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48 七色の勇者砲

「死んでやる!!死んでやる!!死んでやる!!勇者砲を貸してくれなきゃ死んでやる!!」


我らが偉大なる勇者様がご乱心なされた!!


どうして、こうなったかというと帝国から「遊牧民が反乱を起こしたから討伐に向かって欲しい」との依頼があったからだ。勇者アトラは訓練は受けて、そこそこの戦闘力だが、歴戦の兵士や冒険者には及ばない。今の状態で行っても死にに行くようなものだ。自爆攻撃をすれば別だが、遊牧民だから近付くことさえできずに屍にされるだろう。


「それに遊牧民が一方的に悪いなんて、帝国が言ってるだけだろうが。その勇者砲も10発しか撃てないし、お前が行っても意味がない。壊れでもしたら、お前はまた、タダの自爆野郎に戻るんだぞ」


「大切に使うからさ、だからお願いだってば・・・」


アトラがそう言うのにも理由がある。

最近、勇者としての活動をしていないのだ。一応、商船の護衛や積荷の搬送はやっているが、それはアトラがイメージしている勇者としての活動とは違うようだ。

だからといって、無駄に戦争の火種を作ることをさせるのは違う気がする。


「まあまあ、でも勇者砲が10発しか撃てないのは問題かもッス。だったら勇者砲を強化するのもいいかもしれないッス!!」


ベイラが俺とアトラの喧嘩に入って来た。


「ベイラ、何か策があるのか?」


「実は師匠と色々検討したら、勇者砲を強化するには、やっぱりドワーフの里に行くしかないって結論になったッス。そこに行けば、勇者砲強化のヒントが得られるかもしれないッス」


「だったらそうしよう。勇者砲の強化は世界平和につながるからね」


「そうは言っても帝国の許可は下りるのか?かなり内陸部だろ?」


「まあ、レーン川を上流に登って行けば大丈夫ッス。スクリューを回せばそんなに時間は掛からないッス」


俺が悩んでいるとセガスが声を掛けてきた。


「こんなこともあろうかと申請書類を用意しておりました。10日の行程で予定を組んでいますので、ご確認ください」


こんなこともあろうかとって・・・・やっぱり危険人物かもしれない。


「まあ、駄目元で申請書類を出してみるか」



★★★


申請はあっさりと許可された。

帝国としても勇者砲は強化したいようで、開発費も支給された。条件として技術者を同行させることになった。その技術者というのが、マルカと魔道アカデミーの同期の金髪青目の少女ポーラだった。


「ポーラです。お久しぶりです。エルドラ島の作戦の際はお世話になりました。それに貴重な経験もさせていただきました。航行中はスクリューの研究もさせていただきます」


ポーラはスクリューだけでなく、魔道砲の知識もあるようで、今回の技術者に打って付けなのだという。


「表向きはそうですね。本当は希望者がいなかったというのが理由です。誰もいつ爆発するか分からない人と一緒に居たくはないでしょうし・・・・」


「大丈夫だよ、ポーラさん。最近爆発してないからね。それに爆発するまで10秒くらいタイムラグがあるから、その間に海に捨てればいいからさ」


「なんだ!!人を時限爆弾みたいに言うな!!だったら望み通り死んでやるよ」


キレたアトラは俺に抱き着いて来た。咄嗟のことで不覚にもアトラに組み付かれてしまった。もがいても放せない。


「10・9・8・7・・・死ぬぞ!!死ぬぞ!!死ぬぞ!!死んでやるぞ」


「アトラ!!よせ。俺が悪かった!!今度一緒に演劇でも見て、美味しい物でも食べよう。死ぬのはそれからにしないか?」


「5・4・3・・・」


「頼む!!美しく気高きアトラ様、どうかご慈悲を!!もう二度と逆らいません!!」


「まあ、分ればいいんだけどね。その言葉、ちゃんと心に刻むように。じゃないと死ぬよ」


騒ぎを聞きつけた水夫が寄って来る。


「どうも三角関係らしい。あの新しく乗って来た娘が浮気相手だろうな」

「俺はリュドミラ姐さんとザドラ姐さんとも関係があるって聞いたけど・・・」

「船長って女にだらしないなあ。少しは領主様を見習ってほしいよ」


俺の評価はかなり下がってしまった。勇者の自爆攻撃で俺の船長としての信用は吹っ飛ばされた。



★★★


2日後、グレイティムール大帝国ドルドナ自治領の領都ドンバスに寄港する。デイジーの故郷でもある。丁度、ドワーフの故郷に向かう途中にあるので、ついでに滞在することになった。

ここでも盛大な歓迎を受ける。


「王女様!!勇者様!!」

「デイジー姫!!こっち向いてください!!」

「姫!!お元気そうで何よりです!!」


領民は大歓迎だが、歓迎を受けているデイジーは笑顔を見せてはいるが、少し表情が優れない。


「おかしいなあ。勇者の僕よりもデイジーのほうが人気があるみたいだ。もしかしたら彼らはデイジーに買収されているのかもしれない」


「そんなわけないだろ!!ここはデイジーの故郷で、デイジーは元王女なんだからな」


デイジーがつぶやく。


「元王女か・・・元王女・・・元ドルドナ王国・・・」


ちょっと、失言だったかもしれんな。デイジーは気丈に振舞ってはいるが、ドルドナ王国が滅亡したことをショックに思っているのが分かる。どう声を掛けていいかは分からないが。


すぐに領主館である元王城に案内された。

領主である元国王でデイジーの父親、立派な髭をたくわえた赤髪の大男が迎えてくれた。


「娘が世話になっている。父で領主のドーガンだ。ゆっくりしていってくれ」


食事会が始まり、歓談が始まる。料理は各国の特産品が多く並んでいた。


「我が国・・・領は、交易の中心地として栄えている。立地的にここはレーン川の支流が集まって、1本になる地点だからな。当然そうなる。それで多くの商品がここに集まってくるのだ」


「ところで、何で帝国の属国になっているんだい?そんなに栄えていたのならね。無駄遣いでもしたのかい?」


おい!!空気を読めよ。馬鹿勇者!!

それに滅ぼしたのは、帝国だろ?お前はそこの公爵令嬢なんだぞ。


「勇者殿は手厳しい。まあ、デイジーも語りたくないだろうから語ってやる。勇者殿の言うとおり、この国は裕福だった。当時、我は王子の一人だったのだが、国政に全く興味がなく、槍ばかり振り回しておったよ。一応形だけは第一騎士団の隊長だったがな。

ドルドナ王国の基本戦略はバランス外交だった。どちらか1国に傾倒することがないようにな。帝国とボンジョール王国との緩衝地帯ということもあり、両方から上手く利益を引き出すような、器用なことをしておった。父の代までは・・・」


普段は気丈に振舞っているデイジーが目に涙を浮かべている。

辛い話になるんだろうな・・・


「ワクワクしてきた!!早く続きを聞かせてよ」


そんな楽しい話になるわけがないだろうが!!


更に話は続いた。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

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