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【完結】勇者パーティーの船長~功績を上げて軍隊で成り上がったら、勇者パーティーの船長になりましたが、メンヘラ勇者に振り回される地獄の日々が始まってしまいました  作者: 楊楊
第七章 勇者と幽霊船

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107 海洋実習

 海洋実習とは、姉貴が予算を引っ張るために考案した言い訳だ。姉貴もパウロも、魔王国を訪問したいという気持ちが強い。そこで姉貴は、留学生の能力向上のためとの理由を作り、カインとメアリーの船であるジェミニ号で魔王国に向かうことを計画していたのだ。

 実験的な航海で、護衛付きとはいえ、サンタロゴス・スパイシア間の航海は成功させている。そのような実績を元に帝国が来る前の会議で、各国から承認をもらっていたのだった。


 クリスタ連邦国の女王は問題ないとしているが、他の国はというと・・・


「せっかくマリーも頑張ってきたので、親としては行かせてやりたい。ただ、護衛をしっかりと付けたいので、勇者パーティーにお願いできないだろうか?」


 まあ、そうなるよね。

 勇者パーティーが護衛をするから大丈夫という論理だ。


 これには誰も反対はしなかった。

 そして、この日から出発に向けて着々と準備が進む。


 まず、随行する船だが、ジェミニ号、クリスタリブレ号の船足について来られる船にした。姉貴も領主として、長期間領地を不在にするわけにもいかないからな。

 結局ザドラの兄リザラの軍艦と帝国の軍艦1隻が随行することになった。まずはリザドの軍艦だが「マリンジェット号」という。推進力はハープと同じ鳥人族の風力とマーマン部隊の水魔法によるウォータージェットで推進力を得ているようだった。


 勇者パーティーのマルカが食い付く。


「これは凄いです。私が考えた理論を体現しています。少し勉強したいので、こちらの船に乗船する許可をください」


「まあ、リザドたちに迷惑を掛けないならいいけど・・・リザドはどうだ?」


「いいぜ。マーマンたちも喜ぶと思うよ」


 続いては帝国の軍艦だが、帝国の船には珍しく中型艦で、魔道砲もほとんど積載していない。船名はクリッパー号というそうだ。責任者のヤマット大将が言う。


「帝国には珍しい機動力重視の軍艦じゃ。動力は風力とスクリュー、開発者兼技師として乗船するのは・・・」


 紹介されたのは、マルカの魔道アカデミーの同期でクリスタリブレ号にも乗船したこともあるポーラだった。


「お久しぶりです。スクリューは少し改良を加えた程度ですが、魔石の魔力抽出のほうを工夫することにしたのです。魔石をそのまま利用するのではなく、一旦こちらの・・・」


 ポーラは研究の話になると止まらなくなる。結局は魔石をそのままスクリューの動力に使うと無駄が多いから魔石を一度精製して、粉末にする。そうすれば、均一の魔力が抽出できるというような話だったが、あまり理解できなかった。


「ポーラ女史!!その辺にしておいたらどうじゃ?まだメンテナンスは済んでおらんじゃろう?」


「そ、そうでした。これで失礼します」


 ポーラがいなくなった後にヤマット大将が言う。


「悪い娘ではないのじゃがな・・・それに魔道砲ではなく、スクリューの開発を進言したところは好感が持てる。彼女も帝国を背負って立つ者になるじゃろう」


「俺もそう思いますよ」


 ★★★


 一方、留学生はというとミケの講義を受けていた。


「私たちは、ここを出発したら海洋国アルジェットの首都アルジに寄港するニャ。各国から資金援助はあるけど、どうせならこの航海で儲けたほうがいいニャ。それで交易をするとして、何を売るべきかニャ?」


 ガル君が答える。


「特産品を売ればいいと習ったから・・・魚とかはどうだ?ここの魚は旨いしな!!」


「それはお勧めできないニャ!!アルジの特産品の一つが魚介類ニャ。こちらから持っていくとなると干物とかになってしまうニャ。新鮮な魚介類と干物では勝負にならないニャ・・・・」


 ガル君は少し落ち込んでいいる。

 ここでマリー王女が言う。


「リザードフルーツはどうでしょうか?バリスで流行っていますし、アルジではバリスで流行っていることがステータスと聞いたことがあるので・・・」


「それはいい考えニャ。勇者様がバリスでやったパフォーマンスを行えば、売れること間違いなしニャ。それでは、アルジの後は竜王国のイーストエンドに寄港するけど、アルジでは何を仕入れるべきかニャ?」


 ガル君が言う。


「今度こそ魚だ!!魚が特産品なんだろ?」


「他にはないかニャ?」


 一同押し黙る。


「今、相場を見ると竜王国では、虎王国をはじめとした東大陸の商品が人気ニャ。だったら東大陸の商品を仕入れてはどうかニャ?」


「なるほど・・・サンタロゴス島と同じ考えですね。中間貿易を考えろってことですね」


「マリー王女はよく理解できているニャ。それを踏まえたうえで、明日までに販売計画を作成して提出するニャ。今日はこれで解散ニャ」


 留学生が解散した後、ミケに声を掛ける。


「ちゃんと先生をしているじゃないか」


「こっちも商売だからニャ。リザードフルーツはミケ猫商会で買い占めているニャ。だからここで売るだけで儲かるニャ」


「それくらい逞しいほうが、留学生の勉強になるよ」


 少し呆れながら、俺は言った。



 ★★★


 最後はドラゴン関係だが、この研修にはドラゴンを5匹連れて行く。デイドラ一家とレドラカップルだ。デイドラ一家はクリスタリブレ号にレドラカップルはマリンジェット号に乗船することになった。レドラの番の水竜は名前は決まっていなかったので、まず名前を決めることになった。色々意見が出た結果、海の神から取ったポセイに決まった。

 指導員のロクタンを中心に水竜のポセイの研究をしている。伝承通り、竜騎士にこだわらない性格のようで、リザドの部隊のリザードマンやマーマンなら大抵は乗せてもらえているようだった。ある程度意思疎通も取れるので、短時間であれば船を引っ張ってくれたりもした。


 俺はロクタンに声を掛ける。


「研究のほうはどうですか?」


「順調ですね。今まで謎とされていたことがどんどん解明されて行ってます。問題は、水竜騎士はリザードマンかマーマン位しか務まらないということでしょうか・・・水竜の竜騎士隊を創設するなら、クリスタ連邦国に協力してもらうしかなさそうですね。そうなると国家的なことになるので、私の立場では何とも・・・」


「大きな話は置いておいて、レドラさんとポセイが幸せならそれでいいんじゃないですか?それに生まれて来る子ドラゴンもね」


「そうですね。併せてデイドラやミニドラの研究もしているのですよ。今一番の謎は、なぜミニドラが勇者様に懐いているかということです。レドラもポセイも警戒してますし、サギュラとデイドラは言わずもがなですね・・・」


 それは本当に謎だ。

 アイツのどこがいいんだろうか?


 今もアトラは、ミニドラと戯れている。


「ミニドラ!!勇者のドラゴンとして、誇りを持たないと駄目だぞ」


「キュー!!」


 まあ、あれでアトラの精神が安定するならそれもいいだろう。

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