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【完結】勇者パーティーの船長~功績を上げて軍隊で成り上がったら、勇者パーティーの船長になりましたが、メンヘラ勇者に振り回される地獄の日々が始まってしまいました  作者: 楊楊
第七章 勇者と幽霊船

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103/124

103 産まれる?

 ラトゥスを出た俺たちは再び、魔王国のサガットに寄港した。数日はここに滞在する予定だ。ゾロタス聖神国が公式発表を行うまでは待機だ。ギルドには「海賊船数隻は沈めたが、全部は仕留めきれなかった」旨の報告書は渡している。それに沿った発表をすることが予想されるのだが・・・


 結果的にゾロタス聖神国の発表はこんな形だった。


「海賊団はほぼ壊滅した。しかしながら残党はまだいる。よって、掃討作戦のため、付近の海域の航行は今まで通り禁止とする」


 まあ、妥当なところだろう。フルボッコにされたと発表できない以上は、こうでもするしかない。ラトゥスや周辺の港には被害が出ていないので、これで何とかなるだろう。麻薬の原料の輸出は絶望的だがな・・・


 親父も言う。


「引き続き監視は行う。ほとぼりが冷めたら再びやろうとするからな。何か根本的な解決策があればいいが・・・」


「帝国にでも攻めてもらうか?お仲間だけど・・・」


「それは流石に無理だろうな」


 そんな話をしていたときにニコラスとポチがやって来た。


「デイドラが言うには、サギュラさんがそろそろ帰って来てほしいって言っていたらしいよ」


 ドラゴンの能力は凄い。スパイシアからここまで、意思疎通ができるのか・・・


「そうだな。じゃあ、準備ができ次第、スパイシアに帰ろう」


 サガットで補給を終えた俺たちは、スパイシアへ向けて出発することになった。途中、砂漠の国サハール王国の港町バクールに寄港する。俺とミケは冒険者ギルドへ向かった。今回もギルマスが相手をしてくれた。


「ゾロタス聖神国の海軍が海賊相手に壊滅したらしいな?こっちはこっちで面白いことになっているけどな」


「そうだな、海軍が持ち直すには数年は掛かるだろうな。ところで、面白いことってのは何だ?」


 ギルマスが言うには、第二王子が筆頭の革新派が痺れを切らして、教会に詰め寄ったそうだ。この時点では、革新派は儲け話があるということしか聞かされておらず、何を作ろうとしているのか知らなかったそうだ。謳い文句としては「教会の秘伝のクスリ」ということだったらしい。


「それで、あまりにも話が進まないから、試しに作らせたそうだ。大量には作れないが、少量なら作れるからな。実物を見た革新派の連中は唖然として、すぐに第二王子に伺いを立てたそうだ。すると、第二王子は激高した。『俺は国を富ませることが目的だ!!国を亡ぼすことでは無い!!』そう言って、教会の弾圧を始めたそうだ」


 第二王子は、心から教会や帝国と手を組めば、国民に豊かな生活が送らせられると思っていたようだ。しかし、今回の件で、教会がサハール王国を食い物にしようとしていたことが分かり、元々苛烈な性格をしているので、反動は大きく、激しく弾圧することになったそうだ。教会としては、工場を建設し、ある程度麻薬を蔓延させてから、事に及ぶ予定だったそうだが、コーカの実が入ってこないことで、焦って計画が潰れたそうだ。


「今度は革新派が厳しく弾圧を始め、元々教会や帝国と手を組むことに反対していた保守派が宥めるという逆転現象が起きている。流石に問答無用で教会を焼き討ちにするのはやり過ぎだと思うからな。それで、今は教会関係者を拘束して、順次取調べをしているようだ」


「もうこの国で、教会が生き抜くのは無理だろうな」


「そうだな。中には真面目な連中もいるようだから、そいつらなら受け入れてくれるかもな」


 そんな話をした後、俺とミケはギルドを離れた。去り際にギルマスが言う。


「この国の為に働いてくれて礼を言うよ。また、機会があれば寄ってくれ。それとこれはこの国の名産の火酒だ。お前の船は酒飲みが多いんだろ?飲み切れないくらい渡してやるからさ」


「特に何かした覚えはないが、有難く貰っておくよ」


 俺たちは船に戻り、次の日に出航した。セガスも同じような情報を入手していたようで、諜報員を半分に削減するようだった。



 ★★★


 スパイシアに寄港した。今回はパフォーマンスはやらない。だって、デイドラがスパイシアに近付いた頃からそわそわし始め、2日前からデイジーとスパイシアに飛び立ってしまった。何もしなくても領民は総出で出迎えてくれたけどな。

 寄港すると姉貴とパウロが出迎えてくれて、すぐにサギュラの元に案内された。吹きさらしだが、屋根付きの大きな建物があり、そこにサギュラ、デイドラその間に大樽位の卵があった。そして、その周りにはマリー王女を筆頭に留学生や領民が取り囲んでいた。カーミラが言う。


「船長たちが旅立ってすぐにサギュラは卵を産んだ。もうそろそろ孵化するころだから、デイドラに連絡したのだろう。それと、ドラゴンは卵を群れで育てる風習があるのだ。このように皆が自分を待ち望んでいる環境だと孵化が早くなるとの文献もあるからな」


 更に聞くと留学生が中心となってお世話をしてくれたようだった。

 デイドラはというとサギュラにベッタリだったが、サギュラは冷たくあしらっている。


「卵を産むと母親のほうは卵に掛かりっきりになって、番には素っ気なくなるのだ。ニコラス殿、デイドラが落ち込まないようにフォローしてくれたら助かる」


「分かりました。ポチ、通訳してあげて」


 そんなやり取りを続けていたところ、一人の少女がやって来た。青髪青目の美少女、そう、我らが偉大なる勇者様だ。いきなり卵を持ち上げ、二匹のドラゴンから奪い取る。


「この卵は僕のだ!!二人ともご苦労だった。これからは僕が責任を持って育ててあげるからね」


 お前に責任なんてないだろ!!


 サギュラとデイドラも抗議の声を上げる。ここに留学生や領民がいなければ、大暴れしていただろう。それに配慮して、カーミラとポチに取り返すように言っている。


「僕のドラゴンは卵のうちからカッコいいな!!名前は・・・」


 そんなとき、卵から軋むような音がして、殻が割れた。そして、中からエメラルドグリーンの中型犬サイズのドラゴンが出て来て、アトラの肩に飛び乗った。そして、周囲を見渡すと、サギュラとデイドラが親だと分かったようで、二匹の元に飛んで行った。

 カーミラが言う。


「ドラゴンは賢い。魔力で誰が親なのか分かるようだ。これで、我らもクリスタリブレ号に復帰できるな」


「そんなに早く船に乗らなくても・・・生まれたばかりだし・・・」


「大丈夫だ。ドラゴンは群れで子供を育てる。ならクリスタリブレ号で、育てても一緒ではないか?それに我もサギュラに負けてられないしな」


 そんな話をしていたところ、アトラが驚きの行動に出る。


「お前は小さいから・・・ミニドラ・・・お前は今日からミニドラだ!!こっちに来い!!」


「キュー!!」


 そう鳴くと、生まれたばかりのドラゴンはアトラの胸に飛び込んだ。


「おい、アトラ!!勝手に名前を決めるな!!そこはもっと慎重に・・・」


「・・・もう遅い。ドラゴンは自分がミニドラだと認識してしまった・・・・こんなことは初めてだ」


 竜騎士になるには厳しい選抜試験が行われ、ドラゴンのほうも、ある程度素養のあるドラゴンが選ばれる。生まれた段階で、竜騎士のドラゴンになることなどないようだ。なので、今回のことは異例中の異例だそうだ。


「これは本国にすぐに知らせなければならん・・・・知らされた本国も困るだろうが・・・」


 そんな心配をよそに、アトラはミニドラと戯れている。


 本当に次から次へと問題を起こしやがって・・・

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