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117 カイドリア防衛戦 2

 防衛戦が始まって2日後、待ちに待った援軍がやって来た。重装騎兵隊約1000騎、戦闘はデイドラに跨るデイジーとニザール王子だ。重装騎兵隊を先導するように飛んでいる。カイドリアに近付くとカイドリア市民が大歓声を上げた。


「見ろ!!先頭の竜騎士様がサハール王国の国旗を振っているぞ!!」

「それにニザール王子も乗ってらっしゃる!!」

「俺たちは助かったんだ!!」


 デイドラに乗っているニザール王子が拡声の魔道具で叫ぶ。


「カイドリアの民たちよ!!もう大丈夫だ!!最強の重装騎兵隊が来たからには安心するがいい。すぐに蹴散らしてやる」


 言葉通り、周辺の敵を蹴散らして、カイドリアに入った。デイジーもなかなかやるな。味方を鼓舞するやり方を心得ている。まあ、俺たちが港に入港するときにはよくやっていることだがな。


 早速、総督府で今後の方針を検討する。


「兄上、お待たせしました」


「よくやった。それにしても1000騎も連れて来るとは・・・・一体どうやったんだ?」


「それはデイジー殿のお陰ですよ。彼女がいなければ・・・」


 王都の王宮で、国王にデイジーが熱く訴えかけたそうだ。その思いに打たれた国王はすぐに出動できる1000騎の重装騎兵隊を派遣することに決めたそうだ。5日後には他の部隊も増援くるようだが・・・


 それにしてもニザール王子は、物語を語るようにデイジーのことを話す。一体何があったのだろうか?


「それで早速だが、行動を開始したい。ある程度敵の分析ができているからな。作戦だが・・・」



 ★★★


 分析の結果、奇怪な生物の正体は、カイドリアやその周辺の都市の奴隷やスラムの行方不明者のようだった。教会側が手当たり次第にかき集めたようだ。マルカが言う。


「まだ、実験段階だったのでしょう。個体によって性能がまちまちです。それとその生物ですが、誰かが魔力で大まかな指示を出しているのでしょう。細かい指示はまだ出せないのではと考えられます」


 そして、指示を出している者についてはアジトに居る可能性が高いとのことであった。


「後は自爆攻撃ですが、これはその生物に埋め込まれている爆発する魔石を爆発させているようですね。爆発する魔石は高価なので、そこまで多くの個体はいないと判断できます。解析の結果、ある一定以上のダメージを受けると爆発する仕様になっていると考えられます」


 帝国も人命無視だが、こちらはもっと酷い。生命を冒涜していると言ってもいいくらいだ。


 作戦というのは、奇怪な生物を少しずつ殲滅するのではなく、一気にアジトを潰すことになる。まずは重装騎兵隊が奇怪な生物の集団を引き付ける。このときになるべくダメージを与えないように注意させる。そして、ここからが俺たちの出番だ。


「ベイム、新機能のほうはどうだ?」


「ばっちりッス!!後はリュドミラ姐さんとアトラの腕次第ッス」


 実は勇者砲に新機能を搭載している。それは射程を飛躍的に伸ばす仕様だ。その分、威力は半分以下になるが、勇者砲自体がかなりの威力なので問題はない。半分といっても普通の魔道砲よりは強力だからな。


 砲手席を見ると、リュドミラの指導でアトラが狙いを付けている。


「よし!!勇者砲、発射!!」


 アトラが勇者砲を発射する。上手く命中したようだ。


「やっぱり、威力は弱いッスね。まあ、数を撃てば補えるッスけど」


「そうだな。だが、敵からしたらこの射程距離は脅威だな」


 アトラはどんどんと勇者砲を撃ち込んでいく。すると、重装騎兵隊に引き付けられていた奇怪な生物の集団がクリスタリブレ号に向かってくる。アジトに攻撃を仕掛けた途端に、こちらに向かってくるということは、アジトを攻撃されたくないということだ。つまり、指揮者がアジトにいるということの証明になるのだ。


「ゴブリン隊、コボルト隊で魔道砲を撃ちまくれ、船に近付けさせるな!!魔石はカイドリアから豊富に提供されているからな」


 いくら射程が長いとはいっても、陸地ギリギリに船をつけている。だから、接近されるとかなりきつい。まあ、洋上に離脱すれば問題はないのだが、そうすれば作戦自体が失敗してしまう。

 ナザールが叫ぶ。


「重装騎兵隊第三部隊!!防御体型と取れ!!船に近付けさせるな」


 クリスタリブレ号が作戦の肝となるので、ナザールもこちらに乗船している。ナザールの号令で、クリスタリブレ号から重装騎兵隊の分隊が飛び出し、ダメージをなるべく与えないように接近して来る奇怪な生物の集団を上手く抑えている。


「見事なもんだな。よく訓練されてる」


「まあ、この程度ならどの国の軍隊もできるさ。ただ、砂漠でもこの動きができるってところが、俺たちが他国に負けない理由さ」


 ナザールが言うには、帝国やボンジョール王国の兵法を研究して、訓練させているようだ。まあ、帝国に比べれば少し劣るだろうが、帝国も砂漠地帯でこれをやれと言われれば、できないだろうな。


「まあ、こっちから攻め込まなければ、攻められることはないというのが俺の意見だがな・・・」


 そんなとき、ニコラスが報告に来る。


「上空のサギュラさんからデイドラに念話が入ったみたいだよ。数人がキャメールに乗ってアジトから逃げ出しているみたいだ」


 サギュラからデイドラに念話で連絡、それをポチを通じてニコラスが伝えてきたのだ。


「指揮者が逃げ出したんだろう。奇怪な生物の集団も統制を失い、多くの個体が立ち尽くしている。デイジー、出動だ」


「心得た!!ニザール王子、参ろう」


「うむ」


 デイドラにデイジーとニザール王子が騎乗して飛び立った。


「ナザール、お前もお人好しだな」


「船長殿程ではないがな」


 ナザールは弟のニザール王子に名誉挽回の機会を与えるために、首謀者の捕縛任務に就かせたのだ。まあ、竜騎士が2騎もいれば、負けることはないしな。ナザールはどうしても、ニザール王子にしたいのだろう。


 そんなとき、我らが偉大な勇者様は、砲撃主席からミニドラに飛び乗り、上空に舞い上がった。


「首謀者が捕縛される現場に勇者の僕がいないと恰好がつかないだろ?ということで、僕は行って来るよ」


「おい馬鹿!!アトラ!!お前の任務は勇者砲を・・・・」


 ナザールが言う。


「船長殿も大変だな。奇怪な生物の集団の処理はこちらで何とかする。重装騎兵隊にはいい訓練になるよ」


「悪いが頼む」


 戦況を見ると少しずつ確実に数を減らしていっている。途中、爆発する個体もあったが、上手く防いでいた。


 しばらくして、アトラたちが3人に教会関係者を捕縛して帰って来た。カーミラが言う。


「勇者殿は・・・やはり傑物であるな。問答無用で電撃砲を撃ち込み、拘束していた。教会関係者がよく言う『神の天罰が・・・』という台詞も言わせなかったしな・・・・」



 まあ、ある意味正解の行動ではあるのだろう。


 敵の殲滅作戦も終わりつつあるし、後はコイツらの尋問だな。

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