表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/32

第五癒:夕食会

長い廊下を少し歩き、階段を下がると食堂に到着したようだ。


セバスチャンが、大きなドアをノックし

「聖女様がご到着でございます。」

ドアが内側からギィと開いた。


中は30人くらい座れるんじゃないの⁇というような大きなテーブルのある広間だった。


そこには、イーライ様とレオン様が座っている。

イーライ様が長机の頂点。

いわゆるお誕生日席に座っていて、その右隣がレオン様だ。


2人とも先程とは違った服装だが、少しシンプルになりとても素敵だ。

イーライ様は、黒地に縁に金色のボタニカル柄。

レオン様は、紺色に銀の模様が描かれている。


「やあ!とっても綺麗だよ。ドレス姿もとっても素敵だね。」

レオン様がさっと立ち上がり、席までエスコートしてくれる。


イケメンに席までご案内していただけるなんて、前世では一度もなかった体験だ。

本当に心臓に悪い。


私が自分には、この人たちを魅力するような魅力はない、という自覚が無ければ今頃、勘違いして恋に落ちていたに違いない、と思った。


「では始めようか。」

イーライ様が言って、皿の前にスッと手をかざす。


その次の瞬間!

目の前のさらにスープやサラダが現れた。

さらに大皿に鳥の丸焼きや、ローストポーク、何かの炒め物や、ゼリー寄せのようなモノがテーブルにギッシリと現れた。


おお!

これぞ魔法世界。


先程、ネリネに聞いた話では、こちらの世界には、あまり堅苦しいテーブルマナーはないらしい。

もちろん、他人のごはんを食べてはいけないとか、

食事中に席を立たないとか、

口にごはんが入ったままで、喋らないとか、

日本の食事ルールとほとんど変わらないし、別に前菜から食べ始めなくてもいいところは、むしろフランス料理のコースなどに比べたら、楽かもしれない。


真ん中の大皿は、料理長がサーブしてくれるので、

黙っていれば察して取ってくれるらしい。


はじめに、ドリンクに口をつけてみようと思った。

繊細な模様が彫られた、ガラスコップの中でキラキラの銀色の粒子が踊っている。

液体の色も見ていると淡いピンク色から淡い青、黄色と移り変わり、すごく綺麗だ。


「……!!美味しい!」

見た目に反して、濃厚なミックスジュースのような味がする。

「気に入ったかい?」

「はい!すっごく甘くて美味しいです!」

「そう。それは月の雫っていう飲み物で、宮廷では食事中によく飲むんだよ。」

「この甘い飲み物をですか…」

ウィステリアの人々は甘党なのかな。


「不思議かい?」

「もう一度飲んでみるといい。」

イーライ様がいいながら、同じ月の雫に口をつける。


「?!!!」


……?

しゅわしゅわして、ちょっと甘酸っぱい。

美味しいけど、さっきほど甘くないし、味が全然違う。


「この月の雫は、飲む者の気分次第で味がいかようにも変わる。」

「そうなんだ。だから兄さんとリナは、同じ飲み物を飲んでいても違う味なんだよね。」

「あとはその者の体調を考慮し、はじめに疲れていれば疲労回復作用があり、眠たければ覚醒作用がある。もちろん食欲がなければ、食欲増進作用だな。」

「すごい!!」


美味しいし魔法効果まであるなんて、さすが異世界。

ファンタジーごはんって憧れるよね。


あとはスープも掬うたびに味が違うし、パンはなんかバターを塗ったりしていないのに、しっとりジューシーだ。

パンがジューシーというのもおかしな話だけど、ジューシーなんだ。


「んーん!!美味しい!幸せ!」

神様ありがとう!

要望にしっかり食文化があるところ、って入れてよかった!!

ちなみ、個人的に虫食とか、苦手目なところは除外してもらった。


「こちらの食事が気に入ってくれたようで、よかったよ。料理長の出来立て料理も美味しいから貰ってみたら?」

レオン様は魅惑のスマイルだ。


そうだ。

すっかり忘れていたけど、そう言うのもあるのよね。

そうなると気になるのは…


テーブルの上にある、霜降り生肉の塊かな?

そう思った瞬間。


「お取りいたします。」

料理長が言うと、手を生肉にかざした。

そうするとびっくり!


肉がハラリ、と一枚肉塊から離れ、空中でさまざまなハーブを纏いながら移動する。

途中で芋類らしきペーストと、ベリー系のスライスを纏い最後にパイ生地をぐるりと纏う。


最後にボウッと周りを火が覆い、私のお皿の真ん中にサクサクに焼けたステーキのパイ包みのような物が着地した。


「サクサク!!パイと言うより薄いナンみたい。それにお肉がものすごく柔らかくて…油が全然くどくないんですね!爽やかな果実とこのじゃがいもみたいなペーストともすごく合っていて…食べた事がない美味しさです!!」

思わず日本の食材を連呼してしまったが、相変わらずレオン様は魅惑のスマイルだし、イーライ様はもくもくと食事をとっている。


「すみません。テンションが上がってしまって…」

「いいんだよ。実は、他の兄弟がお呼びした聖女様が、リナと同じニホンってところから来たって言っていてね。基本的な単語や食べ物の好みを調査させてもらっていたんだ。」

いたずらっぽい笑顔を浮かべながら、レオン様が言う。

バラしちゃった、でも気に入ってくれたみたいだから、といたずらが成功した子供のように楽しそうだ。


事前に調査までするなんて、やはり他の兄弟に遅れをとっていたのが、よほど大変だったんだろうな。

他の兄弟でも1番早い兄弟は、もう10年くらい前に聖女を見つけていたらしいし…


それにしても、魔法があるけど似た文化って指定しただけあって、花とか物の名前が全く一緒だったりするから不思議。

でも同じ方が助かるから、嬉しいんだけど。

こっちの世界にしかない物もたくさんあるようだし、楽しみもある。


「ふぅ。お腹いっぱいです。」

食後のコーヒー的な物を飲んでいたイーライ様が顔を上げ、口を開いた。

「明日10時頃迎えにやるが、体調は問題無さそうか?」

「はい!問題ありません!」


だって魔法の訓練なんて、待ちきれないもんね。

でも聖女の魔法ってどんな訓練するのかな?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ