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行け! コロ! 君に決めたっ!
「がふん!」
コロの一噛み。跪いていたサメ型の魚人と、トド男を飛び越えてその先にいたオークの首元の肉が消し飛んだ。
「なっ……」
オークの体がゆっくりと崩れ落ちる中、ミノタウロスの足が吹き飛び、良く分からない悪魔を巻き込んで倒れこんだ。
「なあ! はじめやがったな!」
「コロ、マスターはやめとけ」
「わん!」
返事を一つ。ゴーストタイプに飛びかかる。だが体を通過してしまう。
「ふん、調子に乗るからだ。物理なんぞ効かぬ」
「がるるるるる!」
コロの体が青白く光ると、体を回転させて再び体当たり。
「これは! 魔力のひかるぶべっ!」
ゴーストタイプの魔物の顔が吹き飛び、その姿が薄れてゆく。
「押さえ込め! その手のタイプは動きを止めるんだ!」
「了解っ!」
大きな蟻がコロにのしかかる! コロは短い前足を振るって大きな蟻の足をすべて吹き飛ばし、その場を後にする。
「クソッ、どこに!?」
魔族の男が首を左右にキョロキョロさせると、その魔族の男のお腹にコロの体当たりが決まる。
「うぼぅ」
口から吐しゃ物を出しながら、魔族の男が蹲る。
「マスター! おのれ!」
控えていたもう1匹のミノタウロスが拳を振るう。
「がうっ!」
あえてその拳をコロは受ける。
「があっ!」
拳から血を流し、ミノタウロスが手を引く。
「がう? …………がああああああああああ!!」
さっきまで緩んだ表情だったコロの顔が憤怒の表情に。
「マスターとコア様にご用意してもらったスカーフが汚れて怒りましたね」
コロの全身から青い光がほとばしり、周りの魔物をまとめて吹き飛ばした。
ああ、その骨の人たぶんダンマスだよ? バラバラになっちゃったじゃん。
「くらえええええええええええええええええええ!」
炎の化身みたいな魔物がコロに炎を放った。ミノタウロスが1匹巻き込まれてる。
く、すごい火力だ。
「アユム様、お下がりを。皆様も」
「え、ええ」
「わかったさ……でも、君の従者はすごいさ」
「コロ、大丈夫だよな」
勢いでけしかけてしまったが、ちょっと心配だ。
シヴィーが大丈夫だとは言っていたが、こうしてコロが戦うのは初めて見る。
「あの程度の炎なら問題ないでしょう。それよりも、カカ殿が心配ですね」
あ、カカは木製だ。
「確かにカカならこの火の粉を浴びただけでもダメージさ」
強烈な炎の渦がコロを中心に舞い上がり続けている!
「いけません!」
「どうしたシヴィー!」
珍しく焦った声を出すシヴィー。
「コロのスカーフが……焼けました」
「え?」
「ぬ?」
「はあ」
それって……。
「血で汚れただけでもあの怒りっぷりだというのに、スカーフが焼失したともなれば……」
炎が収まるころ、憤怒の表情だったコロの体に更なる変化が。
「コロが赤く……」
「全身金属ですからね。高温で熱された結果でしょう」
コロの両手足の地面、煙が出て黒くなってるんだけど。
どんだけ高温になってるんだ。
「わん……」
あ、しっぽ垂れてる。
耳は元々垂れてたけど。
「怒ってるというよりヘコんでますね」
「コロ! 大丈夫だよ! 新しいのつけてあげるから!」
「わふん……」
へ、返事に元気が無い。
「おんどりゃあぁ、随分と調子に乗りやがって……ただじゃ済まさねえぞ」
「殺す、殺す、殺す、殺す」
まだお腹を押さえている魔族とバラバラの骨になって地面に転がってる頭蓋骨がなんか呟いてる。
 




