123 その後・・・
俺の意識が戻ったのが3日後だった。事態は概ね収束していた。
まず教会関係者についてだが、アトラやカーミラの活躍により捕縛されたようだ。リュドミラから報告を受ける。報告書によると教会関係者がこのような暴挙に及んだ理由が記載されていた。
そもそもの話、教会が発足したのは魔族や亜人たちを追い出すためだったようだ。ゾロタス聖神国の北側は元々は魔族の居住地区があり、現在の聖都があるラトゥスよりも繁栄していた。それに目を付けたゾロタス聖神国の前身となる国が侵略を開始した。その口実として、教会が発足したわけだ。魔族側はあっさりとこの土地を放棄して北大陸に引き籠ってしまったのだが、誤算だったのはその土地が豊かなのではなく、魔族の優れた技術と努力こそが、繁栄の要因だった。
魔族を追い出してしまい、開発は頓挫してしまった。この言い訳をするのに、「魔族は邪悪な種族」という教えを広め、邪悪な魔族を滅ぼすための正義の国という建前でゾロタス聖神国が建国されたという。
言うなれば、盗賊が勝手に神を使って、略奪の正当性を喧伝しただけで、今日まで教会の極秘事項だったという。
そして、今回の暴挙についてだが、度重なる失態で地に落ちた威信を回復するために、クリーチャーを使って自作自演の作戦を考え付いたそうだ。クリーチャーを無効化する魔道具も開発しており、それを持たせた聖女、又は勇者を新たに作ろうとしていたようだ。しかし、サハール王国の予期せぬ事件で、その作戦が失敗に終わり、ヤケになった挙句に今回のような暴挙に出たそうだ。
「しかし、本当に教会の奴等は腐ってやがる。成り立ちからして、大嘘じゃねえか」
リュドミラが答える。
「その通りですね。ただ、上層部としては、この事実を世界に公表するかどうかは意見が分かれているようです。教会のすべてが悪というのは社会への影響が大きすぎるというのがその理由です」
「それはそうだ。パウロ辺りに何とかしてもらうしかないな」
そんな話をしているところにアトラがやって来た。
「ネルソン!!意識が戻ったんだね!!君にも僕の活躍を見せたかったよ」
アトラの自慢話が延々と続いた。
★★★
それから3年の月日が経過した。
ここで報告がある。俺は結婚した。
相手はアトラとデイジーとカーミラだ。この件で俺のことを最低のハーレム野郎と呼ぶのは勘弁してもらいたい。これには深い事情があるんだ。まずはアトラだが、俺以外に誰が結婚できるというのだろうか?二言目には「死んでやる」というバカ女の貰い手なんて、世界中探してもいないだろう。厄介ごとを押し付けるかのように各国の首脳陣がこぞって外堀を埋めてきた。プロポーズはしたが、アトラが納得するまで、7回やり直しをさせられた。思い出したくはない。
デイジーだが、勇者パーティーメンバーとして、常に一緒に居なければならない。もし離れて暮らしてしまうと死に戻りを悪用される危険性があるからな。それとデイジーはああ見えて、ドルドナ公国の公女様だ。未婚のままというのは、外聞が悪い。そうなると俺か同じパーティーメンバーのニコラスになるが、ニコラスは何を思ったか、ミケと結婚してしまった。ニコラスのモフモフ愛が通じたようだ。なので、本当に仕方なく、デイジーとも結婚することになった。
ついでに言うとマルカはインプ隊長のブーイと結婚した。どうも飛行魔法を習う過程でお互い惹かれ合ったようだ。
そしてカーミラだが、サギュラとデイドラ、そして娘のミニドラの件があったからだ。国に戻ってしまったら、ドラゴン一家が離れ離れになってしまう。そんな理由から俺くらいしか結婚相手がいないことになり、これも仕方なく結婚することになった。
恥ずかしいが、三人とも愛していることだけは伝えておこう。
普段の活動だが、特に大きな違いはない。スパイシアでの学生の指導や魔物退治、物資の搬送や農地の開拓がメインだ。ここしばらくは旧ゾロタス聖神国の復興に伴う物資の輸送任務が多くあったが、最近は落ち着いて来たので、年一回のイベントに合わせて訪れる程度だ。
そんなこんなで、俺は死ぬまで、勇者パーティーの船長を辞めることはできないだろう。
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次回が最終回となります。