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35 里帰り

レーガン大尉と捜査官として残してきたコボルト、ゴブリン、インプの水夫に見送られながらベルダンを出港した。陸が見えなくなったところで、水夫たちに指示をする。


「クリスタ連邦国旗を一番上に掲げろ!!」


「「了解!!」」


インプの水夫が旗を付け替えると歓声が上がる。クリスタ連邦国が帝国やボンジョール王国を従えているようで、ちょっと優越感に浸る。


我らが偉大なる勇者様はというと、ベイラに指導を受けながらスクリューを回していた。


「行け!!ミラクルオブアトラ号!!全速力だ!!」


「止めるッス!!7割いや、半分でいいッス。壊れたらどうするんスか?」


この船はクリスタリブレ号だ。変な名前を付けるな!!


それにしても、かなり高速で進む。俺と勇者が協力して、船を動かせば、俺の操船技術と勇者のスピードで・・・変な想像をしてしまった。あの馬鹿と一緒に船を動かすなんて、考えたくもない。



★★★


帝都ベルダンからクリスタ連邦国王都エジンバラまでは、通常航行で15日前後の期間を要する。しかし、勇者の活躍?により10日を切って到着することになる。

寄港しようと船を進めていたところ、臨検をさせろという沿岸警備隊からの命令が来た。程なくして、リザードマンの男を中心にインプやゴブリン、コボルトの水夫たちが乗り込んできた。


「やっぱりネルソンの船だったか・・・なんかいっぱい国旗を付けているから、不審に思ったんだ。アイツらが間違いなくクリスタリブレ号だって言ったんだが、だったら、みんなでネルソンの顔を拝もうぜっていう話になってな。それで、ちょっと止めてみたってわけだ」


「おい!!兄貴。真面目に仕事しろよ。兄貴は遊撃艦隊じゃなくて正規軍なんだから、給料分は働けよ」


「久しぶりに会う兄にその態度はないだろが」


このリザードマンは、エジンバラ沿岸警備隊隊長海軍少将のリザド、ザドラの兄だ。ついでに一緒に乗り込んで来た水夫はいずれもドレイク領の出身で、この船で鍛えたと言っても過言ではない。それぞれで旧交を温め合っている。


「相変わらずだなリザドは・・・そうだ、戻って来たのも麻薬捜査の関係なんだ。こっちの方はどうだ?」


「持ち込もうとする馬鹿は増えたな。しかも無理をしてな。他に行けって思うんだが。それにこの前なんか傑作だったぜ。コボルトの鼻対策で強烈な異臭を放つ商船が来やがった。コボルトの鼻を防いだと思ってその船長はドヤ顔していたが、コブリンの緻密さを分かっていなかったようだ。それにそんな匂いをさせていたら、「密輸してます」って言っているようなもんだしな」


ゴブリンは、三種族の中で際立った特技が無いように見えるが、実は三種族のまとめ役的存在で、細かい作業も苦にしない。時間を掛けていいのなら、隅から隅まで調べてくれるのだ。


「みんな元気でやっているみたいでよかったよ。これはお土産だ。帝国産の麦酒だが、そこそこイケる。女王陛下に献上する火酒に比べるまでもないが、俺は結構気に入っている。みんなで飲んでくれ」


俺は3樽程、麦酒を手渡した。水夫たちは大喜びしている。


「ありがとよ。麻薬なんてやらずに酒を飲めばいいのにって個人的には思うんだがな。ここは、旨い酒が安く手に入るしな」


というのも、我らが女王陛下は麻薬や禁止薬物は大っ嫌いだが、大の酒好きとして知られている。本人の趣味か麻薬撲滅の施策なのかは分からないが、この国では酒税がない。慣例として、王都の醸造所なんかは、その年にできた最高の1本を献上する。税金を払うことに比べたら安上がりだし、女王陛下が旨いと言えば、宣伝効果で売れるから、皆こぞって献上に来る。輸入業者も珍しい酒が入ると献上しに行く。

各国の大使たちの間では、酒を献上しておけば間違いないと言われているそうだ。

そんな俺も火酒を献上するんだけどな。


★★★


リザドと別れた後、王城からすぐに謁見できると言われたので準備して、王城に向かった。


「キチンとしてくれよ。女王様の前では礼儀正しく・・・・」


「馬鹿にするな!!これでも公爵令嬢だから礼儀作法は完璧なんだ。どこかの誰かさんみたいに女王陛下に怒鳴ったりしないんだからね」


馬鹿勇者にカウンターをもらった。

最近この勇者も攻撃力が上がっている。俺の弱みを探そうと情報収集に余念がない。こちらも何か対策をしなければ・・・


謁見の間に着くとすぐに女王が現れた。


「初めましてじゃな勇者殿。わらわは、エリザベート・クリスタじゃ。楽にしてよいぞ」


「初めまして勇者のアトラ・ルースです。親書だよ。女王陛下に渡せと言われてね。詳しい内容は分からないけど、みんなで頑張ろうみたいな感じかな?そんなところです」


勇者の言葉遣いがおかしいことも、親書の内容も事前に伝えているので、特に問題はないようだった。女王陛下は逆に微笑ましく勇者を見ている。


わらわも麻薬は嫌いじゃから協力しよう。そしてネルソン、いい火酒を献上してくれたこと、礼を言う。腹の立つ国の酒じゃが、酒に罪はないからな。先程少し飲んだが、なかなか良かったぞ」


おい!!もう飲んだのかよ!!


とは言わなかった。


「勇者殿、少しわらわに冒険の話をしてくれんか?興味があるのじゃ」


「分かりました。じゃあ、クラーケンをやっつけた話をするね・・・・」


おい!!それはお前が倒してないだろうが!!


「まずね、スクリューを僕の勇者ブーストでぶん回して、触手攻撃を躱し、そして勇者砲を撃ち込む。ドカーン!!それで木っ端微塵さ!!そういったお話でした」


ツッコミどころしかない。スクリューを回せるようになったのも最近だし、木っ端微塵って、クラーケンの剥製は今も帝国で展示されているだろうが!!


もっとマシな嘘を吐け、というか海賊退治や麻薬を見付けた話のほうがまだよかっただろうに。


「報告にもあったが、勇者砲とは凄いんじゃな?」


「そうです。でも1日に10発くらいしか撃てないんだ。帝国で研究しているみたいだから、そのうちもっと撃てるようになると思うよ。そうしたら魔王なんてイチコロさ。と思います」


そんな話をしているところに特殊部隊の長官が現れた。名前は知らないし名乗らない、どこの誰かも分からない謎の男だ。その男が女王に耳打ちをする。


「そうじゃ、わらわもその勇者砲というのを見てみたい。的はこちらで用意してやるからのう」


女王は笑みを浮かべながら、意味深に言った。


また良からぬことを企んでいる。

ただ、勇者はドヤ顔で言う。


「お任せください。凄いのを撃ち込んであげるよ。凄くびっくりするよ。と思います」


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