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ワイバーンを討伐せよ!(アリスの話)

 目的地のビアステッド村は、私の村から馬で約1時間の場所にある。

 私を乗せた白馬は嬉しそうに駆けていて、その後ろに動物の大群が続く。出発したときは20~30頭だった動物たちは、ビアステッド村に着くころには200頭を超えていた。道すがら動物たちを手当たり次第に連れてきてしまったようだ。


 ビアステッド村に近づいたら上空を飛ぶワイバーンが見えた。ワイバーンが放った火によって、村の家が何件か燃えている。


「もう被害が出ています! 王子、ご指示を!」従者が叫んだ。


 カール王子と従者はワイバーン討伐の作戦会議を始めた。私は危ないから村はずれの岩陰に隠れるように言われたから、動物たちと岩の方へ移動する。


 私が岩陰に移動する間に作戦会議は終了し、カール王子と従者はワイバーン討伐を開始した。作戦の詳細は分からないが、大盾を持った従者が集まってワイバーンの炎を防ぎながら、弓矢で攻撃する作戦のようだ。


 私は岩陰からワイバーンと王子たちの戦闘を見ているのだが、戦況はお世辞にもよくない。

 従者の盾では完全にワイバーンの炎を防ぐことができない。だから、カール王子と従者のダメージは蓄積していく。弓矢はワイバーンの硬い鱗に跳ね返されて有効な攻撃にはなっていない。辛うじて全滅は免れているものの、このままだとジリ貧なのは素人の私から見ても分かる。ワイバーンにやられるのは時間の問題だ。


 有効打が出せない王子が部下に大声で指示している。


「前身だ! 剣の届く距離まで行くぞ!」


 じりじり迫ってくる王子と従者に向けて、ワイバーンは鋭い爪で攻撃した。その攻撃で従者の持つ盾が弾き飛ばされた。もうワイバーンの炎は防げない。

 そして、ワイバーンは無防備な王子と従者に炎を放とうとしている。


―― これはマズイ!


 私は思わず王子たちの方へ駆け出した。

「逃げて下さい!」と大声で叫びながら王子たちの方へ走る私。

 視界に入った私をワイバーンが見てきたから、私は負けじとワイバーンを睨み返す。


 しばらくすると、ワイバーンは王子たちへの攻撃をやめて私のそばに降りてきた。

 私は至近距離のワイバーンに驚いたけど、逃げるわけにはいかない。ワイバーンを睨み続けた。


 私の警戒には関係なくワイバーンは「キューン」と喉を鳴らして、私を見ている。

 私は勇気を出してワイバーンの鱗をなでてみた。すると、ワイバーンは嬉しそうに寝そべってお腹を見せてきた。


―― えっ? ワイバーンにも効果があるの?


 この結果に私は驚いた。私は魅了魔法?をモンスターに試したことがなかったけど、効果はてきめんだった。


 ボロボロになりながらワイバーンと戦っていた王子と従者。

 今までの戦闘が嘘のように私に従順なワイバーンを見ている。

 あわや犬死となりそうだった王子と従者は気まずそうだ。


「アリスはワイバーンとも仲良しなのかい?」とカール王子は私に尋ねた。


「そうみたいですね」


「先に言ってよ! 僕たち死ぬところだったんだよ」


「すいません。モンスターに試したことがなかったので・・・正直、私も驚いています」


「まあ、これで一件落着だな。でも、僕たちの戦闘は意味がなかったみたいだね・・・」

 カール王子は恥ずかしそうに言った。


 すっかり落ち着いたワイバーン。私の服のすそを引っ張って、『ついてこい』と言わんばかりに歩き始めたので、私たちはワイバーンの後をついて行った。

 しばらく歩くと、そこには小さい竜が傷を負って横たわっていた。


「人間の放った矢がワイバーンの子供に刺さっていますね」と従者が言った。


「傷の手当てをしてあげよう。子供が人間に傷つけられたから、親が怒っていたのだな」


 これで、ワイバーンが村を襲うことはないだろう。


―― これで一安心・・・


 安心した私は急に眠気に襲われて、そのまま意識がなくなった。



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