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比翼の詩と、(旧:薄桜)  作者: 紬向葵
暁月
81/97

第七十話 二つの雨

【登場人物】

●平家

影の一族と言われ、禁術を使う。

前当主 平 昌宜の代から刀治道を用い、

童狩りなどの生贄を使った術は使わず、

影赦を刀とし、国の治安を影で支えてきた。


・ジン  元の名は(まもる)。字は仁。白髪の少年。

     現在は平家の長男。

・サク  字は桜。仁と同じく平家の長男。

・チズ  字は千鶴。平家の現当主。

・花心  数年前に生き別れた妹。

     翡翠と名乗り、忍びの一族と行動を共にしていた。

・海道  夜雀に捕らえられている。

・風優花 夜雀に捕らえられている。

・真白  突如現れフミを殺害し、再び姿を眩ませた。

・林之助 千鶴と共に行動していた。ジンと花心と再会する。



⚫原田家 

原田家の武士は皆、黒狼こくろうと呼ばれている。

現在政治の実権を握っている武家。


・ユキ 字は極之(みちゆき)。原田家の長男。

    雅号は対狼ついろう

・シゲ 字は茂之しげゆき 。山犬使い。

    まだ幼く喧嘩早い。ユキと慈実の子供。

    残血の血を引いている。

・トシ 字は勇臣としおみ。女好き。

    ユキの弟。ユキと共に対狼と呼ばれている。

・慈実 残血の子孫。シゲと呼ばれている。ユキの許嫁。

    令眼と言われる琥珀色の瞳を持っている。

    ユキを守るため自ら能力を差し出し、死ぬ。


●藤堂家

国を治める二代武家の一つ。

真っ白な袖の靡く装束を身に纏っている。

律術という術を代々引き継いでいた。


・イト 字は弦皓いとあき。授名は紫苑しおん

    藤堂家の三男。雅号は鬼刀律術者(きとうりじゅつしゃ)

    音を使った律術を使う。フミにより殺害される。

・ムギ 字はつむぎ。授名は錦葵にしき。冷静沈着な謎の少年。

・フミ 字は志詩しふみ。忍びの一族の生き残り。

    イトとムギの小姓として藤堂家に潜入していた。

    真白に殺害される。


●その他

・夜雀 容姿は海道。雀の面をつけている。

・紅藍 巫女姿の女。夜雀の仲間?黒猫の面。

氷雨ひさめ、この辺でいいんじゃないかな?」



「るっせぇよ黙れ」



「全く…口が悪いんだから。よく父上の前でボロがでないね」



「僕は時雨しぐれと違って賢いし、ドジはしないんだ」



「それは確かに、反論できないな」




少年らは東門の上に立ち、廃れてしまった都を見下ろした。


同じような背格好をした2人は、切り揃えられ肩まで伸びた美しい黒髪に白く陶器のような肌、同じ芍薬の香りを纏わせている。


不意に南門付近から爆発音がし、それと共に突風が巻き起こった。


彼らの身を包む袖口の広がった白装束がはためく。


しかしそれに2人は全く動じることなく爆発地をしばらく眺めた後、氷雨と呼ばれた少年は呑気に欠伸をしながら隣に立つもう1人に問いかけた。




「時雨、本当にあいつの言葉信じて動くのか?あの女見るからに怪しかったじゃねえかよ」



「信じるかはさておき、提案された内容は私達にとって好都合な内容だった。相手の動きを警戒しつつひとまずこちらは予定通りに動こう」



「ふん」




鼻を鳴らし口をへの字に曲げる氷雨を見て苦笑した時雨は、爆音と共に微かに聞こえたもうひとつの音を探るべく目を閉じ意識を集中させた。




「きた」




静かに目を見開き、時雨が呟いたのと同時に氷雨は振り返り鯉口を切る。


不敵な笑みを浮かべた氷雨は時雨の手を取り強く握りしめ告げた。




「ヘマすんなよ」




時雨は氷雨の手を握り返し、左手で刀を抜き払うと慈しみに満ちた笑みを浮かべ、彼を一瞥する。




「わかってるよ」




- ワオーーーーーーーン


氷雨の睨みつけた視線の奥から遠吠えが響き渡り2人の手にした白銀の刀が闇を切り裂く鋭い光を放った。


氷雨、時雨と順に口を開く。




「さぁ…今度は狩人が、狩られる番だ」



「そしてここに来るであろうあの子の能力は私が継承する」




時雨の言葉に氷雨は言葉を詰まらせ、じっとりとした視線を彼に送り嘲笑う。




「弟相手に容赦ないね」



「そうだよ。もちろん氷雨相手にも手を抜かない。彼も大事な弟なんだからちゃんと本気でやり合おう」




氷雨の言葉に時雨は先程の慈しむような笑みを浮かべたまま、しかし淡々とした口調でそう言い放った。


そして続ける。




「氷雨、これはしょうがないんだ。どちらかは死ななければいけない。私達は…呪われた双子なんだから」




氷雨の眉間にはいつの間にか皺が寄っていて、幼子のように愛らしい顔つきは般若のように酷く歪んでしまっていた。


時雨は氷雨の眉間にそっと手を伸ばし凝り固まっていた部分を指先で優しく解す。


しばらくされるがまま固まっていた氷雨は、時雨の指先が額から離れると「ふっ」と息を吐き舌打ちをした。




「…もちろん。僕も手を抜いたりしないさ。精一杯頑張って、あんたを死の淵に追いやってやる」



「ああ。共に頑張ろう」




南門の辺りは騒がしくなり始めるも、時雨と氷雨の間には呼吸音さえもはばかられるような静寂が訪れていた。


度々自分達の立っている鳥居が揺れるほどの衝撃が都の街に走っていたが、2人はそれを気にもとめずただ一点をじっと見据えている。


やがて奥の方から小さな黒い影が飛び跳ねながらやってくるのが見えた。


それは落雷のような凄まじい速さで都の方へと近づいてくる。


時雨はその姿を捉えたと同時に氷雨に視線を送った。


すると彼も同じように時雨を見つめ2人は言葉を交わすことなく意思疎通し合う。


そして同時に口を開き、刀を持つ手に力を込めた。




「「任務。原田家の山犬使いの首を取り、裏切り者である藤堂弦皓を殺しその能力を剥奪する」」

最後までお読み頂きありがとうございます!

作者の紬向葵です。

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