ゆめ使い
今日も困っている人がたくさんいるみたい。
早く助けにいかなくちゃ。
夜になって眠っているこどもたちを見てささやく。
僕はこどもの悲しい夢を食べるゆめ使い。
「まずはあの子のところに行こう。」
泣きながら眠っていてつらそうだ。
トントントン、とゆめの扉をたたく。
「おじゃまします。」
「あなたは誰?」
扉を開けた先にいた女の子はシクシク泣きながら
こちらをじっと見つめる。
「僕はゆめ使い。君のゆめを食べに来たんだ。
どうして泣いていたの?」
「明日は小学校の入学式なの。
でも友達が誰もできなくて
ひとりぼっちだったの。」
「そうだったんだね。
そんな悲しいゆめは僕がたべてあげる。」
パクパクパク、ゴックン。
「これでもう大丈夫。」
「なんだかスッキリしたわ。」
「それはよかった。」
「ゆめの代わりに「ゆうき」っていう種をあげるね。」
「これはなあに?」
「この種を大事に温めていれば、
きっと友達ができるよ。」
「ありがとう。ゆめ使いさん。」
「どういたしまして。」
パタンと静かに扉を閉めてホッと息をはく。
これでもうあの子は安心。
さあ、次の子のところへ急がなくちゃ。
僕のゆめはこどもたちみんなが
幸せになることだから。