表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/124

121 出陣

 5日後、作戦も決定し、出陣することになった。

 出陣に合わせて、ドルドナ公国の騎鳥隊とサハール王国の重装備騎兵隊はこちらに合流してもらった。部隊輸送はレオニール将軍にお願いすることになった。作戦といっても当初のものと大きくは変わらない。大元の大聖堂に接近し、魔道砲でぶっ壊すだけだが、少しやり方を変えた。デイドラに乗って状況を確認したが、相手もそれくらいは予想しているので、ロンジス川の防御は固めている。足の踏み場も無いほど、クリーチャーが配備されている。


 出陣前、お袋に声を掛けられた。


「しかし、我が息子ながら無茶なことを考えつくもんだ・・・・一体誰に似たんだか・・・」


「これでも親父とお袋の血を引いているからな。自分たちがやったことをもう一度考えてみろよ。親父たちよりはマシだろ?」


「違いない。今回は戦力が充実しているからな。だが、絶対に生き残りなよ」


「お互いにな」


 今生の別れではないし、この程度でいいだろう。もし、これが最後の親子の会話になったら悔いが残るけど、お互い生きて戻ってくればいいだけだからな。


 出陣に際して、今回の作戦は今までにないくらい危険が伴うことを乗員に説明し、下船したいものは申し出るように言ったが、誰一人として下船する者はいなかった。本当に馬鹿ばかりだ。


 ★★★


 2日後、俺たちは戦闘予定の海域までやって来た。やって来たところで、すぐに俺たちがやることはない。輸送船に紛れて戦況を見守るだけだ。それまでは、攻め込むというよりは戦線を維持することに主眼をおいていた連合軍だったが、この日は違った。無理をして陸軍から引き抜いてきた帝国騎兵隊がレオニール将軍率いる海兵隊の揚陸艦で一気に上陸し、大聖堂を目指すように進軍する。

 まあ、これは囮だが、命掛けの任務だ。


 続いて、帝国騎兵隊の突入で少し守りが手薄になったロンジス川を帝国海軍の先導で魔王国の海軍がその後を続いて登って行く。


 アトラが空気を読めずに声を掛けて来る。


「凄い勢いだね。このまま彼らだけで決着がついてしまうと僕の出番がなくなってしまう。ネルソン、僕が活躍できないようなら、進軍のスピードを遅らせるように指揮してくれ」


「何を言っているんだ!!これは遊びじゃないんだぞ!!それに俺らが出ずに勝負がつくならそれでいいじゃないか。俺らが出なければならない時に備えてしっかりと準備をしておけ」


「分かったよ。早く出番がこないかなあ・・・」


 今更だが、この馬鹿勇者だけは本当に緊張感というものがない。


 戦況はというと、作戦通り魔王海軍の旗艦であるシャイターンシャイニング号が無事に砲撃予定地点にたどり着いた。早速、魔王砲で砲撃を開始する。魔王砲も強化されていて、かなり強力だ。大聖堂の屋根が吹き飛んだ。一瞬、このまま勝負が着くと思っていたが、やはり考えが甘かった。

 大聖堂に結界が張られ、魔王砲を防いでいる。


「予想とおりというか、諜報のとおりというか・・・、マルカ!!解析はできそうか?」


「あの結界を壊すのは時間が掛かりそうですね。ただ、あの結界は全方位型ではなく、一方向にしか作用しない構造ですね。なので、作戦のとおりで大丈夫だと思います」


「分かった!!全乗組員に告ぐ!!これより作戦開始とする。持ち場につけ!!」


「「オオー!!」」


 気合だけは十分だ。すぐに通信の魔道具でザドラの部隊と上空に待機していたかカーミラ率いる竜騎士隊に指示を飛ばす。しばらくして、カーミラがクリスタリブレ号に着陸した。


「船長殿、あれをやるのだな・・・しかし、こんなことは長い竜騎士の歴史でも初めてのことだろうな。訓練を積んだとはいえ、不安は残るが・・・」


「いつになく弱気だな?お前らなら大丈夫だ。生きて帰ったら、何でもいうことを聞いてやるよ」


「フン、その言葉を忘れるなよ。必ず生きて帰ってこい」


 そんな話をしていると副官のリュドミラから報告が来る。


「準備が整いました」


「よし、作戦開始!!」


 ザドラ隊の援護のもと、レオニール将軍から借り受けた揚陸艦2隻が手薄となっている箇所に上陸する。揚陸艦には無理やり引き抜いて来たドルドナ公国の騎鳥隊とサハール王国の重装騎兵隊が乗船している。上陸すれば、その機動力を生かして、多くの作戦行動を取ることができる。今回は、まあ・・・囮だ。どちらも国一番の主力部隊なのだから、豪華なものだ。


 騎鳥隊と重装騎兵隊が敵を攪乱させる。クリーチャーに意思はないが、操っている者はこれには驚愕していることだろう。これまでの戦闘データで、クリーチャーに対して大まかな指示はできるが、細かい作戦行動はできないことが分かっている。それにこれはあくまで仮説だが、クリーチャーは敵味方の識別が難しいのだろう。偶に同士討ちをしたりしているし、クリーチャーと行動を共にするゾロタス聖神国軍の兵士がいないことを考えると、多分そうなのだろう。


 マルカが言う。


「どこそこへ行って、手当たり次第に殺せ、くらいのことしか命令できないのでしょうね」


 ある程度、クリーチャーが引き付けられたところで、俺は指示を出した。


「俺たちも出陣だ!!」

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ