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【完結】勇者パーティーの船長~功績を上げて軍隊で成り上がったら、勇者パーティーの船長になりましたが、メンヘラ勇者に振り回される地獄の日々が始まってしまいました  作者: 楊楊
第七章 勇者と幽霊船

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112 エピローグ

 魔王国での滞在を終えた俺たちは、無事にスパイシアに戻って来ることができた。

 魔王国では平和条約が締結され、アトラもボートレースとはいえ、魔王に打ち勝ったという建前ができたので、それ以後は魔王討伐を声高に叫ばなくなった。


 それからのことを話すと、スパイシアを取り巻く環境や国際情勢は大きく変化した。

 順を追って話すと、俺たちの帰還に合わせて魔王や親父たちも一緒にスパイシアにやって来たのだ。一応の建前はスパイシアに留学しているカインやメアリーたちの激励ということになってはいたが、実際は各国首脳陣との顔合わせや今後の協力体制の構築がメインであった。

 今回の国際会議では多くの成果があった。大きなものは、下記の3つだろう。


 一つ目は国際平和機構の設立だ。

 現在、勇者管理機構として、各国が話し合いで決議している状況だが、今後はその議題を勇者の活動だけに限らずに協力関係を維持しようということになり、国際平和機構が設立された。これには「中立、不干渉」の理念を持つ竜王国も会議にだけは参加することになった。というのも後述する研究機関の設置が大きい。なぜならドラゴンの生態、特に水竜の研究に力を入れたいという思惑があったからだ。何百年と未解明であった水竜の生態を知るチャンスなどそうはないからな。


 二つ目は、総合研究機関の設立だ。

 ドラゴンの研究もそうだが、スクリューやポーラが力を入れている魔石からの魔力抽出の効率化、パウロが主に研究している神の正しい教えなども含まれ、どうせなら学会のようなものを作ろうという話が大きくなり、総合研究機関が設立された。

 この影響は大きく、各国から多くの研究者が集うことになる。


 三つ目は学園都市スパイシアの誕生だ。

 前述した総合研究機関の設立に多くの優秀な研究者が集まったことや帝国皇帝も在学していることから、帝国貴族を中心に多くの留学希望者が増えた。それで仕方なく、留学生を受け入れることにしたのだが、今までの少数を丁寧に指導するというコンセプトは崩壊した。

 なので、教師を雇い、カリキュラムを作ったり、学生を管理する担当者を雇用しなければならず、学生や教職員用の宿舎や食堂も建設することになった。学生や教職員が多く集まることを見越して、飲食店や商店が多く開店し、のどかな田舎町だったスパイシアが大発展を遂げている。

 ミケやミケの師匠のポコ総督は多くの一等地を購入して、転売や家賃収入などで多くの利益を得ている。


 故郷が発展したことを喜ばしく思う反面、俺たちのような昔から住んでいる者は、少し複雑な気分にもなる。まあ、これも時の流れだと思って諦めよう。


 最後に国際情勢で大きなものだが、帝国がゾロタス聖神国の領土の一部を割譲した。

 割譲したのは、麻薬の原材料となっているキシサ草とコーカの実の一大生産地だ。大義名分としては、「今回の事件を引き起こしたゾロタス聖神国が引き続き、麻薬の原料を生産地を保有し続けるのは危険」というものであったが、半分以上は帝国国内の主戦派のガス抜きが理由だ。


 今回の事件で帝国からは4つの国が独立した。

 主戦派はこの4つの国を攻め滅ぼしてやると息巻いていたが、そんなことをすれば、国庫に多くの負担が掛かる。それならばということで、コム―ル大臣たちが必死に調整し、ゾロタス聖神国に攻め込むことにしたようだ。これは主戦派の戦力を削る意味もあるし、ゾロタス聖神国の領土を割譲すれば、領土の広さは変わらない。なので、プライドも傷付かないという論理だ。帝国がゾロタス聖神国を攻めなかったのも、教会の権威を利用して、帝国の戦争が正しいというお墨付きを得るためだったのだが、教会自体が腐敗している事実が公になり、ゾロタス聖神国と友好関係を維持する必要がなくなったのも理由の一つだ。


 まあ、俺としては誰が管理しようと麻薬を作らせないようにしっかりと管理してくれたらそれでいいんだがな。それにしても、このどさくさに紛れて、領土を獲得するなんて、帝国の強かさには驚かされる。これで、北大陸と西大陸の間の海(グーテル海)にも港を確保したので、魔王国との貿易を考えてのことなのだろう。

 今のところは協調路線だが、いつ攻めて来るか分からない帝国は、しばらくは、各国の仮想的のままだろうな。


 それはそうと、俺たち勇者パーティーはどうなるんだろうか?

 倒すべき魔王とは友好関係を築いたしな。ということは勇者パーティーの活動は打ち切りで、アトラともお別れだな。清々する・・・・・。


 ★★★


 ~勇者アトラ研究者の論文より抜粋~


 今回は、学園都市スパイシアについて紹介しよう。学園都市スパイシアは世界各国から留学生が訪れている。留学生の多くは王族や高級貴族、将来を嘱望されている研究者などである。かくいう筆者も留学経験がある。学園都市スパイシアの教育は独特で、生まれや能力で、教職員が学生に接する態度を変えることはない。

 そして、独自のカリキュラムもあるのだ。


 一つ例を挙げると、海洋実習がそれであろう。

 スクリューが動力の船が主流である現代において、学生が帆船に乗り込み、長距離を航行する。卒業航行は3ヶ月の長期に渡るものとなる。この海洋実習では多くのことを学ぶ。当然、一人で帆船を動かすことなんてできないから、どんなに仲が悪くても学生同士で協力するしかないのだ。そして、航行を終えたときに気付く。人それぞれには役割があり、誰が欠けても航行に支障が出る。船長だからといって横暴が許されるわけでもないし、船長だからこそ、大きな責任が付きまとう。

 王族などの今後、人の上に立つ者は特に多くのことを気付かされる。


 ここまで学園都市スパイシアの話をしたは、この学園都市スパイシアの設立も、勇者アトラが大きく関わっているからだ。設立当初から運営に携わり、第一期生から海洋実習があったようで、海洋実習の必要性も彼女が提唱したそうだ。これは世界平和を願った彼女の思いが込められている。

 海洋実習を例に挙げると文化や風習、考え方の違う者たちが協力して同じ目標に向かって進む。自分の価値観を押し付けるのではなく、お互いに受け入れ、妥協すべきところは妥協する。これは国家間においても同様だ。各国の将来を担う学生がスパイシアの地で数年とはいえ、一緒に学ぶ機会が与えられるのは非常に大きい。


 近年、大きな戦争が起きていない状況を考えると彼女の政策は正しかったと確信している。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!


次回から最終章となります。

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