第十八癒:サルビアの戦い 前編
サルビアは白い城壁にぐるりと囲まれた大きな町だった。
セオドアさんの屋敷からの街道も幅が広く、確かに重要な街の風格を感じさせた。
朝早く出発してきたので、サルビアへ到着したのはまだ昼前だった。
少し早いが昼食をとり、駐在しているセオドアさんの騎士団と合流した。
今回は侯爵領からの依頼なので、イーライ様たちの騎士団は連れてきていない。
「では、この度の作戦を確認する。」
イーライ様は濃紺の軍服風の服装だ。
黒髪に映えてかっこいい。
「まずはリナ様と私、レオンとステラは町の中央広場へ向かい、そこで魔獣の討伐を行う。騎士団のメンバーは小隊に分かれ散らばっている魔獣たちを中央広場へ追い込め。」
「了解いたしました。」
隊長風の男性が返事をする。
私たちが町の中心街へ向かい、来たやつを片っ端からかたずける。
実にシンプルで、戦闘慣れしていない私にもわかりやすくてありがたい。
地図で中央広場の位置も確認ずみだし、あそこなら十分な広さがありそう。
そして三時間後・・・・
「イーライ様!!魔獣達、全然減らなくないですか?」
思いっきりぶっ飛ばした中型の魔獣で、先にあったレストランが崩壊した。
気になったのは、最初の三匹目くらいまでだった。
お店の方、ゴメンなさい。
そのあとは押し寄せてきた小型魔獣で、それどころではなくなってしまっていた。
魔獣達を片っ端から倒していても、倒しても倒しても無限湧きか?!ってくらい湧いてくる。
「数は聞いていた以上に多いな・・すでに500など倒してしまったと思うが・・」
魔獣から漏れ出る薄い瘴気と、やむえず討伐した魔獣から漏れた瘴気で、町の中はまさにゴーストタウンの様相を呈している。
私は大型、中型魔獣を担当。
イーライ様とレオン様は、小型魔獣と中型魔獣を魔法を担当、攻撃して気絶させている。
倒してしまうと瘴気が出るので、倒すのは私だ。
「我はこうちまちました作業は苦手だ。」
ステラは小さな魔獣は不向きだったので、一緒に大型獣にあたってくれている。
通路からやって来た、新手のネズミ型魔獣の群れを、イーライ様が広域の電撃魔法で一掃した。
手加減もバッチリで流石にそつがない。
反対側の通路では、レオン様が氷魔法で鳥型魔獣の群れを撃墜している。
落ちる鳥に、減速魔法をかけてあげる余裕まであるようで、レオン様も王子な見た目に反して、場慣れしているようだ。
でも表情は、普段のにこやかスマイルでは無い、真剣な表情でちょっと冷たい感じすらある別人のようだ。
ちなみにすでに、レベルは2アップした。
でも期待したスキル獲得は、まだない。
「リナ!そっちに大型がいくよ!」
青白く光る魔剣を大型魔獣に、振るいながらレオン様が叫ぶ。
「わかりました!お任せください!」
こちらに、猫型の大型魔獣が向かって来た。
もうすっかり、スキルの扱いにも慣れて来た。
「聖女の恩寵!」
倒された魔獣はシュルシュルと縮み…
白猫になると、あくびをしてどこかに去っていった。
その時、またレベルが上がった。
《聖女の洗礼 ホーリーバプテスト》
《MP:1500》
《効果:天使の1軍団を召喚する。連続使用可能。》
を獲得しました。
「これつかえるのかな?」
やるだけやってみよう。
文字通りの聖女らしい技は、最早期待していないが、現状は打破できるかもしれない。
「聖女の洗礼!!」
今回は空に扉が現れ、天使が現れた…
この聖女スキルは、常に私の予想の斜め上をいく。
手にメリケンサックをつけた子、釘バットを持っている子、トンファーをもっている子、何故か箒とちりとりを持っている子…
そんな天使たちがわらわらと現れた。
「わぁ…ガラ悪ぅ…」
見えるのが私だけで、本当によかった。
洗礼ってこれじゃ、不良高校で、新入生とかにやるヤツだよね。
挨拶に来てやったぜ、的な…
またも、武闘派集団が現れたが、彼らは優秀だった。
まず、地面で伸びている小型獣を、ぴこぴこハンマーやハリセンを持った子が袋叩きにしている。
叩かれた魔獣は真っ黒な体毛が剥がれ落ち、元のネズミや狐に戻っていく。
「これは…」
「魔獣達がどんどん浄化されていく。」
「実に個性的な輩であるな。」
あ、ステラさん。
あなたは見えるのね。
ステラの目線の先では、モーニングスターを持った天使が、その凶悪なエモノを中型の魔獣に振り下ろしている。
「おい、レオン。空気まで、浄化されていないか?」
「?!たしかに。あの美しい光がさした場所からどんどん瘴気が薄れている感じかな?」
「変わった瘴気浄化だ…」
うんうん、レオン様達混乱してて、気がついていないけど、ステラさん、あなた1人だけ感想が違うから。
後で天使たちがあんな感じなのは、黙っていてくれって口止めしないと…
2人が言うように、瘴気もみるみる薄くなっているが、これは箒とチリトリを持った子が飛び回り、集めて回っているからだ。
その様子はウキウキしていて、とても楽しそうだ。
みていると、流石に大きめの中型や、大型魔獣は倒せないようなので、そっちを受け持つ事にした。
「これならいけそうだね!兄さん、僕達もリナの援護をしよう!!」




