13.王都
(元カノ視点)
「もう一週間も歩いたわ・・・王都まで遠すぎよ。」
行き倒れの人からもらった路銀も門の番兵に通行料を払ったからすっからかん。
だから、比較的安全な道の大通りで物乞いを始めたわ。
理由は至極単純で、この辺りは物乞いが全くと言っていいほどおらず、みすぼらしくてかわいそうな自分を恵んでくれる裕福そうな人たちが多数行き交っているからね。
「このぼろ布をかぶれば少なくとも貧しい旅人くらいには見えるわ。」
この布も行き倒れの人からもらったもの、私は意気揚々とこの布をかぶって拾ってきたお椀を前において道行く人にひたすら金を恵んでくれるように声をかけ続けた。
・・・・・・・・
それからかれこれ一週間、一向にお金がたまらないどころか、みな奇異の目で見ながら罵倒してくるのだ。
「何かしらあの薄汚い女。」
「栄えある王国の大通りで物乞いなんかしやがって。」
「今日は他国の外交官が来るっていうのにこれじゃ祖国の名に傷がつくってもんだぜ。」
「顔もフードで見えなくしちゃって、腰振ることすらできない醜女なのかしら?」
「だれか兵士に行ってどかせよ。臭くてしょうがねえ。」
言いたい放題言いやがって!見てなさい、あたしが偉くなったら今馬鹿にした奴らは一族郎党根絶やしにしてやるんだから!!
だけど、それを口に出す気力は私にはもう無く、乾ききった口を動かす程度しかできなくなっていた。
私は、オークもどきに対する恨み言をブツブツ言いながらひたすら誰かが金を入れてくれるのを待つしかなかった。
しばらくすると大通りに人が増え始めた。
すると、外交官の馬車の警護に駆り出された衛兵が駆けつけてきた。
「おい君!ダメじゃないかこんなとこで物乞いしちゃ・・・ほら立て!!」
「汚い手で・・・触らないで。」
私は、自分をどかそうとした男の手を払おうとしたが腕が上がらない。
「どう考えたって汚ねえのはお前だろうが!」
そうこうしているうちに私は好きでもない冴えない男に担がれてしまった。
抵抗する気力もなかった私は、魔物や人間に囲まれてゆっくりとやってきた豪華絢爛な馬車に乗っているであろう人物を呪い殺すかの如くにらみつけた。
「どこの国だか知らないけどお高く留まっちゃって・・・。あたしがいつか困らせてやるんだからせいぜい頑張りなさい。」
・・・・・・・
(ブレイブ視点)
デカチノフとの交渉から一週間後、俺は王国と魔国の本格的な和平交渉のために城へと続く大通りを、黒を基調とした魔国製の馬車に乗りながら目指していた。
馬車に乗っているのは俺のほかにも、ギガメスや交渉役のオーガキングの鬼道丸、ギガメスの護衛でヴァンパイアロードの執事ホワイト・バレンタインだ。
御者は鑑定スキル持ちのゴブリンメイジであるボビーが務めている。
「不安か?ブレイクよ。」
ギガメスの問いに緊張の面持ちの俺は答えた。
「ああ、今回は交渉だ。我々が安全であることを示すためにこちらから下手な真似はできない。もし、先に手を出されたらと思うと怖くてな。」
「大丈夫じゃ、いざとなれば・・・こんな下等生物の国などこの四人で十分じゃろう?のう、じいや。」
「・・・そうですな。殿下の能力さえあれば、ほとんどの敵を任せられましょう。」
「いや、俺が警戒しているのはデカチノフのことだ。」
「おお!確かに『ゲート』持ちは厄介ですからな。対立するとなった場合、一度来たことがある魔王城にゲートを開けられた場合はさすがに対処しきれないかもしれませんな。さすがはブレイク殿、そこまで考えたうえでの和平の申し出だったとは・・・。」
「いやいや、今の俺の発言でそこまで見抜けるお前もなかなか・・・!」
俺は馬車の窓の外から刺すような視線を感じた。
「どうしたのじゃ?」
「だれかににらまれたような。」
「まあ、魔物を嫌う人間は少なくありません。ここからが正念場でしょう。」
「ああ、そうだな。」
車輪がきしむ音ともに馬車が止まった。
「つきましたよ。」
ボビーの声を合図に俺たちは馬車から降りた。
目の前に広がるのは、石煉瓦でできた大きな古城だ。
「これがマミアカーダ城、間近で見るのは初めてだな。よもや俺が外交使節としてこの城を訪れることになるとはな・・・。」
「ブレイク?」
俺が物思いにふけっているとギガメスが不安そうな顔で覗き込んできた。
その愛くるしい顔に俺は少し赤くなった。
「な、なんでもない大丈夫だ!さあ、行くぞ!」
「うむ!!」
「俺たちの戦いはこれからだ!!」
ご愛読ありがとうございました!私の次回作にご期待ください!!




