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【完結】勇者パーティーの船長~功績を上げて軍隊で成り上がったら、勇者パーティーの船長になりましたが、メンヘラ勇者に振り回される地獄の日々が始まってしまいました  作者: 楊楊
第七章 勇者と幽霊船

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100 再び魔王国へ

 国際会議も終了し、各国の要人もそれぞれの国に帰っていく。それは俺たちも例外ではない。

 カインとメアリーが親父とお袋と別れを惜しんでいる。


「ちょっと寂しいな・・・」

「別に寂しくないし・・・」


 そして、もっと別れを惜しんでいるのが・・・・


「キュー!!」

「キュ、キュ」


「デイドラ、この任務が終わったらすぐに戻って来るからさ。名残惜しいけど行くぞ!!」


 多くの領民たちに見送られ、俺たちはスパイシアを出港した。途中、サハール王国のバクールに寄港し、情報を集め、魔王国の王都サガットに寄港した。今回はスピード優先だった。かなり早い日数で航海を終えた。多分世界記録更新だろう。だって、操船スキルを持った奴が3人、規格外の魔力を持った勇者が1人いるからな。それに優秀な船大工が二人もいるので、メンテナンスも完璧だ。


 港に着くとすぐに親父たちが部下から報告を受けていた。


「もう20隻も軍艦が来ているのか・・・それにもうすぐ超大型艦が来るだと!!」


「そうです。何でも帝国海兵隊の特別艦で、物凄い性能をしているとの触れ込みです。その名も教皇が自らの名を冠したヨハネスポルトス号と言うそうです」


「そんな凄い船が来るのか・・・ちょっとこちらも戦力を増強しなけらばならんかもな・・・」


 それって多分あれだよな。アトラが壊したやつ。


「親父、心当たりがあるから探ってやるよ。多分見掛け倒しもいいところだからな」


 ★★★


 そこで俺たちは、竜王国のウエストエンド港にやって来た。そろそろ、ゴーストからの手紙も届いている頃だろうと思っていたし、それにサギュラのことも報告してあげたいしな。

 ギルドに行くと案の定、ゴーストから手紙が届いていた。


「竜王国経由で報告は聞いた。依頼達成として処理しよう。ご苦労であった。しかし、国の頭から腐っていたとは驚いた。それで、幽霊船討伐のために帝国にゾロタス聖神国から依頼があった。軍艦が足りないから融通してほしいとな。結局2隻ほど「アトラ要塞」と同型艦を売り渡すことになった。これには主戦派も珍しく大賛成だった。あんなデカブツの金食い虫は使えんからな。レオニール将軍が必死で反対していたが、なんとか説得したものだ。主戦派といっても帝国の利益を一番に考えるからな。まあ、引き取りに来たゾロタス聖神国の担当者は驚いていたよ」


 手紙によると金食い虫の戦艦をゾロタス聖神国に押し付けたのだろう。というか、あの後2隻も建造させていたのか・・・押し付けられたゾロタス聖神国はかなりの痛手だろうな。

 まあ、その戦艦であれば余裕だ。


 次は竜騎士隊の北部方面隊の本部を尋ね。サギュラのことを伝える。みんな喜んでくれた。デイドラはというと竜騎士のドラゴンたちに冷やかされていた。ニコラスが言うには、サギュラに想いを寄せていたドラゴンも多くいて、羨ましがられていたそうだ。


 ★★★


 そしてウエストエンド港での用件を済ませた俺たちは再び、ゾロタス聖神国の王都ラトゥスにやって来た。まずは冒険者ギルドに向かう。積荷輸送の依頼をサハール王国のバクールのギルドから受けていたからだ。今回もギルマスが応対してくれる。


「それにしても、いつも早いなあ。レイチェルさんは今呼びに行っているからしばらく待ってくれ」


「そっちはどうだい?」


「海賊団討伐の為に海軍はスキャリー海峡に20隻程張り付いているし、少し前に帝国産の大型戦艦も届いたしな。ただ、俺に言わせれば、馬鹿高いゴミを買わされたとしか思えん。報告にあった通り、海賊団は、すばしっこいんだろ?だったらあんなデカブツは必要ない」


「そんなの船乗りなら常識だろ?」


 ギルマスが渋い顔をする。


「それはそうだが、海軍はまともな奴が軒並み辞めて行った。残ったのはゴマ擦り野郎ばかりだ。なんか任務のことで、もめたみたいだ。去り際にそのときの海軍大将が『こんなことは、誇り高い軍人のすることではない!!』って怒鳴っていたからな。あまりの剣幕に詳しい事情を聞けなかったがな」


 まともな武人なら麻薬の製造なんてのには手をださないよな・・・今も軍にいるのは、詳しい事情を知らない下っ端か、知っていてもなお、教会と一緒に利益を得ようとするゴミだな。


 そんな話をしていたらレイチェルさんがやって来た。


「遅れまして、申し訳ありません。明日の出発式の準備で大忙しで・・・そんなことに時間を使うよりも、討伐してから何かやればいいのに・・・」


 レイチェルさんはキレているようだった。


「こっちが、突然来たんだから気にしないでください。ところで、出発式とは?」


 レイチェルさんの話では、帝国製の2隻の軍艦が海賊退治に向かうための出発式を行うそうだ。駄目な奴程、こういったことだけに力を注ぐからな。

 それで2隻の船は現教皇の名前を冠した「ヨハネス・ポルトス号」と初代教皇の名前を冠した「リンデン・トレバース号」にしたらしい。「ヨハネス・ポルトス号」には聖神教会の旗、「リンデン・トレバース号」にはゾロタス聖神国の国旗が取り付けられるそうだ。


「こんなことをしていたら、ゾロタス聖神国の海軍は近々壊滅すると思うがな」


「俺もそう思うよ」


 話は大体そんな感じで終わった。最後にギルマスが聞いてきた。


「コーカの実の輸送依頼を受けてくれるか?」


「無理だな」


「だと思ったよ」



 ★★★


 魔王国の王都サガットに戻った俺たちは、クリスタリブレ号を幽霊船に改造している。ボロボロのマストに付け替え、海藻を船体に取り付け、旗を外す。ベイラは不機嫌そうだ。


「任務が終わったら外すのは分かっているッスけど・・・ちょっと複雑ッス」


「これなら船首のスケープ像とマッチするだろ?」


「それはそうッス。幽霊船の為にある船首像みたいッスね」


 どうして俺たちがこんなことをしているかというと、ゾロタス聖神国の海軍を挑発するためだ。親父の話では、魔王国海軍の部隊が交替で幽霊船を演じているそうだ。だかしばらくは、決戦に向けて全体演習がしたいから、幽霊船役を引き受けてくれないかと頼まれたのだ。

 ベイラはクリスタリブレ号が幽霊船に偽装することに難色を示したが、アトラだけは、かなり乗り気だった。


「幽霊海賊団か・・・カッコいいな!!よし今日から僕が幽霊海賊団のお頭だ!!」


 それからは自分のことをみんなに「お頭と呼べ」といったり、幽霊船としての活動中は変な覆面まで被らされた。挙句の果てに自作のドクロマークの旗を掲げるようにもなった。


「よし!!幽霊海賊団、これより出発だ!!ネルソン、準備はいいか?」


「へい!!お頭!!」


 今日も意味不明の設定に付き合わされている俺たちは、幽霊船としての任務に就くのだった。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

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― 新着の感想 ―
いつも楽しく読まさせて頂いています。 エピソード100話、おめでとうございます。 これからも船長の苦労するところと活躍するところを楽しみに読まさせて頂きますね。
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