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【完結】勇者パーティーの船長~功績を上げて軍隊で成り上がったら、勇者パーティーの船長になりましたが、メンヘラ勇者に振り回される地獄の日々が始まってしまいました  作者: 楊楊
第七章 勇者と幽霊船

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102/124

102 救世主の勇者

 シャイターンシャイニング号の主砲、通称魔王砲で口火を切った戦いは、一方的な展開となった。親父たちは、霧の中での戦いを想定して演習を繰り返していただけにゾロタス聖神国海軍は為す術もなかった。魔王砲を撃ち込んだ後は、3隻の魔法障壁に全振りしたシールド艦を目立つ位置に配置する。当然相手はこの3隻に集中砲火する。しかし、ビクともしない。相手は焦り、更に魔道砲を撃ち込み続ける。そこで機動力のある艦と魔王砲で1隻ずつ沈めていく。


「流石だな。霧の中で戦うことを想定して演習した甲斐があったな」


「まあこれくらいはね。そう何度も通用する手ではないけど、ここで叩いておけば数年は海軍を再建できないだろうけどね」


 そんなとき、アトラが言う。


「何か僕も撃ちたくなっちゃったな・・・・魔王砲は後3発しか撃てないんだよね?」


 魔王が答える。


「では、勇者さんにお譲りしますよ。私は副砲の実射をしますから」


 当然、アトラの側にはリュドミラを配置する。


「霧で見えにくいな・・・あの大きなやつを狙おう。発射!!3連発だ!!」


 巨大なエネルギー弾が飛んで行く。3発ともヒットしたようだ。それも帝国から購入した超大型艦に・・・


「やったあ、撃沈だ!!よし、次だ!!」


「止めろ!!アトラ!!魔王砲を壊したら駄目だろうが・・・」


「威力は強いけど、なんか物足りないな・・・魔王さん、そっちも撃たせてよ」


「そうですね。せっかくなんでどうぞ」


 それからアトラは副砲を撃ちまくった。勇者と魔王が共闘しているなんて、ゾロタス聖神国海軍が知ったら腰を抜かすだろうな。


 そんな感じ戦闘は続く。だんだんと霧が晴れて来た。

 親父が言う。


「それでは我々は引くとしよう。後は手筈通りに頼む。マロンがもう一つの超大型艦に細工をしているようだから、なるべく人目に付く場所で頼むぞ」


「本当にエグいな・・・実際にやるのはアトラたちだが・・・」


 俺たちは霧が晴れる前にクリスタリブレ号に戻り、マストに張ってある帆をボロボロの物に取り替える。ちょっと戦った感じを演出するためだ。


「アトラ、ここからは幽霊船の船長じゃなくて、救世主様だ。勇者を演じろよ」


「僕は勇者だ。元に戻るだけだから大丈夫だよ」


 元に戻ることが心配なんだけどな・・・


 しばらくすると霧が晴れる。親父たちは既に立ち去っており、一方ゾロタス聖神国海軍は酷い有様だった。まともに航行できる軍艦は2~3隻で、後は廃艦寸前だった。アトラは拡声の魔道具で言う。


「敵は何とか追い払った!!とにかく救助を優先させろ!!ボートを出せ!!自力航行できる船は、僕の所に集合だ!!」


 なんとか航行できるのは5隻、その内3隻は港に着いたら廃艦決定だろうが・・・そして帝国から購入した超大型艦だが、1隻は沈み、もう1隻はなんとか航行ができるようだった。

 一通り救助が終わった後にゾロタス聖神国海軍の司令官に指示する。


「ヨハネス・ポルトス号の衝角ラムや魔道砲を廃棄してください。少しでも船体を軽くしたい。他の乗員も別の艦に避難を!!」


「しかし・・・」


「勇者様が動かします。それで何とかなるでしょう。司令官も早く避難を!!」


「分かった」


 それから、俺とアトラでヨハネス・ポルトス号を操りながらスキャリー海峡を離れた。



 ★★★


 クリスタリブレ号を先頭に廃艦寸前の軍艦5隻と輸送艦2隻が間もなくラトゥスに寄港する。大勢の市民たちが船着場に詰めかけている。激しい戦いだったとは艦の様子を見れば分かるだろうが、結果までは分からないからな。


「アトラ、そろそろやってくれ。デイジーとデイドラはすぐに飛び立てる準備を」


「承知した」

「キュー!!」


 船底にマーマンのマロンが細工し、その場所に魔道砲用の魔石を持ってくる。少し離れたところから、アトラの火砲で周辺に火を付ける。すぐにその場を離れ、待機していたデイドラに飛び乗る。飛び立ってしばらくして、ヨハネス・ポルトス号が大爆発を起こした。クリスタリブレ号に戻る前に司令官に説明をする。


「もうボロボロの状態でした。勇者様が何とか動かしてきましたが、限界のようでした。勇者様もこの艦には思い入れがありますので・・・」


「それ以上は言わなくていい。多くの命を救ってくれたことに感謝している」


 これには少し心が痛くなるが、仕方ない。


 船着き場に着くと市民たちの悲鳴が聞こえる。


「爆発したぞ!!あのデッカイ艦が沈んだ!!」

「もう一つの艦も帰って来てないぞ。負けたんだな・・・」

「海賊ごときに壊滅だなんて、情けない」


 市民を掻き分けて、俺たちは冒険者ギルドに向かった。既にギルマスとレイチェルさんが待機していた。


「多くの命を救ってくれて感謝する。最大限、追加報酬を払ってやりたいが、査定にはかなり時間が掛かるだろう・・・」


「そうですね。海軍が壊滅している状態では・・・・」


「それだが、追加報酬は辞退しますよ。流石に心苦しいですし。それに俺たちはこのまま、ここを離れます。ゴタゴタに巻き込まれたくないですしね」


 ギルマスが言う。


「それはそうだな・・・国としては、無理やり海賊を討伐したことにするかもしれないからな」


「だが、難しいだろうな・・・市民の目の前でヨハネス・ポルトス号が大爆発しているし、俺たちも何隻かは沈めたが、それでも全部は仕留めきれなかったからな」


「報酬を辞退していただいたことだけでも有難いです。今後のことはこちらの問題ですから・・・」


 これからゾロタス聖神国や教会がどんな風に発表するかは疑問だが、俺たちにはあまり関係のないことだ。最低限の補給を終えた俺たちはラトゥスを後にする。

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