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『第13話 火の鳥が落ちるとき(後編)/4・攻防戦その1』


 ブリッジではカオヤンが苛立ちを隠せない。

「おい。方向転換が遅いぞ。このままでは市庁ではなく河川岸に落ちる」

「申し訳ありません」

 舵輪を手にする武装乗客が謝るが、彼も飛行魔導船の操船など初めてである。ブリッジを占拠してからずっと操舵手の動きを見、基本操作はわかったつもりだったがやはり実際にやると勝手が違う。しかも爆発の影響で安定翼などの動きに支障が出ている。

「お待たせーっ!」

 そこへ扉が蹴破られクインとギメイが飛び込んできた。

「お前達は」

「ウブで一番いい女、クイン・フェイリバース!」

「その亭主のヌーボルト・ギメイだ」

 途端、ギメイの脳天にサーベルの柄が叩き込まれる。

「誰が私の亭主だって……。私の亭主は良い男でないとダメなの!」

「だったら俺のことじゃねえか」

「あんたのどこが良い男なのよ! もと誘拐犯!」

「これでも俺の良い男レベルはかなり上位だぞ」

「あんたの良い男レベルは未だ0よ!」

 言い合う2人を周囲は唖然として見

「下らぬ夫婦万歳はそこまでだ」

 カオヤンがクビでブリッジの隅を示すと、そこでは打ち倒されたプリンスキーとイチジクに数人の武装乗客が剣を向けていた。

「人質のつもりか。笑わせんな。最初から殺す予定の人質に意味はねぇ。そうだろプリンスキー」

「その通りだ。僕一人の命にためらって数千人死なすなら、僕を見殺しにして数百人を救え!」

 言い切るプリンスキーはクインは感動で身を震わせ

「さすが。王子の良い男レベルが上がった!」そしてギメイに「あんたも見習いなさい」

「なんか釈然としねえぞ!」

 叫びながら武装乗客達に突っ込んでいく。操船を一時止めてギメイを討とうとする身構えるより早く一気に間を詰めたギメイの拳や蹴りが武装乗客達を次々打ち倒していく。が、相手もさすが死を覚悟してここにいるだけにしぶとい。ギメイの攻撃を受け倒れても、すぐに立ち上がって再び挑んでいく。

「女は引っ込んでいろ!」

「剣に性別は無いわよ!」

 クインもサーベルを振るい相手を打ち倒すが、倒しても倒しても立ち上がってくる相手に

「仕方ないわね」

 今まで峰打ちにしていたサーベルを半回転して振るう。相手は斬られて血飛沫を上げて倒れた。

「こんな状態ですからね。峰打ちは止め。手足の1本切り落とすつもりで行くからね!」

 かかってきた相手にサーベルを煌めかせると、鮮血を上げて右腕が床を転がり片腕となった男が床をのたうち回る。

 彼女が身構えた途端、トゥヴァード号が傾いた。

「何なのよ?!」

 見回し目を丸くする。操舵手がおらず、舵輪が勝手に回っている。

「操舵手まで戦わないでよ」

 慌てて舵輪をつかむが敵はかまわずクインに襲いかかってくる。蹴りやサーベルで応戦するが舵輪をつかんだままではやはり動きが鈍い。

「儂に任せろ」

 イチジクが駆け寄りクインに代わって舵輪をつかむが、その背中にナイフが突き刺さる。

「艦長!」

 倒れるイチジクに代わってプリンスキーが舵輪に飛びつく。

 その頭上を火の付いた爆薬が跳び越えた。カオヤンが残していた切り札の1本だ。

 ブリッジ前方まで飛んでそれは爆発した!

 爆風がブリッジ内を吹き荒れ、強化ガラスに亀裂が入り戦うクインやギメイ、武装乗客達を吹き倒す!

「このクソおっさん。本当に何も考えてねえな!」

 ギメイが立ち上がり周囲を見る。武装乗客達の姿ばかりでカオヤンは

(逃げたか、隠れたか?!)

 見えない。

 クインが倒れたプリンスキーを抱き起こす。

「王子、大丈夫ですか?」

「ああ……なんか頭がズキズキするが……」

 上体を起こすプリンスキー。その手にはしっかり舵輪が握られていた。

「え?」

 クインは彼の持つ舵輪を見る目を、先ほどまで立っていた舵輪が備えつけられていた台座に移す。そこにはさっきまであった舵輪はなく、それをつけていた軸が折れていた。

「壊れたーっ!」

 クインは折れた軸をつかむと力任せに回そうとする。

「どうだ?!」

「回ることは回るけど……回しにくい! 王子、その舵輪を」

 言われて舵輪を持ってくるが、さすがにプリンスキーもどうしたら良いかわからない。

「貸してください」

 彼から舵輪をひったくるようにとると、折れた軸に合わせる。

 その中心、軸に合わせて彼女は気合いと共にサーベルを突き立てる。

 サーベルは舵輪の中心を貫き反対側に飛び出すと、折れた軸の中心に突き刺さり食い込む。

「よし、直った!」

 舵輪をサーベルで縫い止めた彼女は、再び舵輪を操り始める。サーベルの柄が邪魔だが軸を握るよりずっと良い。

 口をあんぐりと開けて呆然とするプリンスキーに

「どうだ。俺の嫁はすごいだろう」

 ギメイが言い、プリンスキーも口を開けたまま頷いた。

 武装乗客達がわらわらと立ち上がる。目は血走り肩で息をして、ただ執念で立ち上がっている感じだ。

「邪魔はさせねえぞ」

 クインを背に、拳を鳴らしながらギメイが立ちはだかる。

「我々の邪魔はさせん」

 カオヤンが肩で息をしながら立ち上がる。爆風で服も髪型もぐちゃぐちゃだ。

 傾いたブリッジでギメイとカオヤン達が睨み合う。


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