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116 カイドリア防衛戦

 カーミラとニザール王子を送り出した次の日、丘の上のアジトから奇怪な生物が大量に湧いて出てきた。おぼつかない足取りでカイドリアの町に向かう。武器らしい武器を持っている奴は少ない。


 俺たちの作戦だが、徹底した防衛戦だ。

 理由はいくつかあるが、一番は相手の得体が知れないからだ。頭を潰されても動き続けるなんて有り得ないし、平気で自爆攻撃をしてくる。イカれた教会のことだから、禁術でも使っているのかもしれない。なので、町に近付けさせないことを最優先にする。そのため、クリスタリブレ号から勇者砲、城壁から魔道砲を撃ち、近付けさせないことを基本戦術にした。魔石自体は豊富にあるようなので、クリスタリブレ号の予備の魔道砲も貸し出している。


 それにこれは希望的観測になるが、後2日もすればデイジーたちが援軍を引き連れて来てくれる。ナザールが指定したのは、ナザール王国で最強部隊の重装騎兵隊だという。


「我がサハール王家がこの国を治められているのも、最強の重装騎兵隊を持っているからだ」


 ナザールによるとラクダ型の魔物であるキャメールに騎乗した部隊で、暑さを軽減する特殊なフルプレートアーマーを装備した騎士団だという。


「この暑い砂漠では、ほとんどの戦士が軽装だ。しかし、その中で特殊なフルプレートアーマーを装備した戦士が砂漠においては、機動力が高いキャメールに乗って向かってくるんだから、砂漠で重装騎兵隊に勝てる部隊はいない。特に他国の者なんて相手にもならん。それに今回の自爆攻撃をしてくる相手には相性がいいだろう。あの程度の爆発であれば、十分防げる」


 カイドリアにも10名の重装騎兵が常駐している。試しに一当てしてもらったところ、十分に戦えるようだった。ただ、10名では数が足りない。虎の子の10名に無理をさせるわけにはいかないからな。


「弱点と言えば、維持費が馬鹿にならんことだ。そんな部隊だから、慎重な性格の親父が出し渋るかもしれんが・・・そこはニザールを信じよう」


「まあ、来ると信じよう。それで、寄せ集めの部隊がまとまるならな。もし来なければ・・・」


「カイドリアは諦める。非戦闘員の住民を優先的に避難させる。そのときは、船長殿に無理を言うかもしれない。俺はここで殿を務めるよ」


「そうならないことを祈るよ」


 俺たちは一旦、ナザールと別れる。クリスタリブレ号に戻り、水上から砲撃を行う。アトラはノリノリだ。


「よし!!変な怪物を勇者砲で殲滅だ!!」


「アトラ、50発は撃てるが、加減しながら撃てよ。敵がどんな手を使ってくるか分からないからな」


 水上からは勇者砲、城壁からは魔道砲を撃ち、奇怪な生物を近寄らせない。流石に魔道砲や勇者砲だけで全滅させることはできないので、城壁まで近付いた敵には冒険者と治安維持部隊が総出で魔法攻撃や弓で仕留めていく。それでも抜けて来た相手には重装騎兵隊が殲滅するというわけだ。


 攻撃自体は、何とか凌げそうではあったが、問題は昼夜を問わずに責め立てて来ることだった。そして、相手は不死身に近い存在だ。下半身だけになっても進軍して来るのだ。そのような光景に防衛部隊の気持ちは折れそうになる。それでもナザールが激を飛ばして耐えている。明後日に援軍が到着しなければ、かなり不味い事態に陥ってしまう。


 少し、相手の攻撃が弱くなったところでカーミラとともにサギュラに騎乗してナザールの総督府まで向かう。情勢の確認のためだ。場を和まそうとあえて、軽口を叩く。


「ナザール、調子はどうだ?」


「まあ、ギリギリだな・・・相手の得体が知れないから必要以上に人員を投入し、物資も惜しみなく使っている。やはり、早急に援軍が来ないと厳しいな。普通の籠城戦と違うから持って後5日だな」


「間に合うといいがな」


「それと、何とか死体を手に入れることができた。今、魔術師や学者を集めて確認をしている。元が人間ということ以外はあまり分からない」


「確認をしてみるが、ウチからも人を派遣しよう。こういったことには興味を示す奴がいる。少し、かわってはいるが・・・・」



 ★★★


 一旦、クリスタリブレ号に戻り、マルカを連れて総督府に戻って来た。マルカは勇者パーティーの魔法使いだが、研究者タイプだ。的確な分析力に、ここまでかなり助けられた。ただ、興味の引く研究対象には異常な執着を示すが。

 マルカを研究機関に案内するとマルカは興味津々な様子で、研究者たちにあれこれ質問をしていた。


「ナザール、こうなったらマルカは止められない。明日にでも迎えに来るから、俺は帰るぞ」


「優秀な研究者を派遣してくれて礼を言う」


 次の日、マルカを迎えに行くと興奮した様子で話し始めた。


「非常に興味深いですよ。かなり雑な作りですが、人間に魔石を埋め込み、無理やり薬漬けにしてできた産物ですね。全部の薬は分かりませんが、麻薬の類も使われていますから、教会関係者がやったことに間違いないでしょうね。ただ、人道的な面から言うと、クズですね」


 ああ、吐き気がする。


 ナザールが言う。


「コイツらの身元だが、奴隷だった獣人が二人、もう一人はニザールの部下だ。教会の関係者が大量に欠損奴隷を買っていたから間違いないだろう・・・・」


 ナザールによると奴隷商から事情聴取した結果、教会の関係者は「欠損奴隷に救いの手を差しのべる」と言っていたそうだ。教会とは慈悲深い組織だと感心して、その奴隷商は格安で売り渡したらしい。こんなことになるのならと悔やんでいたそうだ。

 そして、先日の襲撃作戦で敵に捕まったニザール王子の部下も酷いものだった。着用していた鎧から判断したらしいが・・・


「もう許せん!!この国から教会関係者を一人残らず叩き出してやる。そして、こんなことをした輩には報いを受けさせる」


「それは俺たちも同意見だ。手伝わせてもらうぜ!!マルカ、悪いが戦術的な観点からより詳しく分析してくれ」


「もちろんですよ」


 いずれにしても、援軍が到着しなければ攻勢には出られないがな。

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