第二十二癒:緊急事態
「でも先に、騎士団の皆様のところに案内してください!!」
足早に歩くイーライ様について、庭園方面に向かう。
庭園の先にある、厩に騎士達はいるらしい。
護衛だ、と言ってステラもついて来ている。
イーライ様、いつも密かに私優先にしてくれるけど…
こんな緊急事態なら、私が疲れていようとなんだろうと先に言ってもいいのに…
「ローダンセ伯爵の領地にある、宿場町が襲われたそうでな。ちょうど遠征の帰りだった騎士団がやられた。幻獣自体はひと暴れした後、森へ去っていったそうだが…」
イーライ様は説明しながら、顔を曇らせる。
「その戦いで、怪我を負った負傷者は傷に瘴気が入り込んだのか、通常のポーションが全く効果がないらしい。」
「治療してみます。」
イーライ様は言いにくそうに続ける。
「それと…死後数日経ってしまっている者がほとんどだ。だから、手の施しようがなくとも、お前のせいでは無い。先に言っておく。」
「…わかりました。」
私のスキルだと、死後1日までしかダメだったはず。
「ついたぞ。」
厩の前には、今かいまかと待つコンラッドさんがいた。
「おお!!来ていただけましたか!ありがたい。」
勢いよく戸を開け、中に案内する。
厩には馬はいず、中には50名程の負傷者と、100人くらいの亡くなった方がいた。
うっすらと瘴気が漂っているので、屋敷ではなくここなんだろう。
「聖女の祝福!!」
早速魔法スキルを発動する。
前回より大きな魔法陣が出現し、またわらわらと天使たちが現れた。
天使達はまず、負傷者のところに行き、治らない傷を見るとふむふむ…と頷き、指にツバをつけてぬりぬりした。
途端に傷口が治り始めたのを見ると、またいつものようにツボから薬を、ぺっしゃんぺっしゃん叩き込む。
ステラが何かいいたそうに、こちらを見ている。
「これは…一体…」
「痛みが消えた?」
「腕が…なくなった腕がある…」
治った騎士達は困惑している。
一通り治療を終えると、天使達は亡くなった騎士達のところに向かう。
1人ひとり顔をみて、残念そうに首を横に振っている。
やっぱり無理か…と思ったとき、天使の中の1人がおもむろにアナウンス用具を取り出した。
私にだけ聞こえているだろう音が響く…
ピンポンパンポーン!!
あ、これ迷子のお知らせだ。
慣れた感じでアナウンスをすると…
騎士の魂が、どこからともかくふわりふわりと光りながら現れた。
そばに控えていた素早く天使が捕まえて、またグイグイ口からねじ込む。
最後にいつものビンタを決めて完成だ。
無事に騎士は生きを吹き返した。
生き返った⁇
イーライ様、彼らは数日経ったって言っていたような…
スキルを確認すると…
《聖女の祝福・中:ホーリーブレッシング》
《MP:1500》
《効果:範囲内にいるものを回復する。還るべき肉体が半分以上あれば蘇生可能。》
アレ?もしかして、浄化スキルばかりに気を取られて、スキルのレベルアップ見落としてた感じ?
それとも、表示がでるのは獲得の時だけとか?
いずれにしても、もう少しこまめに確認しよう…
やっぱり天使達、手段はともかくすごいな。
見た目だけはかわいいし…
コンラッドさんとイーライ様を見ると…
コンラッドさんは神の奇跡だ!!と男泣きしながら騎士の名前を呼んでいる。
「この神秘的な鐘の音は…?まさか、あの者達すら蘇生可能とは…」
驚きに目を見張りながら、成り行きを見守っている。
「ねぇ、ステラ。この光景って他の人にはどう見えてるのかな?」
「む?気になるのか?」
「うん、だってみんな感動してるさ…温度差がすごくて…」
「なるほど…そうだな、例えるなら…澄みきった木漏れ日の中に、一際美しい光球が銀の粒子を振り撒きながら浮かび、今は追加して涼やかな鐘の音が聞こえる感じだな。」
「え?ステラわかるの⁇」
「我ほどになれば、造作もない。」
「私、そっちも見たいんだけど…」
「主様はヤツらの主。無理ではないか?」
「うんまあ、そうだよね。」
「それに天界属を目にできるのは、限られた者だけだぞ。」
「…まあ、かわいいしね。」
「必要とあらば、また我に頼むが良い。」
「そうするわ。」
しばらくすると、厩は生き返ったり完治した騎士達の喜びの声で溢れた。
騎士団とコンラッドさんは、私にしきりにお礼を言い感激している。
「主様、そろそろ戻ったほうが良いのではないか?」
ステラが私の気持ちを読んだのか、助け舟を出してくれる。
普段は読まないで欲しいけど、今はありがたい。
身内だけで喜びに浸りたいだろうからね。
退散してあげたい。
「ええ、そうね…皆様お元気になられてよかったです。帰り道もご無理なさらず、お帰りくださいませ。」
挨拶してパーティー会場に戻ろう。
中座してからだいぶ経つし、まだまだ嘆願客は絶えなそうだったし…
「配下を助けていただき感謝いたします。また、領地の件に関しましても、ご相談の機会をいただけると幸いです。」
頷き、厩を後にする。
イーライ様も一緒に出てきた。
イーライ様は調査してからって言っていたけれど、こんなに被害が出ているなら、できれば早めに行ってあげたいな。
幻獣だと元が精霊なんだよね。
厩から帰った後は、一旦ネリネが髪を整えなおしたりローブの汚れを落としたりしてくれた。
パーティーに戻らないと。




