練をしている中、ポチとニコラスが忙しいそうにドラゴンと竜騎士たちの相談を聞いている。


「えっと・・・「国王陛下はお酒を控えろ」って言ってますね。「健康も心配だし、体が重くなるとスピードが落ちるよ」とも言っています」


「そ、そうか・・・聞かなかったことにしよう」


「父上!!娘の我から見ても飲み過ぎです。メイド長に言って、厳しく管理させていただきます」


「クソ!!来るんじゃなかった・・・」


ニコラスはしみじみと言う。


「陛下もドラゴンに愛されているんですよ。ちゃんと聞いてあげないと。人間とドラゴン、ただでさえ、一緒に過ごせる時間は短いですから・・・」


それは、自分とポチの関係をなぞらえて言っているのかもしれない。



10日後、訓練が終了した。


「もう大丈夫だ。後は実戦の中で、感覚を掴んでほしい。サギュラも少しは見直したと言っているしな。

それと話は変わるが、帝国が我らのドラゴンを欲したのは、ドラゴンの手懐け方を知りたかったからだろう。隠すことはないので言っておくが、最も大事なのは「信頼」だ。竜騎士のドラゴンを引退したドラゴンは多くいる。そのドラゴンが野生に返り、新たな竜騎士のドラゴンを紹介してくれるのだ。何百年と続いた絆が「信頼」の証だ。人の道を踏み外した輩ができることではない」


そして、俺たちは竜王国を後にする、竜王国の国旗を一番高いところに掲げて。多くの市民や竜騎士に見送られての出発だった。国王陛下直々に定期的に来てほしいと要望があったので、できる限り立ち寄ると約束している。


沖に出てしばらくすると、我らが偉大なる勇者様が参られた。デイドラに絡んでいる。


「これでドラゴンも僕の物だ。おい!!ドラゴン、ちょっとは僕に気を遣え。式典で僕を乗せなかったのはどうしてだ!!恥を掻いたぞ。それにお前に何回も殺されたのを忘れてないからな!!僕の言うことが聞けないようなら、ご飯を抜きにしてやる・・・・」


言いかけたところで、勇者様はデイドラの尻尾攻撃を喰らい、海に転落なされた。

勇者様は、生きているようで、大声で喚いている。


「おい!!早く助けろ!!早くしないと死ぬぞ!!」


「ボートを出してやれ!!なるべくゆっくり助けろよ。できれば死ぬ間際で助けてやれ」



気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!


次回から新展開です。

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