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【完結】勇者パーティーの船長~功績を上げて軍隊で成り上がったら、勇者パーティーの船長になりましたが、メンヘラ勇者に振り回される地獄の日々が始まってしまいました  作者: 楊楊
第二章 ボンジョール王国編

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14 ボンジョール王国へ

「助けて!!死にたくなっちゃった!!どうしよう」


「勇者様・・・そこを何とか・・・そうだ、肩でもお揉みしましょうか?」


「そうだね。でも少しでも痛かったら、死んでやるけどね」


あれから1時間に1回は、馬鹿勇者から「死ぬぞ」攻撃を受けている。すぐに降伏したが、許されない。


降伏した捕虜を嬲るなんて国際法違反だぞ!!


と言えないところが辛い。


以前、勇者の「死ぬぞ」対策の為にセガスから帝国法について学んだことがある。


「適用される法令は殺人未遂罪となります。これは実際に裁判で争われました。というのもアトラ様は数回暗殺被害に遭っているのです」


そんな・・・スリに遭った感覚で言われても・・・・


「そこで争点となったのは、死に戻りをどう解釈するか?ということでした。詳しい議論の流れは省きますが、「死んだけど死んでない」というあやふやな解釈の元、殺人未遂罪が適用されることになりました。殺人未遂罪の最高刑も死刑ですから、犯人からすれば一緒なのですがね」


セバスの解説は続く。


「前置きはこのくらいにして、問題は帝国法特有の証言の信ぴょう性ということになります。証言が1対1の場合、信用度の問題になります。信用度の高い者の証言が採用されるのです。まあ、平たく言えば、身分の高い者が勝つということです。ネルソン様とアトラ様が法廷で争った場合、アトラ様は公爵令嬢で、しかも勇者、ネルソン様はパーティーでの役職は船長、しかも元敵国の軍人となれば、比べるまでもありません」


「だったら、セガス。お前が証言してくれよ」


「はい、私の目の前でそういう事態がありましたら、真実を証言しましょう。ただし、個室でひっそりと亡くなられた場合、私の証言に意味が亡くなります。結局、アトラ様とネルソン様の1対1の状況になるでしょうから・・・それに大勢の前でそういったことをしても、自殺教唆罪を適用されれば為す術もありません。『夜中に無理やりいかがわしいことをされて、自殺するように強要された』とか言われたら・・・そうしたら婦女暴行の容疑も・・・」


そこで考えたのが、今回の作戦だ。常に大臣や他の文官連中と一緒に居れば、俺が殺すことが不可能だと証言してくれると思ったのだが・・・

全てが破綻してしまった。


「船長はさ、クレイジーモンキー知恵って知ってる?帝国のことわざでね、一見気が利いていて利口そうに見えて、実は浅はかなことを言うんだ。誰の事とは言わないけどね」


「いやあ、勇者様は博識でいらっしゃる」


「今日はやけに素直だね。また何か企んでいるのかな?浅知恵船長さん」


もう限界だ。

それに今回の行程にも、文句を言いたい。普通の商船で10日、俺達の通常航行で7日の行程でなぜ15日も掛けるんだ?それに2回も補給で寄港するし!!


煽って戦争になったときのために、軍艦に定員の1.5倍兵士達を乗船させているからそんなことになるんだよ。

馬鹿勇者の相手を15日って・・・・しかも天候によったらもっと延びるかもしれない。


駄目元で言ってみるか。


「勇者様、こんなノロノロ運転じゃあ、ストレスが溜まりませんか?適当に理由をつけてぶっちぎってやりましょうよ」


「不思議だね。船長と初めて意見が合った気がする」


「早く到着したら、使節団が来るまでのんびりできますしね」


「よし、そうしてくれ」


航海士と勇者と共に細かい調整を行った後、勇者が拡声の魔道具を手に取る。


「使節団の諸君!!我々勇者パーティーはこれより別行動を取る。それでは王都バリスで、また会おう!!」


「ちょっとお待ちを!!勇者様!!」


大臣も魔道具で叫ぶがもう遅い。俺たちの本気のスピードにのろまな亀がついて来られるはずがない。



★★★


ボンジョール王国の王都バリス近海には3日で到着した。流石に疲れた。今回も夜通しぶっ飛ばした。俺もハープもマルカも能力は上昇しているようで、以前よりは疲労度は少ない。


勇者はというと機嫌が良かった。「死ぬぞ」攻撃も1日に1回あるか、ないかだった。

勇者の機嫌の良さは、多大な犠牲の上に成り立っているのだ。それは意外にも勇者はモフモフ好きだったのだ。ニコラスに勧められ、コボルトをモフると、思いのほか嵌ってしまったらしい。

コボルト達と共にもう一人犠牲者が生まれる。


「ミケ君、こっちに来なさい。勇者様が可愛がってあげるからね」


「勇者様・・・尻尾はもっと優しく触ってほしいニャ・・・」


「こうかい?どうだ、気持ちいだろう?」


「勇者様は上手だニャ」


ミケも満更でもないようで、良かった。でもきっちり、15分100ゴールドの料金は取っているようだったけど。

羨ましくなったニコラスも、ミケをモフろうとするが、ビンタされた。


「男には触らせないニャ!!そんな安い女じゃないニャ!!」


ニコラスはショックを受けているが、仕方ない、放っておこう。


そんな微笑ましい?様子を見ながら、俺は水夫達に指示を出す。


「帝国旗と聖神教会の旗を降ろせ!!代わりにミケ猫商会の旗を掲げろ!!」


これには勇者がキレる。


「なんで旗を降ろすんだ!!僕が勇者って分からないだろ?」


「馬鹿!!分かったらお忍びにならないだろうが!!」


「そうか・・・そうだね。でも今、馬鹿って言ったよね?」


「言いましたっけ?」


「まあいいや、それでこの後はどうするんだい?」



★★★


王都バリスに寄港する。バリスは花の都と呼ばれるくらい美しく、芸術家が集い、更には美食の町としても知られている。

ボンジョール王国自体は農業国で、牧畜も盛んだ。それに豊富に資源も取れる。だから国民性として本質的には、のんびりしているのだが、そうも言っていられない。お隣さんは大の侵略国家だからだ。

国民はその悲劇を嘆いているし、常に領土問題で小競り合いがある帝国に対しては、潜在的に悪感情があるようだ。


そんなことは多分知らないであろう勇者は上機嫌だ。


「どこに連れてってくれるのかな?普通の観光じゃあ、満足しないからね」


「まずは冒険者ギルドだ」


「なんでだよ。美味しい物とか食べないの?船長は僕に死んでほしいのかな?」


「旨い物を食わなくても死なん。それに天国のようなバカンスを味わわせてやるよ」


不満顔の勇者は、渋々冒険者ギルドについて来るのだった。

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